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メールの効果は落ちていない!ドクターシーラボの「おもてなしEコマース」を実現するメールマーケティングとは?

 LINEやソーシャルメディアが浸透し、「メールの効果が落ちた」と、ときに耳にする。その理由として「ユーザーがメールを見なくなった」という声を聞くが、実際のところ、EコマースでのCRM施策は以前と変わらずメールが中心である。10月4日に開催されたMarkeZine Day 2013において、エクスペリアンジャパン株式会社の提供により、「ドクターシーラボの考える今後のメールマーケティング~おもてなしEコマースの実現へむけて~」と題し、株式会社ドクターシーラボの西井敏恭氏による講演が行われた。

マルチチャネル展開を進めるドクターシーラボのEコマースの歴史

 「ドクターシーラボの考える今後のメールマーケティング~おもてなしEコマースの実現へむけて~」と題した講演を務めるのは、株式会社ドクターシーラボ マーケティング部 eコマースグループの西井敏恭氏。ドクターシーラボのeコマースグループを統括している西井氏は、世界一周の旅を行い、旅行記を出版したという異色の経歴を持っている。

株式会社ドクターシーラボ マーケティング部 eコマースグループ 西井敏恭氏

 「ドクターシーラボは1999年に誕生しました。年商は350億円弱。6割が通信販売、4割は百貨店やドラッグストア、バラエティショップ経由の売上げです。当社に対しては通販のイメージを強く持っていらっしゃる方が多いかと思いますが、百貨店のように対面販売のお店も150店舗ほど構えており、マルチチャネルで販売しています」

 2001年にオンラインショップを立ち上げ、今や化粧品通販において名の知れた存在である同社だが、低迷期を経験したこともあったという。「2005~2006年頃からEコマースの売り上げが低迷し始めました。当時は『見込み客の少なさ』が課題だと思い、集客施策に力を入れ、見込み客にサンプルを配り続けました。当然、Web上の集客施策においても、SEO対策、アフィリエイト、リスティング広告、メルマガ……と色々なことに取り組んでいました」

 しかし、「新しい見込み客は沢山集まったが、売上げが上がらなかった」。西井氏は当時の心境を吐露する。「商品力の問題か?販路の問題か?それとも単なる不景気なのか……社内では様々な議論がありました」

ブレイクのきっかけは新規獲得ではなく、既存顧客のリピート率アップ

 もう一度自社の強みについて考え直した結果、導きだした結論は「シーラボらしさ」を追求することであった。ドクターシーラボを創業した城野親德氏は皮膚科医であり、同社は現在も、本社があるビルの敷地内に皮膚医学・皮膚科クリニックを設けている。

 「日々患者様と接することで、医療現場の声を聞き、すぐに商品やサービスに反映しています。商品は流行りそうだから作っているのではなく、お客様が求めているから作るのです。当社の強みは現場を持っていること。この強みをWeb戦略にも活かそうと考えました」

 そこで同社は、「商品を買うだけの商品カタログや自動販売機ではなく、インタラクティブなECサイトを作る」との方針を打ち出した。例えば、他社商品への誹謗中傷や商品と直接関係のない口コミ以外はすべて開示する、顧客の悩みに顧客が応え、ユーザー同士がコミュニケーションする場を作る、そしてキャンペーンなどの企画はほぼすべてユーザー参加型のものにする、などを次々と行っていった。

ドクターシーラボが展開するユーザー参加型のキャンペーン

 「その結果、新規売り上げは毎年ほぼ同じくらいなのですが、既存のお客様からのリピート率が徐々に向上し、全体の売上では20億円から100億円まで伸びました。おかげさまで2007年以降は、お客様の投票によるYahoo!通販コスメ大賞で1位をとり続けています」と西井氏は語る。

ドクターシーラボの「おもてなしEコマース」を実現するメールマーケティングとは?

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メルマガの効果、本当にあるの?

 「最近、メルマガの効果は本当にあるのかという質問をよく受けます」と西井氏は切り出す。

PC・モバイルともにメールからの売上が圧倒的
(左)PCサイトのメール売上の割合(右)モバイルサイト(スマホも含める)のメール売上の割合

 「ソーシャルメディアが浸透し、メルマガよりもSNS経由の方が売上げを稼ぐことができるのでは、という仮説があるようです。しかし、我が社のサイトにおいて、SNSから流入した顧客がすぐに商品を買うことはほとんどありません。PCサイト、モバイルサイトともにメール経由の売上が圧倒的で、ソーシャルからの売上はごくわずかです。しかもその比率はここ数年、ほとんど変わっていません」

買いたい時にメルマガが来たから購入する

 これらのデータから、「メルマガの効果は落ちていない」ということは明らかだろう。この結果は同社が特別なのだろうか。すると、西井氏は興味深いヒントを語る。

 「友達のメールを無視する人はいないですよね。それと同じで、メール自体が見られなくなったわけではなく、読みたいメールだけ読むようになったのだと思います。売上比率が下がっていないというのは、ドクターシーラボのメールを、お客様はちゃんと見てくれているのだと思います」

