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MarkeZine Day 2019 Spring(AD)

本当は教えたくない“データマーケティング3つの新常識” 成功と失敗事例から考えるサービス急成長の裏側

 3月7日、8日に御茶ノ水ソラシティ・カンファレンスセンターで開催された「MarkeZine Day 2019 Spring」。本記事では、1日目に開催されたフロムスクラッチ(b→dash)の三浦將太氏によるセッション「なぜあのサービスはデータで急成長したのか?~最新の成功・失敗事例に学ぶ、“本当は教えたくない”データマーケティング3つの新常識~」の模様をレポートする。

データ活用で成長する企業と失敗する企業の二分化が進行

 セッションの冒頭、フロムスクラッチ 執行役員 CMOの三浦將太氏は、データマーケティング実現によってサービスを急成長させている企業がある一方で、失敗してしまう企業も増えていると指摘した。

株式会社フロムスクラッチ執行役員CMO 三浦將太氏

 IT技術の進化により、オンライン・オフライン問わずあらゆる情報をデータとして取得できるようになっている。そのため、多くの企業がデータマーケティングに乗り出そうとするのだが、実際には以下のような課題に直面し失敗に至ってしまう。

・データがバラバラで活用する前に膨大な前処理工数がかかってしまう

・理想のデータマーケティングの実現には複数ツールの導入が必要でコストがかかる

・ツール操作が難しく使いこなせない

・リテラシーがないためデータマーケティングを進められない

 フロムスクラッチでは、これらのデータ活用シーンでよくある課題をおぎやはぎ・ボブサップらが出演するCMの内容に盛り込んで制作。すると、非常に大きな反響が得られ、月数千件の問い合わせが殺到するようになったという。BtoBサービスを提供する企業の中では異例の数と言えるだろう。それだけ、データが持つ力に注目しているマーケターが多いのと同時に、データ活用に失敗しているマーケターも多いということだ。

 

 そして三浦氏は、失敗に陥ってしまわないよう「3つの典型的な失敗事例を紹介します」と語った。一般的なセッションでは、成功事例を中心に紹介するものだが、そこにも理由があった。

 「(一般的なセッションでは)成功事例を共有するケースが多いかと思いますが、失敗事例から“同じ轍を踏まない”ようにすれば、成功する確率が高まると私たちは考えています。本セッションでは、まず、実際に我々に相談のあった企業様の失敗談をお届けできればと思います」

導入半年もMA活用が進まないアパレル企業~データがバラバラ~

 1つ目に紹介されたのは、全国に店舗を展開しているアパレル企業の失敗事例だ。同社は店舗とECの相互送客によるオムニチャネル化を目指し、マーケティング部長の主導で同業他社に先駆けてMAを導入。これにより、購入履歴やECサイト閲覧履歴などを統合して一人ひとりに合った情報を提供することで、ECから店舗もしくは店舗からECへの誘導増加、ECの再購入率向上を狙っていた。

 しかし、実際の運用がうまく進まない。各店舗やECサイトごとのデータ管理がバラバラで、抽出や統合処理のために都度SIerに依頼しなければならず、非常に多くの工数がかかっていたからだ。その結果、MAを導入して半年経っても実運用に乗らず、プロジェクトが頓挫した。この状況に対し、三浦氏はアパレル企業の問題点を明らかにした。

 「MAを導入すること自体は間違っていません。問題だったのは、データ統合基盤の構築ができなかった点にあります」

データを活用する“前に”踏むべき4つのステップ

 同氏によれば、データをマーケティング活用する前に踏むべき4つのステップがあるという。

1.データ取得

2.データ取り込み

3.データ統合

4.データ変換

 1つ目のデータ取得に関してはアクセス解析ツールやBIツールなど、ほとんどの企業が既に導入しているだろう。2つ目のデータ取り込みに関しては、API連携やバッチ処理といった手法、日次かリアルタイムかといったタイミングを設定する必要がある。その後、DMPやDWHといった基盤で3つ目のデータ統合が行われ、MAなど実際の活用方法に合わせてデータを使える形に加工する4つ目のデータ変換を経て、ようやくマーケティングに活用できるデータとなる。

 「多くのマーケターはMAやWeb接客などデータを活用する部分しか考えていないのですが、実はそこに至るまでに膨大な作業が隠れています。アパレル企業の事例も、データ取り込みから変換までの工程をまったく考えていなかったのが失敗の原因です」

