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動画広告活用最前線(AD)

「テレビCMから動画広告へ予算のシフトが起こっている」ブルーオーシャンの動画広告市場に乗り出すベストタイミングは今だ!

 欧米に比べて後れを取っていた日本のオンライン動画広告市場だが、今ようやくプレーヤーがそろい、活性化の機運を見せている。同市場を世界的にリードするブライトコーブをはじめ、今年2月に業務提携を発表したオムニバスと動画RTB大手TubeMogul社ほかを迎え、2013年4月24日、動画広告市場の現状とメディアがそれをどう活かすべきかをテーマにセミナーが開催された。

米国オンライン動画市場拡大の4つの要因

 第1部では、アドテクノロジーを使った広告サービスを提供するオムニバスから代表取締役CEOの山本章悟氏が登壇し、動画広告を取り巻く環境が解説された。

株式会社オムニバス 代表取締役 CEO 山本章悟氏

 同氏は米国でのオンライン動画市場の拡大要因として、次の4つを挙げる。「(1)エコシステムおよびRTB環境の発達(2)プレミアムエクスチェンジの発達(3)コンテンツのオンライン化とユーザーがそれに慣れたこと(4)ブランド広告主の出稿拡大。現在では、米国全体で1億6240万人がオンライン動画サイトに滞在し、1ユーザーあたり月間159本の動画を再生している」(山本氏)

 逆に言えば、これらの要件が整えば日本でも同様の拡大が見込める。日本におけるユーザーの状況としてはすでに5,900万人がオンライン動画に接し、1ユーザーあたりの月間視聴本数も283本(コムスコア調べ)と米国を超える勢いも見せるが、「RTB環境のエコシステムはまだまだ。DSP事業者は実質TubeMogulのみ、アドエクスチェンジも3社にとどまる」と山本氏は語る。

 一方、動画広告を掲載するメディアもまだ多くはないが、増えてきている。オムニバスの配信比較によると、本編コンテンツの再生直前に流れる「プリロール動画広告」の効果がクリック後に流れる広告などよりもずっと高く、メディアに高い単価をもたらしているという。「広告主にもメディアにも、動画広告市場はまさにブルーオーシャン」と山本氏は強調する。

テレビCMから動画広告へ予算のシフトが起こっている

 第2部には、動画RTBを手掛けるTubeMogulより代表取締役CEOの狩野昌央氏が登壇。米国での豊富な実績に基づいた、DSPの効果的な活用方法が紹介された。

株式会社TubeMogul 代表取締役 CEO 狩野昌央氏

 同社の調査によると、テレビCMはメッセージ伝達に優れ、一方で動画広告はブランド好感度と購買欲の向上に寄与している。「実際に現在、広告主においてテレビCMから動画広告への予算のシフトが起こっており、特にテレビではなかなかリーチしにくくなったM1、F1層への訴求が期待されている。併用による重複効果も見込まれている」と狩野氏。

 TubeMogulが提供するRTB対応動画DSP「プレイタイム」は、プリロール型をはじめ、バナーに組み込むインバナー型、ゲームアプリなどに組み込むモバイルアプリ型などさまざまな広告形態に対応。望ましくないサイトに出てしまうことでブランド毀損にならないか、と懸念する広告主も多いが、サイト、ページ、コンテンツに至るまで出稿先の内容のレベルを事前に規制できる点もプレイタイムの特徴のひとつだ。

 「例えばジャマイカ政府が観光誘致のために動画広告を活用したキャンペーンでは、事後に定性調査をかけたところ、実に50%にも上るブランドリフトが起きていた。この結果を踏まえて、次なるキャンペーンも検討されている」と狩野氏は具体例を述べる。RTBを通して最適解を探り、PDCAを回すという流れも一般化しそうだ。

動画広告配信へ積極的に乗り出し始めた日本の大手広告主

 「米国では、今年度の動画広告市場は4000億円規模。2016年には、倍の8000億円に達すると予測されている」と、ブライトコーブ セールスディレクターの北庄司英雄氏は切り出す。第3部は、同社より「動画配信プラットフォーム『Video Cloud』を活用した動画コンテンツの収益化」と題し、海外の最新情報を交えた動画広告の盛り上がりが紹介された。

ブライトコーブ株式会社 セールスディレクター 北庄司英雄氏

 本社を置く米国をはじめ、世界9か国で事業を展開するブライトコーブは、各種オンラインメディアの動画配信をサポートしてきた。特に動画広告に関してはメディアと広告主をつなぐ役割を果たし、市場の拡大に寄与している。

 同社によると、米国で右肩上がりの勢いのある動画広告市場の様相を、今まさに日本が追随しようとしているという。実際に現在、食品や化粧品などのメーカー、通販、物流、金融などさまざまな業界の日本を代表する大手企業が同社のクライアントとなり、動画広告の配信に積極的に乗り出している。

 「国内における動画DSPも本格始動している。これらの状況を見ると、オンラインメディアにとっては今が動画広告配信を整備する大きなチャンスだと感じる」と北庄司氏は強調する。特に、前述の本編コンテンツが流れる前に挿入する「プリロール動画広告」への注目が高く、YouTube内の同広告は非常に盛況だという。