 ここで、西井氏はひとつの事例を提示する。あるメールマガジンで紹介する商品の売れる順番を予想したところ、メルマガの上部で紹介した商品は当然ながら一番売れたが、それ以外は予想と大きく異なる結果になったという。

 「その理由として、このメルマガを読んで購入しようと思ったのではなく、購入するタイミングで偶然メルマガが来ただけなのでは、と私たちは考えています。このメールで購入した人のなかには、メールを見て買おうと思ったのではなく、買いたい時にメルマガが来たから買っただけという人も多いのではと思います。そういった意味では、この一括メール自体は決して意図通りにはなっていません。一括メールに関しては、さらにABテストを繰り返しましたが、同じバナーやキャッチコピーでも、ターゲットによって結果は大きく異なります」

 では、効果のあるメルマガとは一体どんなメルマガなのだろうか。ここで西井氏はある1か月のメール配信による売上構成比を提示する。半分は通常のメルマガ経由であったが、残りの半分はそれ以外であった。「それ以外」というのは、新規ユーザーへのフォローメール、お誕生日おめでとうメール、受注確認メールなどのユーザーのアクションにともなう確認関連メールなどの割合が大きく、それ以外の細かいメールの積み重ねで半分以上の売上を構成しているという。

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将来的には一括送信のメルマガをやめる

 このことからも、顧客は自分に関係したメールは見るということが言える。しかしそれは裏を返せば、人によって送るべきメールは異なるということだ。

 それについて、西井氏は「私たちが考えるメールマーケティングの理想像は、将来的には一括送信のメルマガをやめることです。つまりメールはすべてOne to Oneにする、ということです」と語る。その具体的な実現方法として、西井氏は4つのプロセスを提示する。

One to Oneを実現する4つのプロセス

1.メールアドレス、ユーザー情報を取得する
2.ユーザー別にシナリオを組み、タイミングを具体的に指定する
3.ユーザーにあったクリエイティブのメールを制作する
4.システム設定と配信結果の可視化

 このプロセスにおいて、最も大事なのは「タイミングに合わせて、ユーザーに合ったクリエイティブのメールを送ること」と西井氏は言う。しかし、同社が作成したユーザー別のシナリオは、現在でおよそ300パターンにのぼるという。さらに発展させるには、シナリオと条件を考える「マーケティング脳」、シナリオにあったクリエイティブを制作する「クリエイティブ脳」、配信設定を行い、配信結果を見て再度実行に移す「システム脳」をバランスよく使わなければならない。これらを発展させつつも、効率的に管理するために、同社はエクスペリアンジャパンの提供するキャンペーンマネジメントシステム 「MailPublisher suite」 を導入した。

 「キャンペーンは効果検証が重要ですが、これまでは開封率やクリック率を集めるだけでもとても大変でした。ツールを導入することで、クリック率の可視化も、施策の修正も簡単になりました。先ほど述べた3つの『脳』を社内にすべて持っているというのも、パートナーとして選んだ重要なポイントです。また、メールを使ったキャンペーンを実行するうえで絶対に外せない『到達率』においても、これまでエクスペリアンジャパン社の 「MailPublisher」 を使ってきた実績から信頼を置いています」

 今日、様々なキャンペーンマネジメントシステムのツールが登場している。ツールの選定基準としては、効果が可視化できること、施策の修正が簡単なこと、そしてマーケターが容易に使いこなせることがあげられる。 「MailPublisher suite」 の場合は、それに加えて、モバイル配信の到達率の高さ、ツールを提供するエクスペリアンジャパンがただのツールベンダーではなく、シナリオ設計、データ設計、さらにはクリエイティブまで支援できる企業であることが特長であり、同社が選定したポイントであると述べた。

メルマガ時代から、メールマーケティング時代へ

 「時代は、メルマガ時代から、メールマーケティング時代に移行している」と西井氏は語る。「メルマガ時代は、リストをひたすら入手し、売れるキャッチコピーを研究していました。でもメールマーケティング時代は、ドクターシーラボからのメールをお客様にとって『毎回読むメール』と位置づけてもらうことが大切だと思っています。ショッキングな件名を多く作るより、購入履歴や属性情報、購入履歴をもとにしたシナリオを増やしていきます。シナリオを増やすためには、サイト内で購入以外のアクションを増やすような施策を打っていくことが大切でしょう。結果、インタラクティブなサイト作りが必要というところに立ち戻っていきます」

 以前、西井氏はエクスペリアンジャパンの中澤氏と行った対談で、ドクターシーラボが目指す「おもてなしEコマース」について語っていた。(対談記事はこちら)「今後もお客様とのコミュニケーションを重視し、おもてなしをすることで、関係性を築いていきたいと思っています」と西井氏は講演を締めくくった。

ドクターシーラボの「おもてなしEコマース」を実現するメールマーケティングとは?

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この記事の著者

齋藤 麻紀子(サイトウ マキコ)

フリーランスライター・エディター

74年生まれ、福岡県出身、早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。 コンサルティング会社にて企業再建に従事したのち、独立。ビジネス誌や週刊誌等を通じて、新たなビジネストレンドや働き方を発信すると同時に、企業の情報発信支援等も行う。震災後は東北で起こるイノベーションにも注目、取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/11/06 11:00 https://markezine.jp/article/detail/18624