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「AIの話をする前に、データを見直しませんか?」 ZETAが説く、検索&レビューデータの有用性

 AIの発展は踊り場。今一度、その材料となるデータへの回帰が生まれている――。ZETA代表取締役の山崎徳之氏は、この数ヵ月の海外の各種カンファレンスにおいて、こうした潮流を感じたという。データ重視という観点は、同社の創業以来の姿勢と合致する。2018年9月20、21日に開催されたMarkeZine Day 2018 Autumnにて山崎氏は、これまでの登壇で語った論を一層進化させ、グローバルでの潮流と、検索とレビュー情報による透明性の提供を解説した。

“データは等しく価値がある”という誤解

 マーケティング領域では常に、バズワードが次々と生まれている。一瞬で消えてしまうものもあれば、検索やクラウド、オムニチャネルなど、“バズ”で終わらずそのまま浸透していくものもある。「ZETA CXシリーズ」としてサイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」やレビューエンジン「ZETA VOICE」を提供し、10年以上にわたりEC事業を支援してきたZETAの代表を務める山崎徳之氏は、そうしたバズワードの中で改めて「ビッグデータ」に焦点を当てる。

ZETA 代表取締役 山崎徳之氏
ZETA株式会社 代表取締役 山崎徳之氏

 背景のひとつには、この数カ月におけるグローバルでの潮流がある。7月のRIZE(香港)、9月のParis Retail Week(フランス)、そしてdmexco(ドイツ)といったマーケティング関連のカンファレンスに参加した山崎氏は「『データへの回帰』という潮流を強く感じた」と話す。しばらくAIがバズワードになっていたが、それが踊り場に差し掛かり、AIを使って分析する対象であるデータの重要性に改めて注目した意見が目立ったという。

 「グローバルのトレンドとしてデータに戻りつつあることは、ZETAが創業当時からデータを重視してきた姿勢とも重なるので、今回の講演で深堀りしたいと考えました」

 前述の「ビッグデータ」は数年前に注目されたが、現状ではそこまで定着した感はない。ビッグデータにはもちろん有用性があるが、「データの価値はすべて等しい/膨大なデータをすべて活用しよう」といったそのアプローチが少しミスリードだったのでは、というのが山崎氏の見方だ。

AIが包丁ならデータは食材、現状での料理は出尽くした

 マーケティングに統計学は有効だが、イコールではない。人の心を知り、動かそうというマーケティングに使うなら、当然ながら重視すべきデータとそうでないデータがある。つまり、すべてのデータは等しく価値があるという見方は必ずしも適用できず、あまり大きな成果は見込めないのだ。

 「膨大なデータを100%活用しなくても、70%でも65%でもそこは柔軟にいくのが、マーケティングにおけるデータ活用の正しいあり方でしょう」と山崎氏。

 同時に、現在のデータ活用はAIと切っても切れない、合わせ鏡の関係にある。確かにAIは3年ほど前にディープラーニングが登場し、複雑な画像の解析が可能になったことをきっかけにブームが起き、人材や資金の流入や企業の新規参入も増えて市場が発展した。だが、逆にいえばディープラーニング以降、画期的な技術は生まれていない。

 「AIは道具なので、次に画期的な道具が登場しない限り、この踊り場を抜け出せないとみています。AIを包丁だとすると、この包丁でつくれるおいしい料理はもう出尽くした。でも、もし食材がバージョンアップすれば、また新しい料理が生まれます。その期待の下、本当にマーケティングに使えるデータから有益な情報を汲み上げようとする流れが生まれてきているのです」

 では、その“汲み上げ”とは、有象無象のビッグデータを100%使って分析するのとは具体的に何が違うのだろうか? ポイントは、データの構造化だ。

データに注力すれば差別化できる

 今、ログデータや音声、画像など、日々様々な種類のデータが大量に生成されている。更にスマートフォンやIoTの普及を追い風に、それがセンサーとなって個々のユーザーの検索データやヘルスデータ、位置情報といったパーソナルデータの取得も進んでいる。

 「データ×AIの発展の背景には、当然スマホの浸透という大きな要因があります。こんなにも多くの人が、24時間365日コンピューターを持ち歩いている状況は、ノートPCの時代ではなし得なかったこと」と山崎氏は指摘する。

 だが、こうして生まれるデータは取得時点では非構造化データであり、そのまま分析してマーケティングに示唆を得るのは難しい。重視すべきデータとそうでないデータを見極めて重み付けし、その種類や関連性も加味して分類すること、それが構造化だ。

 たとえばWebの閲覧データも価値ある情報だが、もしEC事業のマーケティングならば、購買履歴や、ユーザーが知りたいことを能動的に入力した証左である検索履歴のほうが有効だといえるだろう。また、リアルタイムの取得が可能なら、検索と位置情報、また閲覧デバイスの情報を掛け合わせることで、一歩踏み込んだユーザーの把握と分析ができる。

