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「商品を売る」ためのECサイト構築ノウハウ(AD)

ZOZO出身の起業家「HATCH」代表が語る、中小ECサイトが大手に勝つための"ただの顧客をファンにする"ブランディング術とは

 競争激化のEC市場において、スタートアップはじめ中小ECサイトが生き残るには、メルマガやSEMの強化よりも、ブランディングに注力すべきである。そう語るのはキュレーションコマースの先駆者であるコンシェルジュ型通販サイト「HATCH」の代表・三浦有人さん。三浦さんをはじめとするECのプロ3人に、ECサイトのブランディング術、メディアEC化について語ってもらった。

コンシェルジュ型通販サイト「HATCH」に学ぶ、中小ECこそ始めるべきブランディング

 スタートトゥデイに6年勤めECを熟知した三浦有人さんが、2年前に起ち上げたコンシェルジュ型通販サイト「HATCH(ハッチ)」は、急成長中のショップだ。ネットショップ作成サービス「カラーミーショップ」を使って構築されたそのページには、坂本龍一やNIGO®ら著名人が「セレクター」として名を連ねている。

  オーナーの三浦さん曰く、スタートアップを始めとする中小規模のECサイトが、楽天やAmazonなどと戦わずして生き残るためにはECサイト自体のブランディングが必須だという。

 HATCHを運営する三浦さん、カラーミーショップを運営するGMOペパボの安宅啓さん、ショッピングSNS「People & Store」を提供するネットコンシェルジェの尼口友厚さんに、これからのECサイトが実践すべきブランディング術について語ってもらった。

大手との価格競争に巻き込まれず、中小ECが生き残る方法

安宅 Yahoo!ショッピングの無料化や無料のインスタントECサイト作成サービスが登場したことで、ここ1、2年で爆発的にネットショップが増えました。競争が激化し、安値で売るとか、良い商品をそろえるといったやりかたは、もはや飽和状態。それだけでは他と差別化できなくなっています。

三浦 今の中小ECの多くは、セールだ、送料無料だ、ポイント◯倍だと、実質的な値下げをすることで戦っているような状況になっています。でも、値下げ競争では結局、大手にはかなわないですよね。大手とは違う戦いかたをすることが重要です。

コンシェルジュ型通販サイト「HATCH」を運営する
株式会社eight 代表取締役社長 三浦有人さん

尼口 おっしゃるとおり。価格競争に挑むのではなく、サイトのファンを作る……つまり、ブランドが確立しているかどうか、というのが今後生き残れるかどうかのカギになるんじゃないかと思います。ブランディングができている当社のクライアントは、値下げせずにきちんと売れていますから。

三浦 大手との価格競争に陥らないように、HATCHでは表現方法にこだわりました。うちの特徴は、各分野の専門家である「セレクター」が厳選した商品を、ストーリーやコンセプトとともに、1つひとつ大切に見せる、という販売形態。大手モールにはできない、商品価格以上の付加価値の提供を狙っています。

安宅 HATCHさんのサイトTOPは、商品ではなくセレクターの写真が大きく掲載されています。セレクター自身のこだわりが前に出ているので、商品のストーリーを120%、魅力的に伝えられていますよね。思わず読みたくなるコンテンツを入り口に、いつのまにかショップへと引き込まれていきます。フォーマット化されたショップを簡単に作れるサービスが多いからこそ、こういった他じゃ真似できないECサイトが求められているんじゃないでしょうか。

尼口 ECサイトのブランディングというと、何から始めたらいいかわからないという方も多いのですが、まずは価格や配送スピード以外の来店動機を持ってもらえるようにすることです。「このお店だから買いたい」と思ってもらえるコンテンツやコンセプトを、発信していくことが重要です。

コンテンツマーケティングが上手なECサイト、何を発信しているのか

安宅 今年の4月に優秀なショップを表彰する「カラーミーショップ大賞」を開催したのですが、ノミネートされたショップは皆さん、異なる手法でファン獲得の施策に取り組まれています。

 たとえば「北欧、暮らしの道具店」さんは、FacebookページやInstagramを活用してお客様との密接な関係作りに取り組んでいらっしゃいますし、子供服型紙販売の「アンの木パターン」さんは、プチ・ホームページサービスの掲示板を利用してママさん同士が交流する場を生み出しています。どのショップもやみくもにすべての手段を使うのではなく、扱う商品やショップの雰囲気にマッチした適切なツールを選び、ファンの集まる場所を作る努力をしている印象です。

株式会社GMOペパボ EC事業部
カラーミーショップグループ マネージャー 安宅啓さん

尼口 海外のECシーンで、ツールを選んで効果的に発信しているなあと思ったのが「adidas Originals」です。Tumblrを使って画像をアップしています。ファンになるであろう潜在層が集まっているTumblrというツールを選び、その人たちに好かれるような情報(この場合は洗練された美しい写真)を届けることで、うまくリーチできている事例です。

三浦 結局、ブランディングって訪れたくなる場所づくりだと思います。よく聞くのは、「ブランディングに力をいれても効果が目に見えない」なんて声。それは大まちがいです。新しい顧客を獲得するため、そして訪れてくれた顧客をファンにするために、中小のECこそブランディングに時間をかけていくべきだと思います。

