当たれば数千万ビュー!目的別で変わるブランデット動画のクリエイティブ
次にブランデット動画のクリエイティブを、消費者行動モデルから考えてみたいと思います。AISAS理論、コンシューマー・デシジョン・ジャーニーなどさまざまなモデルがありますが、今回はAIDMAの法則に従って解説します。
ブランデット動画は、プロモーションする商品のマーケット上でのポジショニングや広告キャンペーンの目的によってクリエイティブ表現を検討しなければなりません。以下、プロモーション対象の商品に対するユーザーの関心レベル別に、ブランデット動画に必要な要素をプロットしてみました。
アクション系
まず、商品についての関心度が高い(アクションに近い)位置にいるユーザーに向けたブランデット動画のタイプから見ていきたいと思います。
このレベルまで関心度が高まっていると、商品については既に知っていて購入検討段階にあると言えます。そのようなユーザーに向けては、購入後の使用方法や使用するためのアドバイスなどを動画することで購入後のメリットイメージを伝え、購入に向けて背中をポンと押すようなクリエイティブが求められます。著者の独断ではありますが、参考になる動画を紹介します。
もう一つ、購入後のユーザーに向けた動画を紹介します。auの提供するスマートフォンの取り扱い説明動画です。決してソーシャルメディアで拡散をするような派手さはないものの、商品を使用しているユーザーにとっては非常に親切な内容で、ブランデット動画を使用した一つのコミュニケーションの形と言えます。ユーザーは取り扱い説明書よりも分かりやすく、動画でスマートフォンの使用方法を知ることができるでしょう。
認知獲得系
次にAIDMAの法則で言う認知獲得を目的としたブランデット動画を紹介します。このカテゴリーの動画は商品の特性を伝えるというよりも、より多くのユーザーへリーチする事が優先されるため、ソーシャルメディアで拡散されたり、各種ニュースサイトで紹介されるようなコンテンツが求められます。代表例として昨年世界中で数千万ビュー規模で視聴されたブランデッド動画が以下です。
このペプシのブランデット動画はジェフゴードンという有名なカーレーサーが変装をして、カーディーラーの店員を助手席にのせ試乗車を暴走させるという内容です。非常にユニークな仕上がりで、世界中で4000万ビューの視聴を獲得しています。最近、第2弾が発表されるほど人気になったコンテンツです。
おもしろ系の動画以外にも、心にぐっとくる感動系のコンテンツも多くのviewを獲得しています。以下のDove Real beauty Sketchesはカンヌ広告祭でもサイバー部門ゴールドをはじめ数多くの賞を受賞しています。CSRの観点から作成される動画も増加傾向にあります。
これらのようにブランデット動画は、ヒットすれば数千万ビューを獲得できる強力なコンテンツとなります。しかもユーザーが能動的にアクセスをするためユーザーストレスが少なく、かつ成功すればメディアコストを抑えながら大きな効果をもたらす可能性もあります。
ただ繰り返しになりますがユーザーが心から楽しめたり、感動できるレベルのクリエイティブが求められます。そのため商品の紹介などを後回しにするケースがよく見受けられます。
ハウツー系
最後にアクションに近いユーザー向けの動画と、認知獲得のための動画のちょうど中間に位置するようなブランデット動画を紹介したいと思います。この動画商品の特性や使用シーンがイメージできるのと同時に、表現的にも面白く認知からアクションの間をつなぐような表現の動画が求められます。以下代表例をご紹介します。
iPadをミキサーで粉々にするというかなり衝撃的なビデオですが、この商品が何でも粉々にできるという点と非常に頑丈にできているという点がうまく表現できた動画です。
しかも動画自体がとても面白いため1,000万を超えるビューを獲得しています。認知という視点からも非常に成功したブランデット動画の一つと言えるでしょう。認知獲得を狙った動画の場合、商品の特性をうまく伝える事ができないケースが多いですが、この動画はその相反する2つの目的を同時に表現している点が非常に評価されています。
もう1点紹介します。いわゆるハウツー動画と言われる作り方、使い方を伝えるためのブランデット動画です。音や女優さんの表情など、クリエイティブの表現が上手で思わず飲みたくなるような動画に仕上がっています。そのため認知とアクションの間にプロットしてみました。
テレビや動画広告で商品の事を知り、ハウツー動画を閲覧する事によりユーザーのアクションまでのモチベーションを高めるような事例も今後増えてくるでしょう。
今回はブランデット動画について解説しました。マーケティング視点でオンライン動画を使用するためには動画広告、オンライン動画の両方の特性を理解し、マーケティング上の課題に合わせどちらを使用するのがよいか、またどのような表現がよいのかをしっかりとプランニングする事が成功の鍵となります。
認知から購買、そして顧客になった後までのユーザーの気持ちを想像してそこに適切なフォーマット、表現で動画を使用する事ができれば、企業とユーザーのコミュニケーションをより高い次元で実現できるでしょう。またDMPなどのアドテクノロジーを併用することで、数値的にユーザーの気持ちを推し量る事も可能となります。まだまだ日本では始まったばかりのブランデット動画ですが、今後国内でも多くの成功事例が登場し、ますます注目は高まってくるでしょう。
