キャリア構築に“自分自身をマーケティングする”視点を
ハイブリッド組織で起きると想定した課題については、仕組みでカバーしようとしているリクルートのマーケティング組織。逆に、生まれる利点は最大限活用していると塩見氏は話す。
「全事業会社のマーケティング業務が集まったので配属の柔軟性が格段に上がり、メンバーの意志を最優先して、配属できるようになりました。いちメンバー視点で言えば、キャリアデザインの幅が広がっています。たとえばSEOひとつ挙げても、それぞれ違う特徴を持った複数のサービスから選択でき、その多くを経験すればSEOコンサルタントを名乗れるレベルのキャリアを目指すこともできます。所属するメンバーには、この豊富な選択肢の中から、どのようなスキルが必要か、どの方向へいくか、自分自身をマーケティングして環境を利用してほしいと伝えています」
さらに、各事業会社へ散らばっていたマーケターが100人規模で集約されたため、これまではサンプル数不足で難しかった所属メンバーのキャリア実績の定量分析が一気に可能となった。塩見氏は「これにより勘や感覚頼りから脱却した“データドリブンな人事”ができるようになってきた」とし、蓄積されるデータを、デジタルマーケティング組織における最適な人事配置・育成につなげたいと話す。他にも、失敗事例を共有する会や他社とのイベントなども行われている。
リクルートの事例を企業のIT化のヒントに
こういった組織づくりは、「弊社固有の事情によるところもあると思う」とした上で、「事業軸か機能軸かといった葛藤は多くの組織であり、多少は参考にしていただける部分があるのではないか」と塩見氏。
最後に塩見氏は、社会を変えていくITの力を信じたいと語った上で、次のようにセッションをしめくくった。
「営業の会社だったリクルートをIT化する変化の真っただ中で、自身が実行する側に立ち、そのプロセスを経験できたことは、成功も失敗も非常に貴重で有意義なものだと思います。非ITな組織がIT化することで開ける未来は多い。まだチャレンジの途上ですが、私たちの事例が、企業のIT化のヒントとしてお役に立てれば嬉しいです」