「優良顧客」ってそもそもユーザー本位の言葉じゃないよね
「優良顧客」という言葉はよく耳にしますが、この言葉自体がサービス提供者側の視点や都合が色濃く表れています。ユーザーからしてみれば、自分が優良な顧客かどうかは、そもそも興味のないことですよね。ただ一方で、ユーザーはサービス提供者から得られる価値をより高めたいと思っていることは間違いないでしょう。
これから、どのような顧客像がユーザーとサービス提供側の双方にとって望ましいのか、考えていきましょう。
そもそも「優良顧客」の定義って何だろう?
本連載でもユーザーエンゲージメントという言葉を使うことがあります。エンゲージメントという言葉の定義は実は様々なのですが、ここでは「顧客がサービス提供者に感じる愛着の度合い」という意味で使います。この言葉が使われるようになった背景としては、今までのやり方では効果的に優良顧客を増やすことができなくなってきているという課題意識があるといっていいでしょう。
ではそもそもこの「優良顧客」とはどのように捉えられているでしょうか?一般的には優良顧客と言えば「売上・利益の大きい顧客」「来店・来訪回数の多い顧客」などとして定義づけられることが多いでしょう。場合によっては時間軸の概念を取り入れて、「直近●ヶ月以内に来訪している顧客のうち」というような前提条件をつける場合もあるでしょう。
また楽天やカタログ通販系企業などのロイヤリティプログラムを提供している企業では、ユーザーのランクを設定し、ユーザーにも開示していることがあります。一定のランクに到達するためには、購買回数や累計購入金額を条件としている場合が多く見られます。
ユーザーがこのような優良顧客になるメリットは「より大きな割引が受けられる」「より多くのポイントが付与される」といった金銭的なものが大きいでしょう。それはそれで嬉しいことには違いありません。ただ、これでは「ロイヤリティプログラム」ではなく「ポイントプログラム」、もっとダイレクトに言えば「割引プログラム」と言ったほうが適切かもしれません。
つまり、ユーザーはロイヤリティを高めることに関心があるのではなく、購買の結果としてもらえる金銭的な報酬に関心があるわけです。このようにサービス提供者の視点のみから優良顧客を眺めても、強いユーザエンゲージメントをつくり上げることはできそうにありません。