SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』BookNavigator

常識からは考えられない「物流」を実現する アマゾンの「顧客至上主義」

物流という“コストセンター”にあえて優秀な人材を配置

 企業の物流部門はコストセンターとして軽視されがちだ。物流よりも、直接的に利益を上げる営業や商品開発などに優先して投資する企業が大半ではないだろうか。

 一方アマゾンは、逆に物流部門を重視し、多額の投資を行っているそうだ。たとえば著者は、同社が倉庫管理者にMBAホルダーなど優秀な人材を配置していることを指摘している。またアマゾンでは、物流にかけるコストの売上に対する比率が、小売業界の平均の2倍超だ。

 なぜアマゾンは、そこまで物流にこだわるのだろうか。その理由は、アマゾンの理念の一つ「地球上で最もお客様を大切にできる企業であること」にあるというのが著者の見方だ。

 実店舗を有する小売業なら、顧客と対面で接する機会がひんぱんにある。実店舗での接客や店舗の雰囲気が、顧客満足度に直結したりもする。

 それに対しアマゾンは、ごく少数の実験店以外、基本的には実店舗を持たない。したがって同社の顧客との接点は、Webサイトの画面と、商品が配達されるタイミングのみということになる。そうした条件のもと、いかにして「地球上で最もお客様を大切にできる」かが課題となる。

 その課題へのアマゾンの回答の一つが、「配達スピードと品質」の充実だった。商品を、顧客が期待する(あるいは期待以上の)速さで、期待に応える品質で届ける。それを確実に実現するために、アマゾンは物流へ重点的に投資する。

 顧客(利用者)の大きな満足につながるなら、業界の常識から外れたことや、あえて経営効率を下げるような判断もする。そんな徹底した「顧客至上主義」が、アマゾンのビジネスのベースにあるのだろう。

手法よりも「顧客至上主義」を参考にせよ

 アマゾンの物流への投資は人材や設備など多岐にわたっているようだ。そのなかでも著者が注目しているのは、小売業では考えられないほどの「システム構築」への力の入れようだ。

 たとえばアマゾンは、顧客からの注文を扱う「注文管理システム」、商品が顧客のもとに届くまでを管理する「物流管理システム」、サプライヤーからの仕入れなどを担当する「購買管理システム」、配送業者に関連する「配送管理システム」などを構築している。それらをアマゾン社内だけでなく、サプライヤーや配送業者など、サプライチェーン全体で綿密かつ迅速な情報連携がとれるようにしているのだ。

 そうした連携のおかげで、注文から商品の仕入れ、倉庫への配送、顧客への配達といった一連のルートを最適・最速化できるのだそうだ。たとえば複数の倉庫の立地や営業時間、処理能力、コストなどを瞬時に計算し、最適ルートを決定できる。これこそが、アマゾンが「今日中」にモノを届けられる理由の一つなのだ。

 日本企業(特に小売業)が、これほどのシステム構築を実現させようとしても、一朝一夕には難しいだろう。では、アマゾンに対抗するには、どうすればいいのだろうか。著者は、高度なシステム構築のような、目に見える戦略や手法を表面的に真似しても、うまくいかない可能性のほうが大きいと指摘している。そうではなく、戦略の前提にある「顧客至上主義」などの理念やビジョンがヒントになるという。たとえば徹底した顧客至上主義を実現するために、自社の強みを活かして何ができるかを考え抜くこと。それが結果的にアマゾンとの差別化であり、対抗策になるということだ。

情報工場は厳選した書籍のハイライトを3,000字のダイジェストで配信するサービス「SERENDIP(セレンディップ)」を運営。国内書籍だけではなく、まだ日本で翻訳されていない海外で話題の書籍も日本語のダイジェストにして毎週、配信。上場企業の経営層・管理職を中心に8万人超のビジネスパーソンが利用中。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
定期誌『MarkeZine』BookNavigator連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

情報工場(ジョウホウコウジョウ)

厳選した書籍のハイライトを3,000字のダイジェストで配信するサービス「SERENDIP(セレンディップ)」「SERENDIP(セレンディップ)」を運営。国内書籍だけではなく、まだ日本で翻訳されていない海外で話題の書籍も日本語のダイジェストにして毎週、配信。上場企業の経営層・管理職を中心に8万人超のビジネスパーソンが利用中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2018/06/07 11:12 https://markezine.jp/article/detail/28274

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング