ライブコマースが消費を原点回帰させる
これらの内容を踏まえて、消費文化の視点で私が考えるのは、ライブコマースが「消費の原点回帰」を生むかもしれないということです。
かつての商売は、消費者が店舗に足を運び、店員にオススメ品や商品の詳細を聞きながら購入するのが一般的でした。その後、テクノロジーの発達により、より効率的に商品を変えるECが普及。私たちメルカリも、誰もが売り買いできるプラットフォームを目指し、それをテクノロジーで実現してきました。
ただ、ECのような効率的な購入は求められているものの、同時に旧来の接客やコミュニケーションを経た購入のニーズもあり続けてきたはずです。いや、ECで効率的な買い物ができるようになったからこそ、改めてコミュニケーションを通した購入も求められているのかもしれません。
なぜなら、店員との会話を通して購入する本質は、「探索コスト」を下げるという目的にあります。商品購入の際、他製品との比較や機能、使用感など、いくつか検討しなければならない事項がありますよね。その検討にかかる労力が「探索コスト」です。
自分だけで検討するのはハードルが高く、時間もかかるので、より専門知識を持つ人(店員)と話すことで探索コストを下げていく。元来、接客を求める人の狙いはそこにあると思います。
テクノロジーで1対Nの接客を実現、そのメリットは?
ECという効率的な消費がある一方で、やはりこの探索コストをコミュニケーションで下げたいというニーズも変わらずにあるはず。実はそれをテクノロジーで解消したのがライブコマースではないでしょうか。
「この人の勧める商品を買いたい」という文脈もライブコマースで増えていますが、これも探索コストを下げる行動の1つだと捉えられます。「あの店員さんの言葉なら信頼できる」という感情と近く、その人の人間力が購入までの不安や懸念を軽減しているのです。
しかも、ライブコマースは1対1ではなく1対Nの接客になるので、ここも効率化が図られる。消費者は納得のいく形で商品を買えますし、販売者も一度に多数の消費者とつながれたり、先述したようなマーケティングに活かせたりします。
だからこそ、ライブコマースは消費の原点回帰を起こすのではないでしょうか。それがECと両輪で発展することで、より便利な消費文化が生まれていくはずです。
となると、今後ECとライブコマースでは消費傾向にも差が出ることも考えられます。探索コストが大きい商品は、ライブコマースで販売するほうが効果の出やすくなる可能性はあるでしょう。
ECという消費は広がりつつ、並行して「消費の原点回帰」と言えるライブコマースも存在感を増していく。2つの共存こそが、デジタル上の新たな消費の姿と言えるかもしれません。