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大元隆志のマーケター訪問記

店頭業務を変革する資生堂ビューティー・タブレット

すべてのチャネルや情報をタブレットに統合したい

亀山氏:ビューティー・タブレットは接客で利用するものなので、これがないとBCの業務に支障が出てしまいます。毎日がハプニングの連続でしたね。そういう状況で、取材を受けるより優先すべきことが多々あったため、今までメディアの取材は引き受けてきていませんでした。

――それほどの苦労があったわけですが、どうしてビューティー・タブレットを導入しようと考えられたのでしょうか。

亀山氏:そもそもBCには携帯電話を用いた業務支援システムが存在していました。携帯電話で業務報告を実施したり、お客さまのご意見を本社へ届けたりしていました。当時利用していた機器が2013年で保守が切れることから、リプレイスしようというところから始まりました。当然携帯電話のリプレイスなのでスマートデバイスを使おうという流れになったんですね。そして、スマートデバイスをどうせ導入するのだから、という所から色々と案が膨らんでいきました。

 例えば、資生堂にはこれまで培ってきたさまざまな美容ソフトがありますので、それらとタブレットを融合させることで、応対やビジネスのやり方の大きな発展につながる可能性があるのではないか、という議論になりました。

大規模プロジェクトの予算をいかに捻出するか

――なるほど。既存システムのリプレイスのタイミングだったと。今のお話を聞くと、ビューティー・タブレットは現場からの業務改善の意見が集約されたシステムのように思いますが、ボトムアップ型のプロジェクトだったんでしょうか。

亀山氏:そうですね、まずはボトムアップです。ただ、一方で「チャネルごとにばらばらだったIT機器の統合をしよう」「店頭応対をITで革新していこう」という大きな視点がありました。ですので、プロジェクトを国内化粧品事業部門のトップ役員がオーナーとしてリードしていくという面もあり、うまいコンビネーションで進められたと思います。

――ボトムアップということは、現場間の調整等が大変だったのではないでしょうか。

亀山氏:いえ、それは特に問題にはなりませんでしたね。お蔭さまで昨年度の決算は好調でしたが、ここ数年は資生堂のブランド力の低下などを指摘されることも多く、現場としては「危機感」を持っていました。従来のやり方ではない何か別の方法で、資生堂をもっと強くしなければならないと、我々システム側の人間だけでなく、化粧品事業部門や研究開発部門、そしてビューティー・タブレットを実際に利用するBCまで、皆が同じ方向を向いてたからです。

――それはすごいですね。資生堂のような大企業の場合、一番のボトルネックは組織間の調整だったりするわけですが。では、プロジェクトを進めていくにあたり、他に苦労したり工夫した点はありますか。

亀山氏:ひとつは、投資、コストの課題がありました。やはり1万台規模のiPadを導入し、いろいろな機能を提供するには、投資が必要でしたから。

――具体的にはどのように解決されたのですか?

亀山氏:業務をスマート化することで削減できるコストにどんなものがあるかをピックアップしていきました。例えば、紙のカタログの郵送コストを電子化することによる郵送料の削減等です。BC一人ひとりに年間70冊、約6,000ページの紙のカタログが郵送されていたので、この製本コスト、配送コストを削減できると試算したわけです。このようなコスト削減の試算をいくつか積み上げ、ビューティー・タブレットの予算化の目途を立てていきました。

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店舗から得た情報を、商品開発やプロモーションに活用

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この記事の著者

大元 隆志(オオモト タカシ)

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 クラウドインテグレーションビジネス推進部 エキスパートエンジニア
国士舘大学 経営学部 非常勤講師

通信事業者のインフラ設計、提案、企画を12年経験。現在はCASBソリューションのセールス開発・プリセールスを担当する一方で、国士舘大学 経営学部にて学生向けに企業におけるクラウド、モバイル利活用について講座を担当する。最新のIT動向や技術動向分析が高く評価され、ヤフーニュース、IT Leaders、ITmediaマーケティング等IT系メディアで多くの記事を執筆。所...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/07/14 14:00 https://markezine.jp/article/detail/20406

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