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DAC 徳久昭彦氏に聞く/プライベートエクスチェンジの重要性、そして媒体社の収益向上に必要なこと

2015/04/09 08:00

 毎年電通が発表する「日本の広告費」によると、2014年にはインターネット広告費がついに1兆円を超え、その拡大を大きくけん引しているのが運用型広告費の伸長です。今後は広告の枠を超え、マーケティングにおけるあらゆる分野で「運用」という概念がカギになってきます。本連載では、アタラ合同会社が運営するメディア「Unyoo.jp」から、 「運用」というキーワードを軸にしたコラムやキーパーソンへのインタビュー記事をピックアップして紹介していきます。今回は、アタラ 取締役 COOの有園氏が、DAC 取締役 常務執行役員 CMOの徳久氏に行ったインタビューの要約版です。

有園:一般の会社の2014年度がこの3月末で終了し、4月から2015年度という新たな年度を迎えます。私の勝手な主観としては、2015年度から2020年度ぐらいまで、インターネット広告業界の重要なテーマの一つとして、媒体社のマネタイズ力のアップ、とくに、ブランディングに貢献できるインターネット媒体や広告メニューを育成し、そこから媒体社の収益が上がっていくようなビジネスモデルを確立していくことが大事になってくると感じています。なぜ2020年なのか?については、詳しくきょうは触れませんが、簡単にいうと、総務省がスマートテレビとスーパーハイビジョン放送を東京オリンピックに向けて普及させようとしていることで、テレビやインターネットを取り巻く環境が2020年以降に大きく変わる可能性があるためです(参考資料はこちら)。さて、そこで、きょうは、日本のインターネット広告業界で15年以上にわたってアドテクノロジーを先頭に立って牽引し、アドテクノロジーにもっとも詳しい徳久昭彦さん(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社の取締役 常務執行役員CMO)をゲストにお招きすることにしました。

日本における「プライベートエクスチェンジ」の勃興

有園: 2014年に電通さんがグーグルさんと組んで「プライベート・マーケットプレイス」と彼らは呼んでいますが、それを出してきました。2015年になり、Platform IDさんが同様のサービスをプログラマティック・ダイレクトと呼んで出してきました。これはいろいろな言葉がありますが、オートメーテッド・ギャランティード(Automated Guaranteed/以下、AG)やアンリザーブド・フィクスド・レート(Unreserved Fixed Rate/以下、UFR)みたいな領域の広告取引を始める流れが日本でも出てきています(AGやUFRなどの詳細はこちら)。実は御社も同じ領域のサービスをプライベートエクスチェンジと呼称して、2014年くらいからやっていると思いますが。

徳久:実は、DACでは2013年の10月頃には同様のサービスの提供を開始しています。当初は、ある特定の広告主のご要望にお応えする形でスタートしたので、新たな商品という意識はありませんでした。僕らはDSP「MarketOne(R)」、SSP「YIELDONE(R)」、DMP「AudienceOne(R)」を持っているので、プライベートエクスチェンジを作る技術はすでに揃っていました。

有園:なるほど。

徳久:ある広告主を担当する代理店から、ブランドの毀損を防ぐため、出稿先を信頼できるメディアに絞りつつ、データを活用して高い広告効果も得たいというご相談を頂き、その広告主であれば、媒体社は通常オープンオークションには出さないような良い枠を提供してくれるという確信があったので交渉を始めたのがきっかけです。

有園: 2013年10月というと、1年以上やっていらっしゃるということでしょうか。

徳久:1年半くらいになりますね。プレスリリースとして発表はしていません。DACはメディアレップなので、媒体社の収益を最大化するということに細心の注意を払っています。プライベートエクスチェンジはしっかりと運用すれば、純広告と同様、もしくはそれ以上に収益を上げられるのですが、プレスリリースだけが先行して、媒体社の方々に誤解を与えるようなことはしたくありませんでした。広告主からのご要望に応じて、媒体社に個別にご説明してご理解頂くところからスタートし、徐々にここまで拡大してきたという感じですね。

有園:そういうことなんですね。

徳久:現在ではすでに500を超える案件の実績があります。僕らもある程度の自信をつけたので媒体社に積極的にアプローチを行うようになり、いまでは80社くらい入って頂いています。通常はいわゆるオープンオークションに在庫を出さない媒体社が、かなり含まれている状況ですね。

