Adobe Experience Cloud の全製品を解説
ここまで、Adobe Experience Cloudがどのようなコンセプトのもとに提供されているプラットフォームなのか、その特長とともに全体像をご紹介してきました。ここからは、Adobe Experience Cloudを構成する製品群について説明していきます。
Adobe Experience Cloudは、いくつかのクラウド群に分類され、そこに様々な製品が紐づいています。2018年に買収したAdobe Commerce Cloudとして追加され、大きく4つのクラウド群で展開しています(2019年5月現在)。


Adobe Analytics Cloud
データ管理を担当するのが、Analytics Cloudです。オウンドメディアを中心に、顧客がどうインタラクションしたのかを計測・分析し、それらを次のアクションとして使えるようにします。
Adobe Analytics
Web解析ツールとして誕生したAdobe Analyticsは、PCサイトやスマートフォンサイトはもちろんのこと、アプリやスマートスピーカー、IoTなど様々なタッチポイントでのインタラクションの計測・分析が可能です。特徴は、多様性・カスタマイズ性が高いことで、よりビジネスに適した計測・分析を素早く行えること。Adobe Experience Cloudの背骨となるデータを吸収し、活用していくためのベースとなるツールのひとつです。

Adobe Audience Manager
プライベートDMPに位置付けされるのがこの製品です。Adobe Analyticsと連携しており、様々なタッチポイントおよびオフラインのデータなども統合します。それらのデータから、広告連携はもちろんのこと、オウンドメディアのパーソナライズ、マーケティングオートメーションツールへの連携など、より統合されたセグメント管理を実現します。
また、Marketplace機能を利用することで、提携企業やデータプロバイダなど2nd/3nd Partyのデータも統合し、より顧客のコンテクストを理解できるセグメントを管理することができます。そして、これらのセグメントは、Adobe Analytics内でデータと紐づけて分析することも可能です。
Adobe Marketing Cloud
より顧客との接点に近い部分を担うのが、Marketing Cloudです。コンテンツの管理や配信をするための製品が揃えられています。
Adobe Target
様々なデータを活用し、パーソナライズを実現します。詳細なルール設計に基づいたコミュニケーションロジックを作成し、ABテストを通じてコミュニケーションの最適化していくことができます。また、Adobe Senseiによって、自動的に顧客に沿った最適化を行うことも可能です。アプリやスマートスピーカー、IoTなどへも対応しており、その柔軟性の高さも大きなポイントです。
Adobe Experience Manager
コンテンツを様々な形で管理するための製品です。Webサイトを中心に配信されるコンテンツを管理するSites、企業が顧客コミュニケーションに利用する様々なデジタルアセットの管理をするAssets、小規模なものから大規模なものまで様々なデジタルサイネージのコンテンツ管理をするScreens、電子サインとコンテンツの連携を実現するFormsの4つに大きく分かれています。顧客体験に欠かせないコンテンツを、より効果的・効率的に管理し、Creative Cloudとの連携により、コンテンツ配信のサイクルをより早いものにすることができます。

Adobe Campaign
業界的には、マーケティングオートメーションツールと位置付けられるのがAdobe Campaignです。メールはもちろんのこと、SMSやLINEなど様々なチャネルを統合し、ひとつのワークフローの中でクロスチャネルのコミュニケーションを設計できる点が特長です。
また、コンテンツの内容をパーソナライズすることを得意としています。Adobe AnalyticsやAdobe Audience Managerとのデータ連携により、顧客に合ったプッシュメッセージコミュニケーションを実現します。クラウドだけではなく、オンプレミスやハイブリッドでの提供も可能としているツールです。

