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ファン心理をくすぐるアプローチ方法を探せ! 『激レアバイト』が続けるTwitter広告の研究に迫る

 「25クリエイティブ×4センテンス=100パターン」これは、リクルートジョブズが展開する『激レアバイト』の1求人案件当りのTwitter広告の数だ。しかも、2週間ごとに3~8案件の告知を行っているという。さらにターゲティングのテストも加わるのだから膨大だ。彼らはなぜ、ここまでするのだろうか。その狙いと広告運用から見えてきた成功の法則を聞いた。

他では体験できない“激”レアなバイトを紹介

 リクルートジョブズが展開する「タウンワーク」のサービス『激レアバイト』をご存知だろうか?“日給3万円、交通費支給”の、日常では体験できないようなレアなアルバイトを紹介するというものだ。同コンテンツでは、高速かつ大量なTwitter広告のクリエイティブテストを続けているという。今回、リクルートジョブズの金井氏、伊神氏、市川氏および、Twitter Japanの西原氏にTwitter広告運用の詳しい話を伺った。

写真左から株式会社リクルートジョブズIT戦略室デジタルマーケティング部マーケティンググループグループマネージャー金井 統氏、同グループ伊神 巨樹氏、市川 泰宏氏、Twitter Japan株式会社ストラテジックアカウントセールスアカウントエグゼクティブ西原 裕識氏
写真左から、株式会社リクルートジョブズ IT戦略室 デジタルマーケティング部 マーケティンググループ
グループマネージャー 金井 統氏、同グループ 伊神 巨樹氏、市川 泰宏氏
Twitter Japan株式会社 ストラテジックアカウントセールス アカウントエグゼクティブ 西原 裕識氏

 リクルートジョブズのIT戦略室デジタルマーケティング部マーケティンググループでは、リクルートの5メディア(「タウンワーク」、「フロム・エー ナビ」、「はたらいく」、「とらばーゆ」、「リクナビ派遣」)等を横断して、全てのプロモーションからWEB集客まで行っている。その中で、金井氏は全体のマネジメント、伊神氏は『激レアバイト』の戦略企画、市川氏はデータ分析やシミュレーションモデルの構築を担当。また、西原氏は、Twitterのリクルート担当営業として、Twitterを活用したブランディングからダイレクトレスポンスマーケティングまでトータルでサポートしている。

インセンティブに頼らない新規カスタマー向け施策を実現するために

MarkeZine編集部(以下、MZ):そもそも『激レアバイト』を始めた背景は何でしょうか?

金井:魅力的なコンテンツを用意することで、「タウンワーク」を初めてご利用いただくカスタマーを増やすことを目的にしています。

 ECサイトなどでよく見られるのがインセンティブ施策だと思います。ですが、求人情報サイトの場合はインセンティブで左右される要素が少ないため、あまり有効ではありません。そこで、求人を見に来ているカスタマーが求めている求人情報をコンテンツ化して創り、ここでしかできない貴重な体験を届けようと考えて生まれたものが『激レアバイト』です。日常生活では体験できないようなお仕事、例えばJAXA様(宇宙航空研究開発機構)と組んだ宇宙バイトや、アニメの声優のバイト、F1レースのスタッフバイトなど、今までに約100以上の求人案件を展開しています。

『激レアバイト』
『激レアバイト』

MZ:Twitterはいつから、どのように活用されているのですか?

金井:『激レアバイト』を開始するまでは、アプリのインストール広告を中心に活用してきました。2014年1月に『激レアバイト』を開始してからは、Twitter広告でのプロモツイートを活用させて頂いております。

プロモツイート:ターゲットのタイムラインに、広告主のツイートをネイティブアドとして表示する広告

 アルバイトの案件ごとに、ターゲティングのためのキーワードを多数用意して相性の良い層を探っています。我々のメディアは、多くのトラフィックを獲得する必要があるので、利用規模が大きいTwitterからの流入を意識しています。

伊神:施策の評価軸としては、CPAを見ています。また、CTRとCVR、そしてCTVRを見ながらレポートを1時間ごとにチェックし、リアルタイムでチューニングして常に最適化しています。

MZ:『激レアバイト』でのTwitter運用はどのような組織体制で行なわれているのでしょうか。

伊神:実際のクリエイティブ制作から広告運用までを広告代理店様に、全体のディレクション及び数値モニタリングによる改善を当社が行っています。

カギは大量&高速、1案件100パターンをテスト

MZ:1時間単位でレポートをチェックしチューニングをしているとのことですが、運用ではどのような点に気をつけているのでしょうか?

