King Japanとエウレカ、人気アプリを提供する2社の共通点とは?
ヨーロッパに本社を持つKing Japanは、「キャンディークラッシュ」や「ファームヒーロー」といったモバイルゲームの国内マーケティングおよび配信を展開しています。一方エウレカは、カップル間のコミュニケーションアプリ「Couples」と、恋愛・婚活マッチングアプリ「pairs」を展開している企業です。
両社は人気アプリの提供だけではなく、もう一つ大きな共通点を持っています。それが、Twitterを活用することで、新規ユーザー獲得において特に大きな効果を出していることです。今回、King Japanのマーケティング本部長である金澤氏と、エウレカのCEO兼Couplesの事業責任者を務める赤坂氏に、Twitter活用について詳しい話を伺いました。
MZ:様々なメディアのなかで、お二人はTwitterを活用して効果を出されています。マーケティング施策において、Twitterはどのような位置付けなのでしょうか?
赤坂氏:新規ユーザー獲得施策として、費用対効果が最もいいメディアだと認識しています。新規ユーザーは、人が集まっているところからしか獲得できません。Twitterは単純に人がいるだけではなく、バズが起きやすいという特徴も併せ持っています。出稿額にくらべると非常に多くの新規層を獲得できるメディアです。
金澤氏:赤坂さんの仰るように、新規獲得の面で非常にポテンシャルが高いですね。ただ、当社ではTwitterを様々な目的で使用しています。例えば、コミュニティとしての機能、市場調査、獲得目的以外でのバズ創出などがあげられます。ですからTwitter=単なる獲得メディアとは捉えていません。
第三者ツイートで120万人以上の新規ユーザーを獲得
MZ:両社共にTwitter活用において高い効果を出した施策として「第三者ツイート配信」があると聞いています。その採用経緯や、効果のほどを教えてください。
第三者ツイート配信とは?
モデルやタレントなど、ユーザーに大きな影響力を持つインフルエンサーのツイートをプロモツイート(広告ツイート)として配信するサービス。通常のツイートはフォロワーにしか配信されないが、このツイートは、アカウントのフォロワー以外にも、ターゲティングした任意のアカウントに配信することができる。※もちろん、「プロモーション」表記が入る。
赤坂氏:当社のアプリ「Couples」は2014年5月にリリースしましたが、翌月にはもうTwitterでのプロモーションを開始しました。というのも、メインターゲットが10後半~20代前半なので、その層が多くいるのはTwitterだな、と考えていたのです。そこから、いろいろな施策を試したのですが、Couplesの場合は第三者ツイート配信との相性が一番よかった。
というのも、カメラアプリやゲームアプリと違って、「カップル向けアプリ」というサービスそのものの認知度が低いのです。まずは認知を広げて、カップルでアプリを使うという文化を創っていかなければなりません。そのためには口コミやオピニオンリーダーからの発信が効果的だったのです。結果、約240万というダウンロード数の過半数がTwitter経由です
MZ:Couplesの場合は、第三者ツイート配信に起用するインフルエンサーをどのように決めたのですか?
赤坂氏:人気は高いけれど有名すぎない、特定の層で人気のインフルエンサーにフォーカスしました。Twitterユーザーが身近に感じている人物に連続して投稿してもらうことで、「最近よく見るけど、何これ? 流行ってるの?」という感覚を持たせることに注力したのです。
最初は原宿の竹下通りにいる、個性的なファッションが好きな女の子をターゲットにしていました。いわゆる青文字系雑誌の読者ですね。この層を初期ターゲットに設定した理由は、マーケットが赤文字系に比べて大きくないので発火しやすいという点とネット(スマホ)リテラシーが高いという点が大きいです。ですから、彼女たちが好きな読者モデルにツイートしてもらっていました。その後、赤文字系やギャルにも対象を広げていきました。
高感度な層への施策をやりきったタイミングで、マスにも対象を広げました。具体的には、テラスハウスなど恋愛要素の入った番組に出演されている方、女性から支持を集めるモデルさんをアサインしています。現段階では、累計50名ほどのインフルエンサーを起用しています。
オンラインならではの盛り上がりを創出
MZ:King Japanでは、どのような第三者ツイート配信の使用をされたのですか?
金澤氏:当社ではテレビCMを積極的に打っており、その盛り上がりがTwitterに色濃く派生する事に注目していました。次はツイッター内で、オンラインの世界発信で、盛り上がりを創出することはできないかと思い、第三者ツイート配信の利用を考えました。
具体的にはキャンディークラッシュのゲーム大会を開催して、参加者10名を第三者ツイート配信に起用する、という施策を実施したことがあります。ゲームステージの進行具合と、ツイートのリツイートの回数で優勝者を決めるという企画です。参加者の方は、芸能人というよりはネット上で若者に支持されている方々です。他にも、我々のターゲットに合う、もしくはポテンシャルユーザーを抱えているタレントや読者モデルをアサインした施策も行いました。
また、Twitter活用で効果を感じたものに新作ゲームの事前登録施策もあります。これは、Twitterでゲームリリースを告知して、フォローしてくれたらゲームのアイテムをプレゼントする、というような特典を渡すもの。そこでフォロワーを獲得しておいて、ゲームリリース時にダウンロードしてもらいます。こちらはフォロワーを万単位で獲得できただけでなく、インストールにも繋がったので大変満足できる結果となりました。
30代以上にはわからない? Twitterが支える若者の熱量
MZ:施策後に得た気づきはありますか?
