本社は静岡、営業担当は4人、クライアントの8割が東京
MarkeZine編集部(以下MZ):2000年に創業されたサイバーエリアリサーチさんは、IP アドレスを扱う独自性の高い技術を元にサービスを展開されています。まずは山本社長から、事業について教えていただけますか?
山本氏:当社は、IPアドレスを使って位置情報を認識する技術「IP Geolocation」にオンリーワンの強みがあります。この技術を活かして、たとえばエリアマーケティングやWebアクセス解析などを展開できるAPI「どこどこJP」などのマーケティング支援サービスを提供しています。約500社にご利用いただいている「どこどこJP」を中心に、計10種類ほどのサービスを手がけています。
MZ:どういった経緯で「Salesforce Pardot」(以下、Pardot)を導入されたのでしょうか?
山本氏:直接的には、昨年秋に行われたセールスフォースのイベント「Dreamforce 2014」に参加して、Pardotに関するプレゼンに感銘を受けたことが大きいです。
当社は社員40人ほどの規模で、営業は4人で担っています。東京にも支社はありますが、基本的には本社の静岡から東京へ出向いて、新規顧客の開拓とパートナー代理店のフォローをしています。東京の顧客が全体の8割を占めるため、Webサイトやメールを活用して効率化し、できれば成約までオンラインで完結させたかった。Pardotなら、そのまま我々の課題の解決策になると感じたのです。
「人」を追えるPardotならば、取るべきアクションが明確
MZ:具体的に、どのような機能が有効だと思われたのでしょうか?
山本氏:当社サイトを訪れたユーザーに合わせて極力コンテンツを最適化して、オンラインのコミュニケーションを充実させたいと考えていました。それが可能な点に引かれました。分析結果を受けて具体的に我々が何をすべきか、次のアクションが明確なことも、活用の可能性を感じましたね。
また、導入の決め手には、セールスフォースのSFA「Sales Cloud」とCRM「Service Cloud」を導入していたこともあります。データの一元管理のために、既存ツールとの連携は不可欠でした。
MZ:田崎さんはセールスフォースでPardotを担当されていますね。山本さんが触れられた「取るべきアクションが明確」という点について、その理由を教えていただけますか?
田崎氏:BtoBマーケティングでは、最終的に「誰にどう連絡して営業につなげるか」が最も大切です。Pardotは、同じ企業の見込み客でも、一人一人の動きやスコアなどが一覧できるので、それがアクションの判断基準になります。
Webサイトの活用にしても、どのページのPVが高いかといった観点ではなく、あくまで「人」を追っています。厳密にはブラウザのクッキーですが、人を軸にすることで、活動データから見込み客の気持ちを推測して最適なアプローチを見出せます。データが気持ちに直結しているようなものですね。その点も、営業活動につなげやすいのだと思います。
Pardotの機能を動画で確認できます
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結果を見ながらセグメンテーションとコンテンツを調整
MZ:では、Pardotの運用を管轄するカスタマーリレーション部の松村部長と杉本さんに、導入時の取り組みや現状の成果などをうかがいたいと思います。MAツールを導入すると聞いて、どう感じられましたか?
松村氏:そうですね、経験がない分、効率的な活用ができるだろうかと多少の戸惑いはありました。ただ、元々自前のWebアクセス解析ツールで顧客企業の温度感を把握し、リスト化して営業につなげるというMA的な取り組みをしていたので、概念は理解しやすかったです。企業単位の軸に、Pardotではクッキーの軸が加わったわけなので、取りかかりやすくはありました。
MZ:なるほど、以前から顧客の温度感を見極めたアプローチを実践されていたのですね。具体的に、Pardotをどのように導入・運用されていったのですか?
松村氏:導入当初は初期設定のままで運用し、その後は結果を見ながら当社に合う設定に調整していきました。Pardotで実現したいと考えていた、Webサイトのコンテンツやメルマガの内容の切り替えについては、セグメンテーションとコンテンツを試してみないと分からない部分がやはり大きかったので。今でも常に改善していますが、設定がある程度落ち着いて結果が出始めるようになるまでは2か月ほどでしたね。
営業につなげた後のコンバージョンが向上、7%に
MZ:様々なトライ&エラーをされているとのことですが、現状の成果はいかがですか?
杉本氏:私ともう一人の担当者で運用していますが、まずは業務にかかる時間が短縮しました。例えば、細かくセグメントしたメールマーケティングを行うという山本の方針に沿って、以前は「Sales Cloud」から区分けしたデータを取り出し、他のツールを使ってメール配信をしていたんです。
メルマガは月1回、約4000件へ最大10種類を送り分けているので、かなり作業が煩雑でした。Pardotでは連携が非常にスムーズになり、かかる時間が10分の1程度になりました。
MZ:松村さんが仰った「取るべきアクションが明確」という点で、やりやすくなったことはありますか?
