日本のプログラマティック広告に潜む課題
小林:本連載の第一回では、弊社の菅原からアドフラウドの基礎知識を解説しましたが、今回はアドフラウドの対抗策となる“アドベリフィケーション”について考えていければと思います。
本題に入る前に、日本においてもプログラマティック広告という言葉自体は確実に広がっていますが、「米国と比べて遅れをとっている、上手く浸透していない」と日本のマーケターは感じているのではないでしょうか。そもそも何が課題なのか、といった問題から議論をしていきたいと思います。世界44か国で実績を持つコムスコアの男澤さんとしては、日本のプログラマティック広告にどんな課題が潜んでいると感じていらっしゃいますか?
男澤:まず海外と日本のデジタルマーケティング部では、担当者・責任者の役割の違いが大きいと思います。 海外の担当者は、自社の色々なケーススタディを総合的にデータ化した上で基準値を設けて、コスト効率、ブランドへの貢献度をしっかりとROIで評価します。また、責任者は世界各国の事例を常に吸収し、デジタルの知見やコスト意識を持って、部下とコミュニケーションをとり、新しい技術に対して自ら評価し、トライアルを行うことにも積極的です。
小林:プログラマティック広告に関しては、どのサイトのどの位置に表示されるかわかった上で出稿する純広告とはわけが違いますよね。苦肉の策として「ホワイトリスト(※)に配信」することで、ブランド・セーフティーを実現できたとしても、「クリーンなサイトで配信」できたことにしかなりません。そこではロボットやヘビークリッカーによるクリックがあるという視点と、本当に価値あるターゲットに届いているのか、という視点が抜け落ちているケースが多いです。
※ホワイトリスト:安全が確認されている対象のメディアリストを作り、それ以外を排除する方式。
そのインプレッションに、価値はあるのか?
男澤:日本において、なかなかアドベリフィケーションが重要視されない理由は、連載の第一回にも話があった海外と日本の指標の違いが決定的になっていると思います。日本の場合、指標が「C」の指標であるCTR、CPA、CVに集中する傾向にあるので、あまりインプレッションの議論がされることはありません。
故に、見られていない広告、露出時間が短すぎる広告もカウントいわゆるviewableになっているか、という問題は真剣に議論はされないように思います。海外でも当然ながら「C」の議論もありますが、その前に確実に「インプレッション」の議論が先にあります。図を御覧下さい。海外の場合はまずはじめに、プログラマティック広告に関わらず「価値あるインプレッション」であるのか、3段階のチェックから入ります。
小林:この図でいうと、一段階目としてロボットなど人以外の本来的なターゲットではない人を除き、二段階目としてブランド毀損する可能性のあるサイト(メディア)を除き、3段階目としてViewableか否かを判断して、はじめて「価値あるインプレッション」となるわけですね。つまり、人・面(メディア)・枠と3つを掛け合わせてようやく「価値あるインプレッション」となると。