マーケティング全体におけるデジタルの活用を考える
友澤:広告主のデジタル領域への取り組みは、自社サイトの整備やSNSによるコミュニケーション強化など、どちらかというと広報部門の方が先行していたんですよね。それが最近、今まさに言われたように宣伝部門の方々の危機意識が高まっていると私も感じています。
坂田:当社でも、サントリービジネスエキスパートの宣伝部にデジタルのチームができたのは2005年と早かったのですが、オウンドメディアへの動きの方が目立っていました。2010年、「ジョッキ<生>」のテレビCMを曜日ごとに異なる出演者で展開し、それに合わせてWebバナーも曜日ごとに出稿しましたが、この頃からマス広告の補完としてのネットの活用や、ネットならではの新しい表現のトライアルをし始めて、仕事の幅が広がった感覚があります。
友澤:専門領域としてのデジタルではなく、マーケティングにおけるデジタルという捉え方でいろいろな施策に取り組み始めたわけですね。
坂田:そうですね。ただ、当社は最初にお話しした社風もあって「ネットを積極的にやっている」という印象はあるかもしれませんが、宣伝費全体でみるとネットが占める割合はまだまだです。また、これはネットのメリットでもあるのですが、コストがマスに比べてずっと低いため、「予算が少ないからネットで」という発想もブランドによってはあります。そのあたりは、もっと前向きな姿勢になれたら、と思いますね。
ネット施策が売り場に影響し始めている
友澤:情報産業の資料請求やECなどでは、ネットに投じた宣伝費をネットで回収しやすいですが、御社のようなメーカーの宣伝部門がWebへとなると、おのずと「商品が売れるのか」と問われることになると思います。
最近は、ヤフーのブランドパネルで実際に商品が動いたという話を聞くことも増えて、私も手応えを感じているところですが、実感はいかがですか?
坂田:そうですね、社内の営業担当者から「ネット施策の詳細を知りたい」「商談で見せられるテストページはないか」と言われることも出てきましたし、お得意先も「もはやテレビCMだけの時代ではない」と感じられていると思います。
新商品発売時や季節ごとの商談では、企画書の中で宣伝計画を説明しますが、長らくそこでは「テレビCMを何千GPR(Gross Rating Point/延べ視聴率)出稿するか」が売り場において大きな力を持っていました。今もCMの力は大きいですが、以前に比べて「ヤフーにこれだけ出稿します」ということのインパクトも理解され始めています。特に、バイヤーさんの世代が若いとなおさらですね。
友澤:ネット広告の効果は、マウスオーバーや音が出るなどのリッチ表現に慣れてきた、ユーザーの許容度の変化の影響もありますね。
坂田:そう思います。エキスパンドバナーのCTRなども予想以上に高くて、驚いています。