SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究(AD)

人工知能をマーケティングに導入できる時代へ。専門家に聞く、その効果と導入プロセス

 昨年から今年にかけて、マーケティング領域における人工知能の活用に熱い視線が注がれている。ただ、実際にどのような課題を解決できるのか、導入の仕方など、まだ知られていない部分が多いのが現状だ。マーケティング領域で人工知能ソリューションを提供するRappaの代表取締役社長である斎藤匠氏は、「人工知能も種類によって強みが異なる。自社の目的と製品特徴を見極めて導入するのが近道」だと語る。人工知能搭載ロボット「Kibiro」の展開と併せて、マーケティング領域での活用と具体的な導入についてうかがった。

法律、医療、知財……グローバルでAIエンジンを展開

MarkeZine編集部(以下、MZ):マーケティング領域でも毎年さまざまなバズワードが生まれていますが、今年はすでに人工知能(以下、AI)がそのひとつになりそうな兆しです。

Rappa株式会社 代表取締役社長 斎藤 匠 氏

斎藤:そうですね。私も、企業のマーケティング担当の方から「AIで何かしたい、何ができるのか?」というご相談を受けることが非常に増えています。

MZ:そうなんですね。Rappaは2015年に設立された新しい会社ですが、すでにAI活用の実績が厚いUBICの傘下とのことで、まずは両社について事業内容をうかがえますか?

斎藤:UBIC自体は2003年、法律分野での訴訟支援事業を軸に創業して以来、他社に先駆けていち早くAIを活用することにより事業を成長させてきました。弁護士などの専門家が、膨大な文書データやメールなどから証拠を検出するお手伝いを、独自のAIエンジン「KIBIT(キビット)」によって行っているんです。元々米国をベースに事業を拡大し、現在はアジアと欧州を含めてグローバルでソリューションを提供しています。

 領域としては法律に加え、医療や知財にも進出しています。たとえば、医師が行う電子カルテの確認作業をAIが肩代わりするなど、「専門家の作業や判断を助ける」という方向で発展してきました。その中で、Rappaはデジタルマーケティングの領域で、Web解析などを通して、専門家であるマーケターのサポートを行っています。

テキスト解析から人の機微を理解する「KIBIT」

MZ:法律や医療、知財の領域では、すでに多くの活用実績があるのですね。文書データやメール、電子カルテというと、具体的にはテキストの解析を行っているということでしょうか?

斎藤:そうですね。AIにもいろいろな種類があります。たとえば、ディープラーニングという言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、こちらは画像やより複雑な構造を持つ情報を覚え、解析していくアルゴリズムで、私たちの強みとする技術とはまた異なります。

 私たちのAI、「KIBIT」が得意としているのは、テキスト(自然言語)の解析です。音声や、今こうして会話している内容も、テキストに落とし込めば解析対象にすることができます。

MZ:なぜ、子会社を設立してマーケティング領域に注力することになったのですか?

斎藤:端的にいうと、専門家の判断を肩代わりするために開発したAIが、より広い分野に転用できるという技術的な可能性が見え、デジタルマーケティング分野に注力するためには事業を特化させた子会社が必要だと判断したからです。また、マーケティングやWeb上の領域は、私たちが得意としているテキストデータ解析が非常に有効だという理由もあります。

 Webはログデータと同様に、テキストデータの宝庫でもあります。ログを解析して行動を予測するようなソリューションは出てきていますが、人の趣味嗜好や考えが凝縮されている自然言語(テキスト)を専門的に解析できるAIは、当社以外にほとんどありません。

 実は、当社のAIエンジンの「KIBIT」という名称は、“人の心の機微を理解できる”ところが語源なんです。学習によって、それを各領域の専門家レベルで行えるわけです。

3月3日開催のMarkeZine Dayでは新たな事例紹介も

2016年3月3日(木)に開催する「MarkeZineDay 2016 Spring」に斎藤氏が登壇します! 記事では明かせなかった事例などもイベントでは紹介します。申込は2月29日の17:00までとなっておりますので、気になる方はこちらから詳細をチェック!

