データ分析に、企業の規模は関係ない
消費者行動のデジタルシフトが進み、顧客データを得やすい環境である今、多くの企業が、データ分析を実践している。ことマーケティングにおいて、ターゲットをセグメントし、適切なコミュニケーションを行い、ロイヤルカスタマーとの関係を構築するためにデータ分析は欠かせない。さらにデータ分析の波は、大企業だけでなく中小企業にも広がっている。
「中小企業こそ、ぜひ分析を活用してほしい」と語るSAS Institute Japan株式会社(以下、SAS)の増山剛雄氏は、製造業や流通・小売業のクライアントを含むすべての中小企業をカバーしている。中小企業に対し、同社が提供する分析ソリューションの導入を進めてきた。
データ分析というと、データサイエンティストに代表されるような専門家が行い、難しいものというイメージがある。実践できる企業が限られているのではないかという印象を持つが、増山氏は「データ分析に企業の規模や業種は関係ない」と話す。
「私たちのクライアントも、企業規模問わずお問い合わせが増えています。特に、小売業のマーケティングには分析が強い味方となるでしょう。顧客ごとの消費行動を分析することで、異なるニーズや傾向を理解し、顧客に合わせたユニークなカスタマー・エクスペリエンスを提供できるようになります」(増山氏)
データ分析はあらゆるビジネスに活用できる
たとえば、あるアパレル企業では、同社の抱える複数のブランドを対象に消費者がどこでブランドスイッチを起こすかという顧客分析を統計から算出している。また、次のシーズンの流行や気候を分析し、デザインやカラーの需要予測も行う。
消費行動のサイクルが早くなっている中、需要予測は多くの企業でニーズが高く分析で解決したい課題だ。「新商品や売れ筋の商品だけでなく、取り扱う商品すべての予測を行いたい」という要望もあったそうだ。
また、データ分析はマーケティング分野だけに留まらない。
製造業であれば、製品や製造機械の各種センサーやログから収集したデータを分析することで、故障の要因の特定ができるようになる。設備を分解することなく、故障の診断や対策が打てるのだ。サービス業であれば、顧客からのフィードバックを分析し、サービスの改善点を見極め、顧客満足度を向上させることも可能。データ分析を分析だけで終わらせるのではなく、何に活用するのかまで落とし込み実行することが重要だ。
属人的なシステムが、中小企業のデータ分析を阻む
これまで中小企業におけるデータ分析が進んでいなかった背景には、どういった理由があるのだろうか。増山氏は「業務の属人的な対応に原因があるようだ」と考える。
「中小企業のご担当者様のほとんどは、他の業務と並行して分析業務にあたっています。また、仕入れや売り上げの予測を経験や勘に基づいて行っているという企業も多いのではないのでしょうか」(増山氏)
たとえば、どのくらい仕入れをしたらいいのかという需要予測を、現場を知るキャリアの長い担当者の経験や勘に任せる。よくあるケースだと思われるが、仮に予測の当てはまりが良い場合でも、その担当者が不在となってしまった時どうなるだろうか。経験や勘で予測されていては、他の人による対応ができず、機会損失にもなりかねない。
また、ExcelやAccessのスキルが高く同ソフトで分析を行っているという場合も、分析ではなく集計止まりになっていることがあるそうだ。このケースもまた、スキルのある担当者が変わってしまうと再現性が担保できない。つまり、属人的な対応がリスクとなるのである。
「人材がいないのでと属人的な対応をしていると、さらに人材の流動に弱いシステムとなってしまいます。分析ツールを導入することでプロセスを構築し、企業の資産として管理することがビジネスの成長にもつながるのではないでしょうか」(増山氏)
統計分析初心者へ向けたトレーニングを支援
もちろん分析ツールを導入しただけでは、効果的なデータ活用にはつながらない。データが分析できる人材を育てる必要がある。