Marketo Engagement(Marketo Engagement Platformから名称変更)
2018年の買収により、新たに展開することになったBtoB向けのマーケティングオートメーションツールです。Adobe CampaignがBtoC向けのパーソナライズやコミュニケーション設計を得意とする一方、Marketoはアカウントベースドマーケティングを実現するために必要な、様々な機能を提供しています。
Adobe Advertising Cloud
広告配信まわりを中心にサポートする製品を提供するのがAdobe Advertising Cloudです。透明性と独立性を重視し、Analytics Cloud製品などと連携した様々なアプローチを可能とする製品群となっています。
DSP
DSPは、TubeMogulの買収により、提供が実現しました。ディスプレイ広告、ソーシャル広告、ビデオ広告、プログラマティックTVの買い付け、管理、最適化をひとつのプラットフォームで行うことができます。
メディアコストやツールフィー、掲載メディア面を全面開示し、すべてをCPM課金とすることで透明性を担保しています。また、Adobe Analyticsと直接連携することで、Adobe Analyticsで計測・分析されたセグメントをベースに、広告を配信することができるのも大きな魅力です。
Search
広告キャンペーンマネジメントを、包括的な広告アトリビューションの可視化・評価と並行して実施できる製品です。Adobe Senseiを活用しながら、予測やシミュレーションを行い、自動入札による全体最適化を実現します。DSP同様にAdobe Analyticsのコンバージョン情報を活用することで、ビジネスと連動し、広告全体のポートフォリオを最適化していくことが可能です。
Creative
ディスプレイ広告の顧客最適化をクリエイティブの面で強化する製品です。複数の画像やテキストを組み合わせ、パーソナライズされた広告配信の管理をすることができます。これにより、広告を通じた顧客体験の最大化が可能になります。Creativeで利用する画像は、Creative Cloudとの連携をはじめ、Adobe Experience Manager Assetsとも連携しています。よって、Webサイトなどで利用する様々なアセットを共有化したアプローチを行うことが可能です。

Adobe Commerce Cloud(Magento Commerce Cloudから名称変更)
2018年の買収により新たに展開することになったECプラットフォームです。オープンソースをベースとしているため、拡張機能を利用して、ビジネスに合わせカスタマイズすることができます。
また、ECを運営する上で必要となる在庫管理や多言語管理など、必要な機能がすべてまとまっていることが大きな特徴です。Adobe Experience Managerとも連携しており、ECサイトにおけるコンテンツ管理が効率化されます。
Adobe Experience Platform
Adobe Summit 2019において、新たに発表されたのがAdobe Experience Platformです。Adobe Experience Cloudのプラットフォームを支えるものとして、これまで以上にデータを活用し、顧客体験を統合的に管理していくCustomer Experience Management(CXM)の基盤として発表されました。
オンラインだけでなく、オフラインでのコミュニケーションのデータもひとつのプロファイルとして統合することで、Adobe Senseiの学習なども活用しながら、リアルタイムにそのデータを利用することができます。
また、Adobe Experience Cloudの様々な製品とも連携していくことで、適切なところへのコンテンツ配信が可能になります。様々なI/Oを備えており、自社サービスとの直接的な連携およびISVとの連携によって、エコシステムの拡大を実現します。

Mobile Services
モバイルアプリに関わるAdobe Experience Services製品の様々な機能をLaunch by Adobeと統合し、提供しています。Adobe Analyticsの計測を中心に、Adobe Targetによるパーソナライズ、Adobe Audience Managerによるセグメント管理、Adobe Campaignによるプッシュ通知などをひとつのSDKで統合的に管理することができます。最新のSDKでは、Launch by Adobeを活用することで、マーケティングソリューションの追加が非常に簡単にできるようになりました。
Launch by Adobe
Adobe Experience Cloudの製品を利用するために必要なインプリメンテーションをより簡素化するのがLaunch by Adobeです。これまでのタグマネージメントツールとは異なり、複数のマーケティングタグを統合的に管理し、相互連携も可能とする次世代のタグマネジメントツールです。また、サイトのタグ管理だけでなく、Mobile Servicesで提供されるSDKの管理も可能で、アプリのマーケティングソリューションの導入管理も非常に簡単にできるのが特徴です。
タグの実装監査ツールであるObserve PointのAuditorを利用することで、Launch by Adobeなどを利用して実装されたAdobe Analyticsのタグを検証することもできます。

ここまで、Adobe Experience Cloudに紐づく各製品を紹介させていただきました。それぞれの製品群は単体でも十分にその効果を発揮しますが、Adobe Experience Cloudの統合により、組み合わせて利用することで、さらにその効果は大きくなります。
「適切な人」に、「適切なコンテンツ」を、「適切なタイミング」と「適切なチャネル」で。この4Rを実現するために、企業は様々なチャレンジをしていく必要があります。その中でも特に重要となる「コンテンツ」と「データ」。この2つをつなぎ合わせ、企業が最高の顧客体験を提供するために、Adobe Experience Cloudは、常に進化をしながら、そのプラットフォームを展開していきます。