【セッション情報】「MarkeZineDay 2016 Spring 」B-5セッション
『今こそ取り組むべき人工知能のマーケティング活用事例 ~VOC活用・レコメンド・ロボットのご紹介~』

・開催日/時:2016年3月3日(木)/13:50~14:40
・場所:秋葉原コンベンションホール(東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル2F)
・詳細、お申し込み:こちらから

理解すべきはAIごとに強みが異なること

MZ:データを学ばせて各領域に特化させることで、AIを専門家レベルに育てていくということですね。「人工知能」というワードを聞くと、ついどんなお題にも答えてくれるような万能なイメージを持ってしまいます。

斎藤:そうなんですよね。先ほどお話しした、そもそも開発元によってAIの強みが異なることと、それに何を学ばせていくかによって解析が精緻化し、自社により役立つものになっていくことは、まず知っておく必要があると思います。

MZ:「KIBIT」の場合、具体的にどうやって“学ばせて”いくのですか?

斎藤:たとえば弁護士の方向けに提供する場合、「このメールは重要/重要でない」というラベリングをしたメールデータを最初に100件ほど読み込ませます。あとは、膨大なデータを解析させ、返してくる結果にしばらくYES/NOをつけていくことで、自動で精度を高めていきます。

 このプロセスは、既存のどのAIも変わりませんが、「KIBIT」の特徴は、最初に学ばせるデータが少数でも導入できることです。専門家の肩代わりなら100件ほど、個人の好みを学んでいくなら3、4の好き嫌いに関する項目を入れれば学習し成長していくので、導入時の負荷がなく、早く運用を開始できますね。

 最初に膨大なデータをインプットしないと機能しないAIも多いので、それだと中小企業やニッチな領域での活用はデータが少なすぎて実現が難しくなります。

MZ:なるほど、そのあたりも実際にAIを選定するときにはチェックすべきですね。

ユーザーの感覚を学習、レコメンドに活用

MZ:では、具体的にマーケティング領域で、どのような活用が可能なのでしょうか?

斎藤:方向性としては、大きく2つあります。ひとつは、企業内にすでにあるマーケティングデータの解析です。たとえばカスタマーセンターや商品レビューなどに蓄積された顧客の意見(VOC)を、いくつかの軸で解析して、欲しいデータを仕分け・分類して抽出できます。これはすでに企業への導入が進んでいます。

 もうひとつは、ユーザーの好みを把握して、レコメンドやコンテンツキュレーションなどのマーケティングの提案に活かすことです。どういった口コミを閲覧しているか、ユーザー自身がどんなコメントを書いているかなどを分析して、ユーザーの感覚を学習していきます。その上で、いくつかのデータ抽出の軸をインプットすることで、マーケターの方が意図するレコメンドを代行することができます。

MZ:すでにソリューションとして展開されているのですか?

斎藤:そうですね。提供の仕方も2つあり、ひとつは製品化したパッケージを導入いただく方法です。顧客の意見の分析などは、すぐにできますね。

 もうひとつは、エンジンとして提供して、クライアントのシステム内に組み込んでいただく方法です。企業内で蓄積したさまざまなデータの解析や、独自の使い方をしたい場合などは、ご相談に応じてフィットさせることが可能です。ECサイトでのレコメンドで、今ちょうど実証実験が終わった段階の事例がありまして、近いうちに公表できる見込みです。

 さらに、今年力を入れていくのは、「KIBIT」を搭載した小型ロボット「Kibiro(キビロ)」の展開です。

3月3日開催のMarkeZine Dayでは新たな事例紹介も

2016年3月3日(木)に開催する「MarkeZineDay 2016 Spring」に斎藤氏が登壇します! 記事では明かせなかった事例などもイベントでは紹介します。申込は2月29日の17:00までとなっておりますので、気になる方はこちらから詳細をチェック!