そこでSASは、統計が初めてという担当者が自宅でも自己学習できるよう、無料の統計ソフトウェア「SAS University Edition」を用意している。「SAS University Edition」の使い方を学ぶチュートリアルはWebでの無料公開もされている。各種有償のトレーニングコースがあり、SASのソリューションを実際に触って統計を学ぶことが可能だ。担当者が自分で分析できるようになるまでサポートは続く。また、統計の知識はあるが同社のソリューションの使い方がわからないといった場合や、分析を実務に落とし込みたいという要望にも対応できる環境を整えている。
事業規模に合わせたサービスで、中小企業も導入しやすく
中小企業からは、ビジネスがまだ成長段階でありスモールスタートで始めたいという相談も多い。フルスペックの分析ツールだと、使いこなせないというケースもある。
SASのソリューションは、データの準備からモデルの開発、展開・実行、制度評価や課題定義までのAnalytics Lifecycleに全て対応できるのが特徴だ。それぞれのツールを独立して利用することも、連携して活用することもできるように設計されている。そのため必要な機能から導入し、段階的にシステムを追加していくことができるのだ。
さらに、BIツールであるSAS Visual Analyticsは、従来のシステムに見られるユーザー数での課金ではない。サーバーの大きさによるコア数課金のため、ユーザーに上限なく利用できる点が好評だ。またクラウド環境での利用も選ぶことができ、中小企業のニーズに合った設計がされている。
時間がかかるデータ加工を効率的に行い、分析業務に集中
SASが提供する製品は、情報に基づいて正しい意思決定をサポートするSAS Visual Analyticsや適切な意思決定と収益の向上をサポートする予測分析ソフトウェアと、多様な機能を兼ね備えている。しかし、分析において一番重要な作業は集めたデータを加工するところにあるのだ。
「実は、お客様が分析で困っていることの多くがデータ処理の部分なのです。分析のための時間を、ほぼデータの準備や加工に費やしている。ここの工程を効率化することが第一ですね」(増山氏)
SAS Data Managementは、分散されたデータを、GUI操作でシームレスにつなぎ、データに変更があった場合などのデータも一元管理できるため、工数削減にもつながる。
また、豊富なビジュアライゼーション(視覚化)ツール、あらかじめ定義された分析モデル、ポイント・アンド・クリック方式の対話型インターフェイスを使って、データを最大限に活用可能。使い慣れたMicrosoft Office環境で作業できるソリューションも取り揃えている。
このような機能をフル活用することで分析がスムーズに行えるため、マーケターや実務担当者は、データ分析と次の施策を考える時間に集中することができるのだ。
では、今注目されているAIや機械学習を使って、さらなる作業の効率化や特殊な分析は可能なのだろうか。
「AIや機械学習についてのお問い合わせもいただいています。AIはSAS Viyaに代表されるプラットフォームで対応が可能です。まだまだ、従来の統計の手法やデータマイニングの対応で可能なご相談内容も多いですね」(増山氏)
まずは統計分析の基礎を学ぶことが、データ分析の第一歩である。
統計分析ができる人材がより増えるように
分析をビジネスに取り込みたいという中小企業に対し、その導入体制を整えているSAS。「データはあるものの、分析まで手が届いていない企業をサポートしたいですね。分析者がいない企業でも高度な分析ができるという環境を作るため、テクノロジーで解決できればと思います」と語る増山氏。
SASでは、統計分析に関するセミナーの実施や学生を対象に統計を学ぶ機会を提供するなど、分析ができる人材を育てていきたいと考えている。あらゆる企業に対し、データ分析が当たり前となる将来へ向けて尽力していく。
データ分析を始めたい、もっと精度を上げたいと思った方に朗報!
現在、SAS Institute Japanがホワイトペーパー「マーケティング担当者のためのデータ分析入門」を配布しています。効果的なデータ分析を実現するために必要なフレームワークの構築方法を解説する内容となっており、データドリブンでマーケティングを進めたい方におすすめです。詳しくはこちら