有園:はい。

徳久:アプローチとしては、どちらかというと純広告の枠をいただく形に近いです。DACはメディアレップとして純広告を売っている立場でもあるので、その前提を踏まえて純広告とプライベートエクスチェンジの両方を組み合わせることでより収益の安定化も図れるというご説明をしています。媒体ごとにしっかりとご説明を行いながら参加社数を増やしてきました。

有園:プライベートエクスチェンジというのはつまり、純広の枠を固定価格でプログラマティックに取引きする、ということでしょうか。

徳久:冒頭で有園さんも触れられたように、プライベートエクスチェンジには二種類あって、予め設定された在庫と単価で取引する「AG」と、予め設定された単価でリアルタイムの取引を行う「UFR」というものがあります。先ほど申し上げた通り、DACのプライベートエクスチェンジは自社データを活用したい広告主の要望を受けて始めたものなので、UFRの形式からスタートしました。在庫量は固定できませんが、価格を予め設定しておくことができるため、一般的なオープンオークションのRTBでは、CPM50円~100円程度になるところを、この形式では800円から1,000円といった価格帯で実施しています。純広の場合、CPM3,000円なんていう高額になるケースもありますが、それよりはかなり妥当な金額といえるのではないでしょうか。

プログラマティック取引は、媒体社の収益向上に直結するのか

有園:媒体社はそれで儲かっているのですか。

徳久:単価の面では儲かりますよね。当然。

有園:純広告と比較すると、どうでしょうか。

徳久:純広告の定価よりは安いものの実勢価格にはかなり近いです。純広告が定価で完売するケースは稀なので、併用することで、トータルでこれまでよりも儲かっているというケースはあると思います。いわゆる特定のオーディエンスが訪問したときだけ決まった価格で売る、さらに広告主が事前に分かっているとなれば、媒体社に値崩れやブランド毀損のリスクはほとんどありません。ただし、「その広告主が純広告で出稿している期間には実施しない」など媒体社によって一定のルールを設けています。

有園:「特定のオーディエンスが訪問してきたときだけ売る」というのは、会員制をしいていてユーザーの属性が把握できている、あるいはDMPを導入している媒体社でないとできないように思うのですが。その理解で正しいですか。

徳久:媒体社が持つ会員の属性情報を元に配信を行うケースもありますが、広告主のオウンドメディアに来ている人に類似したオーディエンスに配信するいわゆる「オーディエンス拡張」という場合もあります。僕らのDMP「AudienceOne(R)」はオーディエンス拡張やセグメンテーションができるのでそれを推奨していますが、DMPを導入していない媒体社は正確には分からないです。

有園:ということは、「AudienceOne(R)」などのDMPを広告主側が導入していて、特定のオーディエンスがたまたま、その媒体のインプレッションにあがってきたら、買い付けるということなんですね。

徳久:そういうことです。

有園:それでも儲かるってことですよね。媒体社から見ても。

徳久:DACグループのSSP経由の単価は数十パーセント上がってきています。SSP単価上昇の主な要因はいわゆるプライベートエクスチェンジやDMPを利用した販売によるものです。

有園:プラットフォーム・ワンのSSP「YIELDONE(R)」ですよね。

徳久:はい、プライベートエクスチェンジを開始した直後から平均単価があがり、リリース当初と比べると現在では1.5倍近いかもしれません。DMPと接続したことで更に単価はあがっています。これは特定の媒体社のお話ではなく、「YIELDONE(R)」全体での現象です。

プライベートエクスチェンジで態度変容をおこす

徳久:ただ、コンバージョンがいっぱいとれればいいよ、CPAがよければいいよと言うお客様にはオススメしていません。なかなかリーチできていない人とか、自分たちが狙った人たちの態度変容を見たいなど、データを活用することで態度変容をおこしたいということで買っていただくことが多いですね。

有園:ほう。そこが重要ですよね。

徳久:単純にリーチを獲得したい場合は「Yahoo!ブランドパネル(ブラパネ)」や「LINE」あたりがよく売れていますね。プライベートエクスチェンジはどちらかというと、ファネルの真ん中のあたりの態度変容を促したいオーディエンスに照準を絞っています

有園:態度変容ということは、ブラパネやったときよりも認知している人が多いとか、好意度が上がっているとか。

徳久:例えば「エンゲージが高まっているよね」とかね。どっちかというと、滞在時間が長くなったとか、そういうところに注目しています。ですから、リッチフォーマットのひとつ、ライトボックス(LightBox)による動画を活用しているケースが多いですね。

 

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