杉本氏:例えば、ある資料がダウンロードされたらこの資料も必要だろうといった、その「人」のニーズを推測しやすくなり、セグメントに活かせています。
ホットリードを営業につなげた後のコンバージョン率も、約7%と高い数値で手応えを感じています。これはPardotのスコアリング機能を活用した結果だと考えています。
MZ:ホットリードの見極めには、たしかにスコアリングが有効ですね。その設定も細かく調整されたのでしょうか?
杉本氏:そうですね。Pardotの初期設定だと、当社では商談の有無による影響が大きく、スコアがばらついてしまいました。その後、Webサイトでの行動と資料ダウンロード、オンラインセミナーの受講有無の3つに絞ってスコアを振り、40点でホットリード化するようにしました。
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営業の動きをSFAに蓄積、連携によって失注顧客の復活も
松村氏:カスタマーリレーション部には営業とマーケティングが含まれるので、皆で議論しながら適した重み付けができるようにしました。
また、40点に達したかどうかを観測すると同時に、急にスコアが上昇したリードがないかにも注目しています。一度商談をロストすると、スコアがマイナスになったりして埋もれがちです。そこを見落とさないことも大事だと思っています。営業のアクションはSales Cloudに蓄積し、連携しているので、失注顧客の復活にも有効に働いています。
MZ:田崎さん、こうしたスコアリングの考え方も、成果が上がった要因なのでしょうか?
田崎氏:ええ、デフォルトの配分はあくまで数千社のPardotのユーザー企業での平均的な値になっているので、自社にフィットさせていくことが重要です。特に、ホットリードを受け取る側の営業とも話し合って決めた点がすばらしいと思いますね。
山本氏:実は、カスタマーリレーション部が決めたスコアリングに最初は懐疑的だったんです。例えば、スコアには肩書という項目もありますが、さほどスコアが重く設定されていません。営業視点だと、相手が部長職ならスコア上昇を待たずに行け! と思ってしまう(笑)。
でも、実際の成果を受けて、私も「顧客を育てる」ことを実感した思いです。結果的に、冒頭で申し上げた上京コストも削減し、その割にコミュニケーションは以前よりうまく運んでいます。これは、Pardotでセグメントごとにコンテンツを出し分けて、適切にナーチャリングできているからだと思います。もちろん、データの一元管理もまったく問題ありません。
営業とマーケティングが同じ傘の下にある意味
MZ:ちなみに、営業とマーケティングが同じ部署に属するのはかなり珍しいケースだと思いますが、いつごろからこういった組織なのですか?
山本氏:当社は7月が期初なので、昨年の2014年7月に組織変更し、営業とマーケティングのセクション、そして電話での新規開拓を行うコンタクトセンターを「カスタマーリレーション部」に統合しました。実は、その前年(2013年)にSales Cloudを導入したころから、縦割りの組織から横軸で連携できる組織にしたいという構想があったんです。
MZ:なるほど。MAツールの活用では、営業とマーケティングの壁がよく課題に挙がりますが、田崎さん、この組織体制はツール活用に影響があるとお考えですか?
田崎氏:非常に有効だと思いますね。この組織体制が、サイバーエリアリサーチさんのケースがPardot活用の好例であるとされる大きな理由のひとつです。とはいえ、組織改編は容易ではなく、実現できる企業ばかりではないと思います。
その場合は、どうすればMAを活用できるかというと、積極的にデータを社内に公開し、確率の高いリードを渡して営業に成功事例を積んでいってもらうことが大切かと思います。すぐに大きな成功は出ないかもしれませんが、成功体験を積み重ねることで、次第に雰囲気も変わるはずです。
MZ:では最後に、Pardotを通して今後取り組みたいことをそれぞれお教えください。
松村氏:誰にどんなコンテンツが有効なのか、もっと見極める必要があると考えています。セグメントとコンテンツとのマッチングをより精緻化させて、コンテンツマーケティングを通したナーチャリングに興味がありますね。
杉本氏:オンラインセミナーなどで動画を活用したマーケティングに取り組んでいるので、そちらも、もっと見ていただけるようにしたいですね。動画以外のコンテンツの充実も進めていきます。
山本氏:Pardotを導入して、顧客の効率的な獲得には手応えを感じています。ですから、次はやはり規模を出すことですね。今のままではリードが枯渇するので、新規開拓に力を入れたいです。同時に、高い成果が上がっている失注顧客や休眠顧客の掘り起こしも、引き続き行っていきます。
田崎氏:サイバーエリアリサーチさんの特長は、データ統合によってビジネスを全体的に把握できており、且つ、データ活用による戦略に対応できるよう組織体制も整っている点かと思います。今後も当社は、この強みをPardotはじめ、SalesCloud、Service Cloud等のソリューション面から支えていければと思います。本日はありがとうございました。
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