絵をほめないで額縁をほめてはいけない
伝えるべきはあなたの商品がいかに優れているかということ。差別化は手段であって目的ではない。“その他とはココが違います、ココは他とは飛びぬけて優れています”ということを知覚してもらうためのアプローチにすぎない。
成熟期の商品は競争が激しく差異が小さいので、よほどの人気ブランド以外は強い印象を与えて選択肢のひとつに入れてもらわなくてはいけない。まずは予選リーグの突破からだ。お客さんは多くの選択肢の中からいろいろと比較して選ぶのだが、その際にそれぞれの商品の「売り」を判断基準にする。
だからこそ「売り」はお客さんにとって価値あるものでなくてはいけない。たとえユニークな違いであっても、その価値が小さなものであれば、それは決め手にはならない。差別化が功を奏するのは、価値が大きなものに限っての話だ。そこがわかっていないので、マイナーな差別化訴求をやってしまうのだ。
サバ缶について知りたいのは「開けやすさ」より「味」でしょ
サバの水煮缶詰を例に見てみよう。小さな改良は重ねられてはいるが、成熟もいいところの商品だ。サバの産地、塩の種類、味付けの工夫などそれぞれ違いはあるものの、どのブランドも差がない。そこで違いを出そうとやっきになって、苦し紛れの言い訳のようなキャッチフレーズにしてしまう。たとえば……
- 大きめのプルタブだから、力いらずで開けられる。
- 脂乗ってます、健康成分DHAとEPAがたっぷり。
確かにフタが簡単に開けられるのは、お年寄りへの訴求としては悪くないし、健康成分というヘルシーな訴求も購入の動機づけになる。しかし、その前に誰もが美味しいサバ缶を食べたいはずだ。絵をほめずに額縁をほめるような表現に興味は湧きにくい。
最も強く訴求するべきはいかに美味しいかだ。脂が乗っているならば味覚や食感を刺激したり、レシピ(=使い方)で価値を伝えることもできる。
- 脂の乗ったトロっとした食感、そのままでも美味しい。
- トロっとした食感、天日塩だけのサッパリした味わい。
- こくウマっ! トマト缶と煮込めば、サバのトマト煮。
たとえセールスポイントがライバルと差がなくても、ライバルが訴求していないのなら言ったほうが有利になる。小手先ではあるが、つまらない差別化よりは効果的だ。
普段、私たちはうわの空だしすぐ忘れる。よほど関心があるもの以外については覚えていない。あなたの商品については知らないも同然だ。さんざん伝えつくして飽きたから、差別化してユニークさを伝えようというのは売る側の勝手な思い込みで危険だ。あなたの商品の価値を落としてしまうことだってある。
奇策に走らず、良さはきちんとしつこく訴求すべきだ。差別化自体は有効な戦い方だが、それが価値あるものどうかを判断してほしい。コピーがいくらキャッチーな表現でも、伝える内容が使えなければ意味はない。コピーライティングにもマーケティングの考え方が必要なのである。
今回のまとめ
- 差別化は手段であって目的ではない。価値の小さなことでの差別化は逆効果。
- 大切なのはその商品の良さ、優れていることを効果的に伝えること。
- ライバルと同じようなセールスポイントでも、ライバルが訴求していないなら使う。お客さんはそれがあなたの商品の強みと受け取る。

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