 分類や抽出によるデータの構造化を前提にビッグデータに向き合えば、その潜在的価値を引き出すことができ、そこに掛け合わせるなら既存のAIであってもまだ大きな成果を見込める。それが、競合に対する差別化になるというわけだ。

ECマーケターが検索の重要性を見過ごす理由

 このようなデータへの回帰が大きなトレンドになる中で、山崎氏は更に自社の強みであるEC事業における検索とレビューの知見も加えて、「ユーザーへの透明性と健全性の提供がますます重要になっている」と語る。検索とレビューは、ユーザーが買い物を成功させる、もしくは買い物に満足するためにとても有効だが、ECサイトの運用者はその重要性をあまり認識していないという。

 Googleでの検索ワードはユーザーの知りたいことを表すが、ECサイトにおける検索はそれよりも段違いに重要だ。なぜなら、ほぼ間違いなくそのサイトで買いたいものを表しており、母数は少なくとも非常に純度が高い情報だからだ。

 また、リアルタイム性という観点からだと「購買履歴よりも検索履歴のほうが有効」と山崎氏は指摘する。検索は今この瞬間のユーザーの希望を表すものであり、更にその結果を返すのもリアルタイムなので、嫌がられることがない。検索に応じたレコメンデーションは読みが外れると嫌がられるが、その点でも、ユーザーの満足度を高めるのに検索に注力するのは価値があるといえる。

 だが、これだけ強力なツールである検索にもかかわらず、重要性が見過ごされているのはなぜなのか。山崎氏は以下のように解説する。

 「検索の登場はネットの歴史上でははるか昔のことで、もう当たり前のように定着しています。そのため、新たなワードを追うのに忙しいマーケターは見落としてしまうのだと思います。しかし、その分すごく伸びしろが大きい部分です」

CROに着目しファネルの着地点を広げる

 検索データを改めて活用することの意義を、山崎氏はCRO(Conversion Rate Optimization)の概念をもって示す。訳すとコンバージョン率の最適化であり、購買までのファネルの絞り込み率を最大化しようという発想だ。広告接触者を100%とした際、サイト来訪、検索、そして購買に至るまでに、通常ファネルはぎゅっとすぼまっていく。

 「これまでは、上部の広告接触者の数を増やそうとするアプローチが一般的でした。でも考えてみれば、間のステップでの離脱率を減らすほうが費用対効果が高い。サイト来訪した人へのアプローチを工夫してコンバージョン率が改善されれば、売上は大きく伸びるでしょう。そのために必要なポイントのひとつが検索です」

 検索で購買率を上げる具体的な策のひとつは、ユーザーが求める結果を返すことだ。ユーザーがどのように検索し、その後どういった振る舞いをしているのかをデータで把握して分析することで、検索結果を最適化し、ユーザーが望む買い物をする手助けをすることができる。

 山崎氏はECでのサイト内検索について「リアル店舗の店員の接客と同じ」と話す。優秀な店員なら、仮に顧客の指定する商品がなくても代替品を提案したり、よりニーズに応える商品を提案したりする。逆に、ずばり指定する商品がないからといって「ない」とだけ答えるのは、接客としては最悪だ。

 だが、ECサイトでは同様のことが多く起こっているという。ユーザーの意図を汲んで、プラスアルファの提案ができれば、離脱するユーザーを減らすことができるにもかかわらずだ。

透明性と健全性を提供し、購買の成功を助ける

 加えて山崎氏が提案するのは、検索データとレビューデータを相互補完的に利用してユーザーの満足度を高めることだ。ある調査によると、ECサイトの商品レビューが0件から1件付くだけで購買率が売上が1.1倍になり、10件で1.5倍、50件付くと2倍にもなったという(※出典:The impact of customer reviews and ratings on conversion rates)。

 購買の後押しになるレビューデータは同時に、商品の検索にも役に立つ。たとえばゴルフクラブで、飛距離や操作性といった切り口ごとに点数がつけられていたら、飛距離重視のユーザーはその情報を軸に並び替えて、自分の要望に合った選択をすることができるからだ。更に、レビューという口コミはオーガニックコンテンツなので、GoogleのSEOでも上位にランキングされることも利点だろう。

 「当社の『ZETA CX シリーズ』 でも、検索エンジン『ZETA SEARCH』の継続率が98%だと伝えることが、最も導入に効果的だったりします。他者の評価は昨日今日では集められません。更に他社からもどんどん引き離されるので、早く着手すべき」と山崎氏は話す。

 レビューという第三者の意見を企業が積極的に集め、次なるユーザーに開示することは、ある意味で勇気がいる。だが、欧米では既にレビューの充実を通したユーザーへの公正な情報の開示が一般化し、大きく支持される要因になっており、日本でもAmazonレビューが購買を左右している状況をみても、この傾向は明らかだ。

 企業よりむしろユーザーのほうが情報強者になっている現在、データ回帰の潮流と相まって、検索とレビューというデータを使って透明性と健全性の提供に努めることが、確実に業績を伸ばす道だといえる。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/11/01 11:00 https://markezine.jp/article/detail/29447