【セッション情報】「MarkeZineDay 2016 Spring 」B-5セッション
『今こそ取り組むべき人工知能のマーケティング活用事例 ~VOC活用・レコメンド・ロボットのご紹介~』

・開催日/時:2016年3月3日(木)/13:50~14:40
・場所:秋葉原コンベンションホール(東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル2F)
・詳細、お申し込み:こちらから

ロボットが個人の好みデータベースを構築

MZ:「Kibiro」は、かわいらしい風貌ですね。御社のサイトには一般家庭での活用イメージが動画で紹介されていましたが、毎日会話することでユーザーの好みを覚えて、条件を伝えれば適切な提案などもしてくれるようになる。これは、具体的にどのように展開されていく予定なのでしょうか?

斎藤:ひとつは、動画にあったように家庭への導入です。今年後半の販売開始を予定しています。もうひとつは、商業施設への設置です。たとえば書店やレンタルショップの店頭、飲食店のテーブルなどに設置して、訪れた顧客の問いかけに対応したり、レコメンドを返したりできるようにしていきます。

 両方とも、それぞれの場所で個別に学習し進化していきますが、やり取りのデータを当社で集約・管理して、“個人の好みデータベース”のようなプラットフォームを構築する計画です。

 この事業におけるパートナー企業も募集している段階で、コンテンツを提供いただくような形で組めればと。Kibiroが広告媒体や、送客装置になり得る可能性もあると思います。

MZ:なぜ、ロボット型にされたのですか?

斎藤:スマートフォンのアプリではなくロボットにしたのは、男女を問わずITに馴染みが薄い子どもからお年寄りまで、愛着を持って繰り返し使っていただきたいからなんです。それによって、AIが成長することにもつながります。

 ログデータをベースにすると、サイト間を超えたり、あるいはサイトと実店舗などの壁を越えたりするのが容易ではありませんが、テキスト情報なら、どんな場でも同じように解析し、それを別の場へ返すこともできます。その点で、個人ベースでの展開も汎用性が高いと考えています。

AIの活用に重要なのは明確な目的

MZ:Kibiroのような形で、家庭にAIが根付いていくのも、遠い未来の話ではないんですね。この展開には、AIをもっと世の中に普及させたいというお考えがあるのでしょうか?

斎藤:まさに、そうですね。AIを搭載したタッチポイントを増やしたいという、明確な狙いがあります。

 ユーザーから見たインターフェースとしてKibiroが機能し、また情報提供もKibiroを介することで、受け入れるハードルが低くなると思います。そこで得られる知見を当社では他のソリューションに反映させて、企業のマーケティング支援の新たな形へつなげられればと考えています。

人工知能ロボットKibiro(キビロ)

MZ:今後の展開がとても楽しみですね。最後に、これからAIを活用されたい企業へアドバイスやメッセージをいただけますか?

斎藤:どんなソリューションでも同じかもしれませんが、目的が明確になっているほうが、導入がスムーズで成果も早く得られます。私たちがサポートしている事例でも、自動化したいけれども人がやらざるを得ない、この煩雑な作業をどうにかしたい、など課題がハッキリしているケースは展開が速いですね。最初にやりたいことの範囲が広すぎると、AIをどのように学習させていけば良いのか方向性が絞られず、結果が出るまで時間がかかります。

 課題がハッキリしていれば、AI提供側も強みの紹介や活用の提案などの相談に乗れるので、ぜひその点は考えていただけると良いと思います。

3月3日開催のMarkeZine Dayでは新たな事例紹介も

2016年3月3日(木)に開催する「MarkeZineDay 2016 Spring」に斎藤氏が登壇します! 記事では明かせなかった事例などもイベントでは紹介します。申込は2月29日の17:00までとなっておりますので、気になる方はこちらから詳細をチェック!

【セッション情報】「MarkeZineDay 2016 Spring 」B-5セッション
『今こそ取り組むべき人工知能のマーケティング活用事例 ~VOC活用・レコメンド・ロボットのご紹介~』

・開催日/時:2016年3月3日(木)/13:50~14:40
・場所:秋葉原コンベンションホール(東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル2F)
・詳細、お申し込み:こちらから

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2016/02/25 12:00 https://markezine.jp/article/detail/23855