金澤氏:正直、Twitterがここまで盛り上がっているとは思わなかったですね(笑)。施策を通して若者を中心とした、Twitterでの盛り上がりを目の当たりにしました。私たちの世代に比べると、予想できない規模と熱量だったので、とても驚きました。
赤坂氏:それは私も同感です。当社は常時15名ほどの学生インターンをとっているのですが、どの学生もTwitterを熱心に使っている。高校生や大学生にとってはメインのSNSという位置づけが確立されているのですよね。ですから、我々の世代にはわからない、アツさというのがTwitterには確実に存在すると感じます。
金澤氏:「何でこんなことをリツイートするんだ?」というようなことが、何千もリツイートされて、我々の常識では考えられない広がり方をする。つぶやいた一言にとにかく影響力があって、それをファンの方が次々とリツイートしているのですよね。
しかもそのリツイートされている人がお世辞にも一般的に認知率が高いとは言えない方々だったりする。タレントたちよりも身近な人たちの言葉が、ダイレクトにTwitterユーザーに届いて、行動を喚起させている。これもTwitterならではの現象だと感じます。
ゲーム進捗に大量のRT、「リア充乙」も悪い反応ではない
MZ:施策を打って、Twitterユーザーからのポジティブなフィードバックや、印象的な反応はありましたか?
金澤氏:先ほど触れたキャンディークラッシュのゲーム大会の際は、「ゲームを始めるよ」とか「今日はここまで進んだ」というツイートが、瞬く間にユーザーに広がっていく。1人の芸能人に1回ツイートしてもらうよりも、Twitter内のインフルエンサー10名がツイートしたほうが、金額的にも数的にもはるかに効率がいいケースもあることもわかりました。
他にも、第三者ツイート配信ではないのですが、当社ではテレビCMを始めたときには必ずTwitterでも告知します。そのときの反応は目を見張るものがあります。どこのエリアでどれだけCMが流れるのか、どんなバージョンがあるのか、などの問い合わせのツイートや電話がひっきりなしにかかってきます。
赤坂氏:当社の場合も、いろいろと面白い反応がありました。カップル向けアプリは、恋人がいて幸せな人が使うものです。砕けた表現をすると、「リア充」が使っている。第三者ツイート配信もハートがたくさん飛んでいたりします。ですから、恋人のいないユーザーが、Couplesを宣伝してくれているインフルエンサーに対して、負の感情を持つ可能性も否定できません。
しかし実際には、「リア充乙」といったつぶやきの後に、「カップル専用アプリを使えるようになりたい」とか「カップル専用アプリの宣伝をできるような男になりたい」とか、面白おかしく自分の非リア充っぷりを訴求する。一見、やっかみの入ったネガティブなものですが、実はポジティブな反応です。このような反応が非常に多かったことが、興味深かったです。
また、これはオーガニックの話なのですが、このアプリでは“記念日”というカードが作成できます。そして、カードはワンタップでTwitterに投稿することができます。Twitterで検索すると、カードの画像が何千枚と出てくる。こちらからTwitterでの共有を大々的に誘導していないので、完全にユーザーが自主的にとっている行動です。ユーザーにとってTwitterへの共有は当たり前という認識があって、結果的にプロモーションができている。これもユーザーの反応としては印象的だと感じます。
ユーザーからの無視が一番怖い今、必要な姿勢とは?
MZ:第三者ツイート配信の施策を始めるにあたり、社内からの反応や調整などはいかがでしたか?
金澤氏:グローバルでいうと、最初からTwitterとは事業パートナーだったので、始めるための調整は必要ありませんでした。
赤坂氏:Twitterの第三者ツイート配信は、サービス提供者とは別の人間の言葉を借りたプロモーションです。しかし、プロモツイートとして広告表示もきちんとされていますし、ステルスマーケティング的なリスクは全く無いですね。
当社も2015年の5月にM&Aで外資傘下になったのですが、グローバルで考えたときに、ソーシャルネットワークを使ったマーケティング活動は当たり前なものになっている。ですから今後も、前提として社内での理解を得られている状態で様々な施策を進められると考えています。
金澤氏:現在は情報があふれているため、無視されるのが一番怖い。炎上するリスクを怖がっていると、何もできないですよね。極論ですが、まだ炎上が怖いといっている人もいるのか、とも思います。
赤坂氏:会社によっては、ユーザーの反応をリスクととらえることもあると思います。しかし、そう考えている間に先行者メリットは無くなってしまいます。これは非常にもったいないと思います。また裏を返せば、足踏みしている間に、先に行っている企業との差はどんどん大きくなるだろうとも感じますね。
新しい施策を積極的に取り組みたい
MZ:最後に、これからTwitter活用を含めてどのようなマーケティング施策を行いたいですか?
赤坂氏:日本には10~20代が2,500万人いて、そのうち恋人のいる人が750万人といわれています。弊社のユーザーが現在240万人。残りの500万人もTwitterから積極的にユーザー化できればと思います。
金澤氏:Twitterさんと新しい取り組みを、どんどん実施していきたいですね。新しい機能、新しいターゲティング、新しい表現が開発されたら、積極的にトライしたいと思います。
赤坂氏:これは個人的な感想ですが、Twitterさんは我々プロモ商品の利用者の次のニーズを感知して反映するスピードが速いと感じます。このスピード感をもって様々な施策を進めたいですね。