 このアパレル企業では、ログ解析ツールと基幹システムでデータの取得はできていたが、どこにどのデータがあるのか整理されていなかった。その上、データ取り込みは手動で行う必要があり、データ統合基盤もないことから、都度人力でデータ取り込みと統合を行っていた。データ取り込みから統合までを行う作業量は膨大で、データ量がそれほど多くなくても1回あたり約300時間は取られるという。

 それを都度SIerに依頼していたら、実運用に乗るはずもない。つまり、データを正しくかつ素早く活用するには、データの取得・取り込み・統合・変換を踏まえた設計が求められるのだ。

様々なツール導入で失敗したスポーツメーカー~コスト超過に~

 2つ目の事例として挙げられたスポーツメーカーでは、自社ECサイトの収益性向上を目指し、現場主導でMAやWeb接客ツールなど様々なマーケティングツールを導入。メールやアプリなど各チャネルを横断して顧客に最適な商品・メッセージを配信することで流入増加を狙うと同時に、サイト内でのレコメンドによるCVR向上を図った。

 しかし、いざ導入を進めていくと各ツールのデータをつなげるのに膨大な工数が発生。作業に時間がかかりすぎるため、施策を実行できない。さらに、その状況を打破すべく別のツールも導入していった結果、コストも工数も増えていきプロジェクトが頓挫した。

 「ツールが増えれば増えるほど、膨大なコストと工数がかかります。各ツールの使用方法を理解する必要があり、マーケターも各ツールの運用で手一杯となり収益を生むための施策を考える暇もなく、ただの作業員となってしまいます

部門間で衝突起きた健康食品メーカー~専門知識と技術が不足~

 続いて、三浦氏は健康食品通販メーカーの失敗事例を紹介した。同社は約200万人に向けた1to1マーケティングを実行するため、マーケティング部主導でMAとDMPを導入。ただ、担当者のリテラシーが低く、都度エンジニアにデータ抽出を依頼していた。その結果、度重なる依頼によってエンジニアは疲弊し、マーケティング部はデータがすぐ出てこないことにストレスが溜まり、社内でうまく連携が取れずプロジェクトが頓挫してしまった。

 この問題にはどういった本質が隠れているのだろうか。三浦氏は「施策内容の急な変更のたびにデータ変更を、部外のエンジニアがしなければいけなかったことに問題がある」とした。確かに、エンジニア側からすれば、他の仕事もある中で急な依頼に対応するのは無理がある。一方、マーケティング担当者も急に顧客セグメントを変えたいなどの要望がどうしても出てきてしまう。この両者の対立の原因を三浦氏は以下のように解説した。

 「新しいアイデアが思いつくのは非常に良いことですが、そのアイデアを実現するには都度必要なデータが変わります。しかし、マーケターやマーケティング部内にSQLなどの専門知識がないため、都度部外のエンジニアにお願いした結果、ツールの運用がままならない。ツールが宝の持ち腐れになっているのです」

データマーケティングに失敗しない3原則とは?

 ここまで、三浦氏はデータマーケティングの実現に動いた結果、コストと工数負担を増加させてしまい、顧客理解やPDCA実行以前の問題が起きてプロジェクトが頓挫してしまった事例を紹介した。

 では、どうすれば失敗を回避できるのか。三浦氏は、データマーケティングを成功させるための3原則があると語る。

 「データマーケティング実現の3原則があります。データを『1.いつでも』『2.ひとつで』『3.誰でも』使えるという条件を満たすことが成功には欠かせません。つまり、工数とコストを削減して数多く施策を実行すれば成果は出せます」

 いつでもデータを活用できる状態にすることで、マーケターはエンジニアの手を借りることなく施策を実施できる。そして様々な機能・アプリケーションが1つのプラットフォームのソリューションとして提供されていれば、複数のツールを導入する必要がなくなりコストや工数も抑えることができる上に、データも統合しやすくなる。そして、リテラシーを気にせず誰でもデータが扱えれば、属人化することもなく実運用に乗りやすい。

 近年、この3原則を満たすソリューションとして注目されているのが、データマーケティングプラットフォーム(マーケティングクラウド)だ。フロムスクラッチが提供する「b→dash」も、その1つだ。

 1つ目の「いつでも」に関しては、先述した約300時間かかるデータ統合に関わる作業を自動化し約10時間で実現。しかも、エンジニアやコンサルの手を借りずに画面上で手軽に行えるのはマーケティングツールの中でも珍しいUX/UIと言えるだろう。これは、同社が過去数十万件にも及ぶデータテーブルの統合処理を実施してきたことによって開発ができた「Data Kitchen(データキッチン)」と呼ばれるテクノロジーによって実現した(特許出願中)。

 2つ目の「ひとつで」に関しては、データ取得、統合、活用に必要なツールを網羅し、ワンプラットフォームで完結。また、機能とプランも選択可能なため、必ずしもb→dashに統一する必要はない。

 3つ目の「誰でも」に関しては、操作がわかりやすいUX/UIと活用サポートによって、ユーザーのスキル・リソース不足に応えている。一般的にSQLなどの技術を必要とするデータの変換作業なども画面上で簡単に行える。

成功事例(1)~EC事業のKPIを大幅改善した飲料メーカー~

 b→dashがデータマーケティング実現の3原則を満たしていることを同プラットフォームの特徴と合わせて紹介した三浦氏は、それを実際に体現している事例を2つ紹介した。まず、1つ目はキリンの運営するハイエンド酒類に特化したEC「DRINX」の事例だ。

 同社では、大量のデータを整理するのに膨大な工数がかかっており、その上複数ツール導入による工数も発生していた。さらに、担当者しかデータを扱えず運用が厳しい状況だった上に、収益も伸び悩んでいた。

 そこで、b→dashを導入してデータ活用のしやすい環境を実現。データ処理工数が導入以前はデータ選定、精査、テーブル加工/紐付に約3,000分かかっていたのが、導入後は10分になった。

 さらにデータが活用しやすくなったことで、導入前のメールの一斉配信をセグメント配信に切り替え。ユーザー属性や行動データをもとに詳細なシナリオを設計したことで、CVR、メール経由売上、事業売上など全てのKPIが劇的に改善した。

成功事例(2)~高速PDCAを実現した大手ファッション通販サイト~

 2つ目の事例は、ファストファッション通販サイトとして知られるSHOPLIST の事例だ。同社はb→dash導入以前に「データ抽出に膨大な時間がかかってしまう」「売上や会員数など限られたデータの抽出にとどまってしまう」という課題を抱えていた。そのため、KPIの見直しや新規レポート作成に時間がかかる上に、成果に直結するKPIを見つけられずにいた。つまり、PDCAを早くかつ的確に回せていないことに大きな課題を感じていた。

 しかし、b→dash導入後はユーザー属性から注文、在庫、Webの行動データなど多種多様で膨大なデータを統合。そのデータをもとにb→dashのコンサルタントと成果につながるKPI設計と分析環境を構築。

 結果、月に2~3回にとどまっていたKPIとレポートの改定が日次でできるようになった。その上、限られたデータで設計していたKPI指標も網羅的なデータで設計することが可能だ。これらの効果により、企画から施策実行までのスピード向上、精緻な課題把握と意思決定を実現。PDCAの速さと質の担保に成功した。

ツール検討時は、各ベンダーから多くの事例を聞き出すことが重要

 b→dashは2社の成功事例から、先述したデータマーケティング実現の3つの原則が重要であることが改めてわかった。三浦氏もまとめの中で、データマーケティングの失敗事例から学ぶこと、データマーケティングを実現するために必要な3原則の重要性を改めて唱えていた。

 そして、その上で重要なこととして「データマーケティングプラットフォームには様々なものがあり、仕様もそれぞれ異なります。自社のサービスとの相性を見るために、まずは複数のベンダーに話を聞いて、どんどん事例を引き出してください。どれが良いかという観点だけではなく、“自社に合う”ツールなのかを見極めて導入することが大切です。本日はb→dashの話もしましたが、色々なツールを比較してください。もちろん、セカンドオピニオンとして、我々を活用いただいても問題ありません」と語り、三浦氏はセッションを終えた。

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この記事の著者

水落 絵理香(ミズオチ エリカ)

フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集を経て独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI・VR・ARなどの最新テクノロジー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/04/22 11:49 https://markezine.jp/article/detail/30703