アイスタイルが運営する化粧品クチコミサイト「@コスメ」のユーザーは現在、月間1200万人。20~30代女性の約3人に1人が利用する。約3万ブランドが参加し、登録されている商品は25万を超える。また、同社はリアル店舗を展開するなど、消費者の商品購買行動に大きな影響を与えてきた。その同社が次の事業戦略として発表したものが「ビューティープラットフォーム構想」と「グローバル展開」だ。
これまで、アイスタイルはwebとリアルの両面から、ユーザーに合わせたサービスを展開してきた。しかし、「その結果、サービスが複雑化してしまい、ユーザーにわかりにくくなっている」と吉松氏。改めて、利用者視点に立ち戻った時に重要なものが、ビューティープラットフォーム構想だという。同構想で取り組むものはサービスの統一、独自情報のコンテンツ化、そしてBIDの導入の3つ。どのようなことをするのか具体的に見ていこう。
同社にはクチコミサイトの@コスメやECサイトのコスメコム等のサービスが存在する。今後、それらのサービスで利用していたID、ポイント、商品情報や売上、店舗情報などのデータベースを統合する。将来的にはアプリの統合も視野に取り組みを進めるという。
これらの情報が統合されると実現できることが、独自コンテンツの提供だ。データベース統合により、同社の保有する情報を掛け合わせ、多様な切り口でのコンテンツを提供できる。「これまでは、お客様が何かしらの情報を探して@コスメに来ていただくことがほとんどでした。これからは、オリジナルの情報を生み出しお客様に提供していきたい」と吉松氏。
最後が、BIDの導入。BIDとはビューティIDの略語で、同社内でつくられた言葉だ。これは美容事業者や専門家、化粧品美容に関わる個人事業主に与えられるIDで、ユーザーIDの対になるものだという。BIDを導入する最大のメリットは、アイスタイルのプラットフォーム内で、メーカーや事業者側も情報が発信できるようになること。
これまで、@コスメでは消費者が口コミを投稿する=情報発信をすることができた。これからは、ブランドや美容師などのプロが持っている知識を提供できるようになる。例えば、美白美容液を@コスメ内で検索すると、美白をキーワードに、プロによるお手入れ方法やサロン情報も表示されるようになる。さらにここから、サロンやプロをフォローするなどあらたなつながりを創出することも可能になるという。事業者側から見れば、既存のチャネルでは獲得できなかった新しい顧客と出会える可能性があるわけだ。
BIDの特徴はもう一つある。それは、情報発信と業務管理がワンストップで実現できる点だ。これまで触れてきたのは消費者と事業者のつながりだが、事業者同士でも情報を交換できる。例えば、新たにヨガ教室を開きたいと考えた時、アイスタイルのプラットフォームを経由して、教室を開くスタジオや備品調達先探しをすることができる。
BIDは現段階でブランド向けとサロン向けが用意されており、6000IDが導入されているという。来春にはショップ向けとプロ向けのID導入も予定されており、同社は2018年には現在の10倍、6万IDの導入を目指している。加えて有料サービスも展開し、従来の小売・流通、広告・ソリューションの2領域に加え、toC課金領域、toB課金領域の4つの柱での成長を図ると吉松氏は展望を語る。
発表されたもう一つの戦略、グローバル展開はどのようなものだろうか。アイスタイルは2012年の中国進出支援サービスを皮切りに、海外でも様々な事業を展開してきた。その結果、第一四半期の売上において、全体の約1割は「海外での小売・卸事業」によるものとなった。他方、海外から@コスメへのアクセス数も上昇傾向にあるという。「海外の人々が、日本のどのような化粧品に興味を持っているのか、私たちなら把握できます」と吉松氏。日本とアジアそして世界をつなぐハブになるべく、グローバル展開を行う、と意欲を見せる。
そこで具体的に取り組まれるものがビューティーコンテンツと@コスメビジネスモデルの輸出展開。前者は、日本で生み出されるコンテンツの輸出。例えば、現在4ヶ国語対応をした@コスメグローバルの展開などがすでに始められている。ビジネスモデルについて吉松氏は「海外コスメのローカルデータベースを構築、グローバルでのネットワークをつくりたい」と構想を語る。
その一歩として現在進んでいるものが、フィリピンでの化粧品卸事業とコンセプトショップのプロデュースだ。「次のステップで実店舗を構え、それを展開していきたい」と吉松氏。グローバル展開によって、2020年までに海外事業での売上30億円という目標を提示した。
最後に吉松氏は「アイスタイルはBeauty×ITで世界ナンバーワンを目指します」と力強く語り、事業戦略発表を終えた。
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