伊神:リーチを最大化するために、とにかく大量に、高速に、入稿と入れ替えを繰り返しています。コンテンツは2週間スパンで更新し、『激レアバイト』の案件数は常時3~8件あるのですが、案件ごとにクリエイティブを平均で25本用意しています。さらに、テキストをそれぞれ4パターンつくっています。ですから、仮に4案件ある場合は、4×25×4で400パターンあるわけです。

テストをしたクリエイティブ(一部)
テストをしたクリエイティブ(一部)

金井:なぜここまで注力しているのかというと、集客に関してTwitterの効果が高かったからです。

 しかし、効果を分析していくと案件によって効果にぶれがあることが分かりました。そこで、クリエイティブの研究がスタートしたのです。最初はバナーだけでしたが、テキストによっても反応が大きく異なることがわかり、25×4パターンの出稿がはじまりました。

テストをしたテキスト
テストをしたテキスト

 さらに、コンテンツによっても相性の良いクリエイティブにはかなり違いがあることがわかりました。今では、まずは当該コンテンツのターゲット層にどんなことが訴求できるのかを考えて3日でクリエイティブテストを行い、その結果をふまえて広告を打つ流れができています。

西原:コンテンツを軸にしてプロモーションをかける事例として、『激レアバイト』は圧倒的な成果をもって成功してらっしゃると思います。他と明らかに違うのが、やはり高速かつ大量に効果検証されていることですね。

F1好きはマシーンにときめく! ファンを惹きつけるコツとは?

MZ:膨大なテストをされてきた中で導かれた成功や失敗のパターンがあれば、教えて頂けませんか?

伊神:一つ目は、案件の魅力を広告展開の初日からきちんと伝えることが成功のコツです。例えば、コンテンツ側への確認に時間がかかってしまう場合には、魅力あるクリエイティブが展開できないということもあります。それではやはり遅くて、どれだけ良いコンテンツであっても応募数が落ちてしまいます。

 また、音楽フェスのバイトでは「関係者以外が立ち入ることができない特別な場所で仕事ができる」という訴求ができているか否かが重要でした。とにかくレア感が大切なんです。そもそも『激レアバイト』には、「本当にここでしかできない」「学びのある働く体験」という2つのコンセプトがあります。そこをクリエイティブにきちんと載せないと、カスタマーに伝わらないし、クリックもリツイートもされません。

金井:注意すべきは、案件によって、カスタマー(ファン)が興味を持つポイントは違うということ。『激レアバイト』で汎用的に打ち出している条件に「日給3万円」があります。通常の求人ならば、この金額に惹かれてアクションをとることが往々にしてあると思うのですが、『激レアバイト』はそうではない。コンテンツ自体に魅力を感じて応募してきてくださるのです。

 例えばF1に関するバイトの案件で、クリエイティブにそれぞれ、『日給3万円』『F1マシーン』『F1レーサー』を打ち出してテストしたところ、結果が一番良かったのは、なんとF1マシーンを全面に押し出したものでした。

CPAのよいバナーとテキストの組み合わせ
CPAのよいバナーとテキストの組み合わせ

 F1に詳しくない方にとっては、「え? マシーンがそんなにいいの?」と感じるかと思いますが、ファンにはとても魅力的なんですよね。案件に応募したいと思って頂けるファン層の心をくすぐるものは、やはり当事者にしかわかりません。私たちも様々な角度から仮説立てをしてクリエイティブを用意していますが、3割は外れます。多くのクリエイティブでテストすることの重要性を感じますし、面白さも感じますね。

市川:実は、Twitterからのリンク先は個別の案件ページではなく、他の求人も並列して紹介しているページです。ですから、F1バイトの広告から『激レアバイト』のサイトに来ても、他の案件を見られるわけです。しかし興味深いことに、全て日給3万で、激レアなバイトであるにもかかわらず、他の求人への応募はほとんどありません。カスタマーは目移りすることなく、興味のあるものだけに応募しているのです。そのため、案件の募集候補となる母集団が興味を持っている事柄を、ピンポイントで訴求する必要がありますね。

伊神:表現の面では、Twitterさんからアドバイスをいただいたのですが、テキストは広告らしくするよりも、カスタマーが投稿しているようなテンションや文体で書くことも大切ですね。

西原:Twitterは、ユーザーがコミュニケーションを楽しむプラットフォームなので、カジュアルで親しみのある距離感が効果を生むケースも多いんです。いかにも一方的な広告っぽいと、やはりスルーされやすいですね。

『暇だ』とツイートしたらすぐ求人広告が届く、タイミングの良さ

MZ:確かに、人のぬくもりが感じられる投稿の方が目に止まりそうです。ところで、案件ごとに母集団が異なるということは、ターゲティングも重要だと思います。こちらはどのように行っていますか?

