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黒船Netflix上陸、忍び寄るYouTubeの影。「SVOD」の台頭で映像ビジネスは変わるのか

定額制だけじゃない、Netflixが群を抜く理由

 従来のテレビ業界のビジネスモデルは、本編にコマーシャルを挟むことによるスポンサーからの広告収入です。その歴史はすでに数十年に及び、広告マーケットとしていまだに大きな力を持つ存在となっています。

 対して、Netflixの最大の特徴である「定額制」は、その慣習を根底から覆すものでした。「視聴者はCMなど観たくない」というNetflix CEO、リード・ヘイスティングス氏の強烈な信念は、徐々に、しかし確かに旧来のビジネスモデルを破壊しつつあります。

 しかし、動画を定額で配信するだけなら、FOXやABCなど超大手によるジョイント・ベンチャーである、「hulu」など多くのプレイヤーがいます。その中で、Netflixがナンバーワンとなったのはなぜでしょうか。

 まずあげられるのが、物理的な面でのアプローチ。Netflixは、自社のサービスに対応するテレビには、必ず「Netflixボタン」をつけるようにと定めました。毎日のように触るTVのリモコンですから、物理的なボタンがあるかないかは大きな違い。彼らはその重要性をはじめから理解していたのでしょう。今では「NetflixボタンがないTVは売れない」とまで言われるようになりました。

 そして、隠れた、しかし最大の強みと考えられるのは、「Netflixのユーザは検索をしない」とまで言われる、独自のレコメンドエンジンといえます。いくら多チャンネルに慣れているアメリカ国民とはいえ、膨大な量の中から自分が好きな番組を見つけるのは骨の折れること。

 そこで「あなたへのオススメ」という機能が役に立つわけです。Netflixはこの機能が大変優れており、75%のユーザがこのオススメから次の番組を選択していると言われます。

 Netflix社では、このエンジンの開発に非常に力を入れており、採用された開発チームには、日本円でなんと約1億円の賞金を与えるというコンペまで開催し、さらには、その優勝者もレコメンドエンジンが決めるという徹底ぶり。まさに、従来のテレビ業界の枠を外れた、技術ドリブンな企業といえるのではないでしょうか。

アマゾン・プライム・ビデオの存在感

 Netflixが日本上陸を数日後に控えた2015年8月末。Amazonが独自の動画配信サービス、「アマゾン・プライム・ビデオ」を9月より日本国内でも開始すると発表しました。

 こちらの最大の優位性は、何といっても価格。商品が早く届く「お急ぎ便」や、Amazon Musicなどが利用可能な「アマゾン・プライム」とのセット商品であり、従来の利用者から見れば無料で動画配信サービスがついたようなもの。それでなくとも年会費3,900円、月会費に換算してわずか325円は、明確な価格優位性を有します。

 Amazonと動画配信。一見まったくの異業種に思えますが、ここに至る伏線は、AWS(Amazon Web Service)にあると見ていいでしょう。AWSとは、EC分野で膨大なトラフィックをさばいてきたAmazonが、その経験とノウハウから開始したクラウドサーバサービスです。優れた拡張性や堅牢性から多くの企業の信頼を集め、今ではAmazonの売上の大部分を占めるまでとなり、Netflixも全面的にAWSを利用しています。

 動画配信は多くのデータのやり取りが発生するため、それに見合ったインフラが必要になります。しかし、今や世界一と言ってもいいクラウドサーバサービスを提供しているAmazon。「動画も結局はデータである」という認識に立てば、自分たちの強みを転化した、ごく自然なビジネス展開ともいえます。

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忍び寄る、YouTube Redの影

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この記事の著者

渡邊 徹則(ワタナベ テツノリ)

株式会社Version7代表取締役。Web・コンテンツ制作、分析、マーケティングなどを手掛ける。
執筆業では、主にソーシャル、EC、海外サービス、メディアなどが専門。
会社概要 - seven@ver7.jp - Twitter/Facebook @brigate7

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/03/03 10:00 https://markezine.jp/article/detail/23956

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