パーソナルデータをめぐる状況
PC、ノートパソコン、スマートフォンなどを通じてインターネットが手軽に利用できる現在、そこで生み出される多様なデータをビジネスに活かそうという動きが始まっている。その中心となるのが「パーソナルデータ」である。氏名・住所・性別・生年月日など、個人を特定できる個人情報に対して、パーソナルデータは、個人がソーシャルメディアでつぶやいた一言から、検索履歴、銀行の預金残高、医療データ、駅での乗降記録など、個人にまつわるさまざまなデータを含んでいる。
1月15日に翔泳社が主催したイベント「meetup」では、「"Creepy"(キモい)で考える個人情報/プライバシー問題~パーソナルデータの利活用はどうあるべきか~」をテーマに、宮一良彦氏(サイバー・コミュニケーションズ)、清水誠氏(アドビ システムズ)が登壇し、欧米のプライバシー保護の取り組み、新たなパーソナルデータ活用事例、日本の広告業界におけるガイドラインづくりを中心に議論を行なった。
パーソナルデータは21世紀のビジネス資源
パーソナルデータの活用に注目が集まるようになったのは、いつからだろうか。2011年1月、世界経済フォーラム(ダボス会議)が発表した報告書“Personal Data: The Emergence of a New Asset Class”では、「パーソナルデータは新たな“石油”となるだろう。それは、21世紀におけるかけがえのない資源である」と述べている。Googleトレンドでの検索動向を見ると、米国ではこの報告書の発表とほぼ同時期に「ビッグデータ(big data)」というキーワードの検索数が上昇している。
しかしそれ以前から、企業は個人に関連した情報を大量に蓄積していた。日本では「住基ネット」の稼働などもあり、2003年には「個人情報保護法」をはじめとして、官民で個人情報を活用するための法律が成立。そして現在、パーソナルデータの活用がもたらす経済効果に注目した日本政府は、個人情報保護法の改正も含めて検討を行っている最中である。
このような状況を踏まえて今回行われたイベントの前半は、清水氏がパーソナルデータに関する欧米の取り組み、米国での自らのユーザー体験をもとにした事例を紹介。後半では、宮一氏が国内のネット広告業界におけるガイドラインづくりや規範となる概念、さらに「Creepy(キモい)」と言われてしまう現在のネット広告の技術的な課題について解説した。