今こそ動画コンテンツの収益化のチャンス

 例えば、米紙「ニューヨーク・タイムズ」やメディア企業「WIRED」の動画ポータルサイトでは、ブライトコーブの動画配信プラットフォーム「Video Cloud」を活用しプリロール広告を導入している。「こうしたメディアのサイトでは、CTRが特に高い。また、FEP(Full Episodo Player:広告の完視聴率)は『Hulu』などの動画コンテンツ提供サイトで高い」と北庄司氏。

 広告自体の最適な長さはテレビCMと同じく15~30秒だというが、視聴者にとって価値のあるコンテンツに付随する動画広告ほどしっかり見てもらえると言える。「コンテンツとのマッチングを考えても、メディア企業や大手動画配信サイトでのプリロール広告はブランディングに向いている」(北庄司氏)

 一方、メディア側が動画広告を効果的に扱うには、広告の流通を活性化させるVAST(Digital Video Ad Serving Template)、よりリッチな動画広告を扱えるVPAID(Digital Video Player-Ad Interface Definitions)といった業界の統一規格に準拠したプレーヤーが求められる。広告配信設定が簡単にできる管理画面やHTMIL5への対応、各種アドサーバーおよびアドネットワークとの統合も不可欠。「これらの要件を動画配信プラットフォーム『Video Cloud』はすべて満たしているため、メディアの広告収益を最大化することができる」と北庄司氏。米国での導入実績がその大きな証拠だ。

欧米ではメディアの動画広告でのマネタイズは一般的

 高まる広告主の期待を受け、メディア側はいち早く価値あるプリロール動画広告枠を設けることが得策――。そんな確信を感じさせたセッションを受け、セミナー第4部はパネルディスカッション形式で進行。2部登壇のTubeMogul狩野氏をモデレーターに、1部に登壇したオムニバス 山本氏、そしてブライトコーブCEO兼代表取締役社長の橋本久茂氏と、『WIRED』『VOGUE JAPAN』などを発行するコンデナスト・ジャパンからDigital Country Managerの新井良氏を迎えた。

(左)株式会社TubeMogul 代表取締役 CEO 狩野昌央氏
(中央左)株式会社オムニバス 代表取締役 CEO 山本章悟氏
(中央右)コンデナスト・ジャパン Digital Country Manager 新井良氏
(右)ブライトコーブ株式会社 CEO 兼 代表取締役社長 橋本久茂氏

 「米国に比べ、日本の動画広告市場は出遅れている」と狩野氏は指摘する。その理由について、山本氏は複数あるとしながらも「最も大きいのは効果測定の問題。ネット広告の効果がほぼ数値で表せる中で、動画広告によるブランド認知や好感度を把握する指標がないのが課題だった」と挙げる。ようやく今、テレビでの指標なども参考に、指標が充実しつつあるという。

 一方、欧米では、すでにメディアが動画広告でマネタイズできるまで市場が成熟しつつあるようだ。ブライトコーブの橋本氏は、「当社は米国で2004年から事業を始めたが、06年頃からすでに欧米ではメディアが動画広告でマネタイズするのが一般的になっていた。それを受けて08年に日本法人を立ち上げたが、昨年後半になってやっとプレーヤーがそろい、エコシステムができる状況が整ったという感を得られた」という。

動画の訴求力に期待する広告主のニーズに応えるべき時が来た

 そんな状況下、コンデナスト・ジャパンでは米国本社の積極的な動画展開に追随し、デジタルマガジンをはじめデジタル領域の展開にますます力を入れている。オリジナルの動画コンテンツ生成のために、昨年末に動画のチームを社内に用意したという。

ブライトコーブ株式会社 CEO 兼 代表取締役社長 橋本久茂氏

 国内のデジタル展開を統括する新井氏によると、「広告主となるブランド側が、短い動画広告だけでなく3~5分と長尺のムービーまで用意し始めている今、それを積極的に取り入れていくことが急務なのは明白。今、ブランドムービーを軸にしたタイアップ記事なども柔軟に企画しており、好評」だという。

 これを受け、山本氏も「確かに広告主は動画の訴求力に期待し、ブランドが持つメッセージを発信したいと強く思っている。特に、以前からデジタル領域に力を入れていた企業は、今がファンを増やすチャンスだと捉えている」と述べる。

 「市場が立ち上がるのが遅かった分、広告主の潜在ニーズが一層高まっているともいえる」と橋本氏。それだけに、システムが整いさえすれば、メディアが動画広告を収益の新たな柱として考えることも十分可能だろう。

 ただし橋本氏は、「いずれにしても市場の活性化のためには、広告主、事業者や代理店、メディアのそれぞれが動画の世界を盛り上げていく必要がある」と語る。表現力があり、世界観を伝えるのに最適な動画に皆で取り組めれば、との意見に三者もうなずき、今後の動画広告市場の伸長へ大きな期待を感じさせた。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/10/10 11:04 https://markezine.jp/article/detail/17691