カラーミーショップの自由度を武器に、独自コンテンツを発信

尼口 それにしても、HATCHさんのサイトはすごいですよね。「カラーミーショップって、こんなにカスタマイズできるのか!」と驚きました。そういえば、一部の商品は定期購入で、毎月8日(HATCHの日)に届けるという頒布会の仕組みをとられていますね。

三浦 ありがとうございます。たとえば「野菜とレシピの定期便」などは、商品だけでなく、野菜をおいしく味わうための知識や料理する体験をお届けしています。商品価格以外のところに購入動機を付加したかったんです。

 商品ページごとにセレクターのインタビュー記事を載せるなど、カラーミーショップのおかげで、コンセプトに沿ったショップや商品の見せ方を実現できています。そこまでシステムに強い方でなくても、いろんなデザインのカスタマイズができるのが良いところですね。

「野菜とレシピの定期便」の商品ページ。セレクターのインタビュー記事を掲載している

安宅 カラーミーショップでは、最大1万ページまでご利用いただけるフリーページ作成機能のほか、HTML/CSSを直接編集してカスタマイズできるので、WordPressや独自のHTMLを用いたサイトとの連携もシームレスです。

 これらを活用すればネットショップ内の回遊性を高めたり、購入までの導線を自在に設計することができます。HATCHさんのように、買いたくなる仕掛け作りにも取り組んでいただけるようになっています。

 これからはただ売るだけではダメだ、というのをシステム提供側の私たちも実感しているからこそ、メディアECを実現できる環境を構築し提供しています。カラーミーショップの自由度の高さを武器に、多彩なECサイトを作っていただきたいですね。

SEMよりもSNS? ニーズが顕在化していない層にリーチするカギはSNSにあり

三浦 メディアECでブランディング強化はできていても、集客で苦戦しているショップも多いのではないでしょうか。ブランディングの強みは、CV率を上げられるところと既存顧客のファン化。逆にいえば、新規顧客の獲得には繋がりにくいから、別の手も打たなくてはなりません。

eコマース・ブランディングをコンセプトに「People & Store」を展開
株式会社ネットコンシェルジェ 代表取締役 尼口友厚さん

安宅 HATCHさんも利用されているネットコンシェルジェさんのショッピングSNS「People & Store」は、メディアECの集客におすすめです。カラーミーショップと併せて使ってもらえる特別プランの提供もスタートしました。SNS上で容易にブランディングやキュレーションができて、ECサイトのコンテンツをソーシャルに拡散しやすくなりました。

尼口 ありがとうございます! 今の時代って、わざわざ検索エンジンから「◯◯がほしい」と探してきてくれる人は少ないんです。通勤通学時なんかスマホを触って、何をするかといえばSNSやニュースを見たりですよね。そういった潜在層のインサイトにECがタッチするためには、既存のネットショップを暇つぶしに最適化することがポイントになります。

安宅 たしかに。これからは、タイムラインに流れてきた情報から気になるECサイトにたどりつくことが、検索からの流入に代わってメジャーになるんじゃないでしょうか。SNSからの導線を強化することは、今後ECサイトを作る方にとってはぜひ意識してもらいたい点ですね。

個人メディア化していくEC 市場  生き残る秘訣は「つながりの強化」

三浦 HATCHは少しずつブランドを確立しつつあるので、安定的なショップの運営ができてきましたが、商品によって仕入れ先が異なったりして、運営するうえで大変なことはもちろんまだまだ多いです。でも、こういった忙しさや手間も、新しい形のECを創造していく楽しい工程の1つとして捉えています。自分だけのブランドを育てるのって、ショップを作るよりも楽しい時間です。ショップへの愛着が続ける原動力になっています。

尼口 なるほど。僕はこれからHATCHさんのようなメディアEC型のショップがますます増えてくるのではないかと考えています。たとえば、在庫をシェアしたキュレーションメディア型の個人ECとか。そう考えると「優れた商品がそろっているEC」よりも「オーナーのメッセージやセンスがみえるEC」のほうが価値が高くなってくる。目の前にきている個人メディア化の時代にそなえて、今以上にブランディングを強化するべきと言いたいです。

安宅 そうですね。ECサイトを作るだけなら誰でもできるようになりましたし、今後ますますその敷居は下がっていくでしょう。しかし、ECサイトを作ってからが本当のスタート。お客様とのコミュニケーションを重ねながら売れるショップへと育てていかなくてはなりません。小手先の工夫ではなく「今、あなたに、なぜ、この商品を届けたいのか?」というメッセージがきちんと届くブランディングに最適なECプラットフォームを、我々も提供し続けたいです。

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この記事の著者

倭田 須美恵(ワダ スミエ)

2013年11月11日、ECzine立ち上げ。ならではの視点でECに関する情報をお届けしたいと思います。●外部メディアに登場! ・[動画]ネットショップ運営実践会「ECzine倭田さん×井藤対談」[動画]ECみらい会議vol.2「プラットフォーム乱立時代!EC事業者の選択と集中を考えよう」[登壇]BASE主催「ネットショップフェスタ2014」[登壇]MarkeZine主催「MarkeZine Day 2015 Spring」[執筆]NP通信●ソーシャルメディア ・FacebookGoogle+

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2014/10/29 14:52 https://markezine.jp/article/detail/20405