伊神:膨大なキーワードを設定するだけでなく、どのようなアカウントをフォローしているかも考慮しています。これも案件によって全く異なりますね。ファッション関連の案件だと若年層の女性が多いのですが、鉄道案件だと年齢層もぐんと上がって多くが男性になる。共通していることは、それぞれの趣味の世界にいる人たちだからこそ理解できる「専門用語」を入れていることですね。

西原:Twitterならではだと個人的に感じたことは『暇だ』というワードの反応が良かった点ですね。様々な方の何気ない一言から感情を捉えられるのは面白いと思います。

金井:感情はタイミングが命ですから、そこをキャッチできるTwitterは強いですよね。例えば、「暇だ」とツイートした人が次にローディングをかけたときには広告が出ますから、ほぼリアルタイムにアプローチができる。

MZ:本当に暇な人や、何かに興味がある人のところにダイレクトにメッセージが届いているわけですね。

金井:Twitterを活用してみて、『そうか、カスタマーが求めているものをつくればいいんだ』というのが一番の発見でした。我々が訴求したいものを一方的に見せても、Twitterのユーザーにとっては嫌だろうな、と。だったら何が求められているのかを考えて、最適なものを最適なタイミングで贈る。すると、驚くほどの反応が返ってきます。

ファン化と拡散、コンテンツ強化を目指す

MZ:様々な試行錯誤を続けられていますが、これからはTwitter活用を含めてどのようなことに挑戦したいですか? 展望を教えてください。

市川:まずは、オーガニックであるTwitterアカウントの運営と、広告であるプロモ商品を組み合わせた活用をしたいです。今はプロモ商品による集客で新規のお客様が増えて来ていますが、それぞれアニメのバイトならアニメファン、フェスのバイトならフェスファンであって、現段階では『激レアバイト』自体のファンではないのです。

 ですから、ぜひロイヤルカスタマーとして『激レアバイト』をフォローしてくださる存在になっていただきたい。そのため、キャンペーン施策で初めてサービスをご利用いただけた方と、公式アカウントを通して長いお付き合いをしていければと考えています。

 さらに、その上で拡散の仕組みを作りたいです。『激レアバイト』についてTwitterで話題化する際は、アイドルやフェスといったコンテンツを提供してくださるパートナー様の公式アカウントによるツイートか、メディアサイトに掲載された記事が多いです。ですが、特に後者は肝心の応募サイトのURLがなく、応募にはつながらないケースもあります。私たちがきちんと情報を発信して話題化することで、応募して頂きその後にも関係を構築していきたいと考えています。

金井:広告の配信ではタイミングキャッチの研究を極めたいですね。Twitterで日々膨大に流れるツイートの中で、何が求職のシグナルなのか見定めたい。先ほどの『暇だ』は良い発見でしたが、絶対にもっと沢山あるはずですから。

伊神:サイトのコンテンツと連動させる施策として、バイトの様子を体験レポートとしてTwitterで実況していけないかと考えています。例えばJAXA様のロケット打ち上げバイトは、レア度が高いため採用人数も限られています。テキストベースと動画で中継できれば、応募したけど採用されなかった方や、興味をもっていた方を含めた多くの方々と、コミュニケーションを取れるのではないかと思います。

西原:様々な重要な瞬間を届けることができるライブ中継は我々も今後注力したい分野です。ぜひ、一緒に取り組みたいと考えております。また、ユーザー同士の共感や会話を増やす部分は、Twitterならではのマーケティング手法ですので、コミュニケーション設計も含め、効果的な運用をご提案できればと思います。

 同じコンテンツでも、見ている人によって興味を示したり、反応したりする部分が違うので、単純にタイムラインにバイトの情報が流れて終わりではなく、「こんな面白いことがあるんだ!」という共感から「フォロワーさんにも知らせたい」という拡散につなげられれば、御社のマーケティングに役立てると考えます。

金井:心強いですね。少し話はそれますが、『激レアバイト』の核である体験コンテンツの拡充も非常に重要だと考えています。Twitterを活用した仕組みづくりを進めると共に、「働く体験を通して、今後の人生に活かして頂きたい」というコンセプトで、このサービスをもっと成長させていきたいと思っています。無料で多くのカスタマーにリーチができるプロモーション、PRとなる仕組みとなっておりますので、ご参加頂けるパートナー様を常に募集しています。これからも素敵な体験をカスタマーに届けていけるように努めていきたいですね。

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/02/22 12:00 https://markezine.jp/article/detail/23803