米Turnが日本に進出
2006年創業のTurnは、もともとアドネットワークを運営していたが、その後DSPを提供。Forresterの2011年の調査では、MediaMath、DataXuと並ぶDSPトップ3の地位を築いた。また、2年前にDMPも展開。近々IPOを予定しているのではと噂されている。
Turnが提供するメインの製品は2つ。DSP「Campaign Suite」とDMP「Audience Suite」だ。とくに「Campaign Suite」は、米国およびヨーロッパで市場をリードしており、米広告業界情報サイト「AdAge」のレポートでは、米国トップ100広告主のうち75社が採用。DMPについては、日米ほぼ同時にマーケットが立ち上がった状態だが、こちらも米国のナショナルクライアントへの導入が進んでいる。
そのTurnが今年8月に日本での事業展開を発表。日本の責任者となる佐藤瑛人氏は、Googleの戦略的事業開発担当マネージャーとして、DoubleClick Ad Exchange、DoubleClick Search、DoubleClick Bid Managerの国内展開を担った人物。佐藤氏に、同社製品の強みと日本のアドテクノロジー市場について聞いた。
「まず日本は欧米から見ると特殊なマーケット。言語のバリアがあり、大手プレーヤーは日本国内の企業が多い。同じアジア・太平洋地域でも、オーストラリアを見ると、米国企業が広告マーケットを動かしているような状態です。また、シンガポールはマーケットが小さく、国内プレーヤーが育ちにくい環境にあります。
一方、日本は世界第3位の広告マーケットの規模があり、そこで長年、国内プレーヤーがビジネスを築いてきました。そう考えると、米国企業であるTurnがそんなに簡単に入りやすいマーケットではないと思っています。日本のために、リソースを押さえてきちんとローカライズしていく必要があると考えています。」
世界から見た、日本のアドテク市場
米国でのメインのクライアントは、トレーディングデスクといわれる広告代理店グループの中でも、プログラマティック・メディアバイイングを専門とする部門や子会社。「日本でもそういったビジネスを展開している代理店に利用していただくのが一番だと思う」と佐藤氏は言う。
DSP「Campaign Suite」の大きな特徴はスケーラビリティ。DSPの世界ではQPS(Querry Per Second:秒間クエリ数)という指標がある。複数のアドエクスチェンジやサプライサイドのパートナーから受取る入札リクエストを受け、1秒間にどれだけの最適化された広告を配信することができるかを表す数値だが、同社のDSPはこのQPSが100万を突破している。アルゴリズムにおいても、過去8年間にわたって、専門の応用数学者のチームが広告入札における最適なアルゴリズムをつくりだすためにプログラムをブラッシュアップしている。
一方、DMP「Audience Suite」は完全にエンタープライズ向けに設計されており、莫大な量のデータを抱えている企業、あるいは非常に厳しいセキュリティポリシーを課している企業の要求水準に応えられるように設計されている。佐藤氏は、「グローバル企業、グローバル広告代理店が、世界中のどの地域でマーケティングを展開しても、スムースかつシームレスに対応できます。日本企業のグローバル進出の場合も同じです」と語る。
もうひとつ、Turnが重視しているのが「透明性」だ。Turnのサイトでは、世界中の3つのリージョン(米国、アジア、ヨーロッパ)における各データセンターの状況をモニタリングしたデータを公開し、過去にどんなアラートが上がったのかを時系列で確認することができる。
DMPは、CIOとCMOの垣根を超えるもの
2年前から手掛けているDMPは、同社のDSPと組み合わせても、単独でも利用可能。他社製品との連携もスムースに行うことができる。同社にとって新しい製品であり、今まさに注目を集めているDMPについて佐藤氏は次のように説明する。
「DMPの根本的なアイディアは、企業が顧客や消費者に対して持っているあらゆるデータをマーケティングに活かせるようにしようということ。いま、米国では、IT部門のトップであるCIOが管理するITの領域と、マーケティング部門のトップであるCMOが管理する領域が、かなりかぶってきている。それまでIT部門が抱えていたさまざまなデータを、CMOがマーケティングのために利用しようという動きが出てています。データのかたちで存在しているものはどんどん使っていこうという動きですね。」
CMOが主体的にデータ資産を活用していこうという流れの中で、DMPは「IT部門とマーケティング部門、CIOとCMOの垣根を超えるものとして機能すると考えている」と佐藤氏は言う。
最後に、海外企業の日本進出について質問すると、「日本のプログラマティック・メディアバイイングの市場が非常に伸びていることは、世界でもよく知られている。日本に進出しようとする企業はこれからも出てくるでしょう。しかし、そんなに簡単に進出できるマーケットではないと思っています」との見解を示した。そして自身のミッションについて、「日本のお客様のニーズに沿って使いやすい製品を提供するのがわたしの一番のミッション、それを何よりも大切に心がけてこれから事業を展開していきたい」と抱負を語った。
Turnは10月16日、ウェスティンホテルで「データドリブン マーケティング フォーラム」を開催。Turnの経営陣とクライアント企業を招いて、日本のマーケティング関係者と情報共有する場を設ける。司会は、EXCHANGE WIRE Japan 編集長 大山忍氏。イベント詳細と参加申込みはこちらから。