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フリマアプリによる「消費変貌」~1億総商人時代のモノへの向き合い方~

「消費の原点回帰」が起きる?「メルカリチャンネル」から見えた、ライブコマースという新たな消費の選択


ライブコマースがもたらす、コスト効率と社内の刺激

 では、配信者(販売者)にとってライブコマースはどのようなメリットがあるのでしょうか。今回の記事では、3つに絞り解説します。

 1つ目のメリットは、商品販売における「コスト効率」の高さです。

 実は販売者にとって、ライブコマースは“手軽”に販売できる手法と言えます。たとえばECサイトで出品する際、店舗ページを作り、「ささげ」と言われる商品画像の撮影、採寸、商品紹介の原稿作成といった手順を踏む必要があります。加えて特集ページの作成や回遊性を保つためのサイト設計を考えるなどのタスクも求められます。

 一方、ライブコマースは、商品の映像や詳細な説明は配信時に補えるので、実は商品ページの作り込みが簡易的で済みます。配信機材もスマホ1台あれば問題ない上に、撮影人数も出演者と機材担当の2人がいれば可能です。場所も特に問いません。つまり、ライブコマースは、比較的コストをかけずに取り組める施策ということです。

 2つ目のメリットは、配信者のモチベーション醸成につながるということ。これは私たちも予想外でしたが、実際に配信した企業からのフィードバックでわかりました。

 というのも、EC中心の企業が配信する場合、その社員は普段バックオフィス業務が主であり、接客などでお客様とコミュニケーションする機会は多くありません。

 しかし、メルカリチャンネルでは、社員が商品の紹介やコミュニケーションを行うケースがあります。自分の言葉で自社商品を説明し、それに対する消費者の反応が明確にわかるので、社員が新たな刺激を受けるケースが生まれているのです。

実例も生まれた、テストマーケティングとしての活用

 そして、3つ目のメリットは双方向でマーケティングができる点です。

 ライブコマースはリアルタイムでコミュニケーションが行われるので、商品のどの点が消費者の好感を得ているか、あるいは懸念点は何か、その場のコメントから見えてきます。これは、商品開発やマーケティング戦略において有効と言えるでしょう。

 実際に、メルカリチャンネルでそのような活用例が生まれています。RIZAPは今年2月、新商品のEMS「3DShaper」という健康機器を、メルカリチャンネルの配信で独占先行販売しました。

 RIZAPはこの商品を販売するにあたり、細かな機能性を訴求することでお客様の購入につなげるというマーケティングプランを立てていました。しかし、実際にメルカリチャンネルでコミュニケーションをすると、消費者が知りたいのは機能性よりも、機器を使用して得られる効果や結果でした。RIZAPはこれを参考に、今後のマーケティング戦略を調整していったと聞きます。

 つまりライブコマースでのコミュニケーションを通して、マーケティング戦略の方向性を確認できたと言えるでしょう。ここから感じたのは、ライブコマースが、今後メーカーや企業のものづくりのスキームに変化を与える可能性です。

 従来のものづくりのスキームは、デザイナーや開発部が考えて作ったものを生産し、それをお客様にどう届けるか考える流れでした。私もメーカー出身者であり、その中で業務を行ってきました。

 しかし、ライブコマースを活用すれば、商品開発やマーケティング構築の段階からお客様の声を聞き、それを反映しながら開発・生産を進めることも考えられます。これまでとは違う流れで商品が生まれるかもしれません。

 それは消費者にとってもメリットだと思います。自分の意見が反映された商品が登場するかもしれませんし、開発段階から携われたという体験やストーリーが付加されるからです。既にクラウドファンディングでは似たような現象が起こっていますが、今後ライブコマースでも起こる可能性があります。

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ライブコマースが消費を原点回帰させる

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この記事の著者

⽯川 佑(イシカワ ユウ)

 京セラでのスマートフォンの商品企画・提案営業、DeNAでのECコンサルタント・カテゴリ戦略⽴案業務や「Wowma!」の⽴ち上げ、サイト編成業務を経て、2017年にメルカリに⼊社。事業開発部にて、メルカリチャンネルの法⼈開放等を担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/12/18 15:24 https://markezine.jp/article/detail/29891

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