マーケティングは事業成長を担う部門
ここ数年、コンサルティング会社のマーケティング領域への進出が目立っている。その筆頭がアクセンチュアだろう。この背景を、アクセンチュア インタラクティブの望月良太氏は「マーケティングが今、企業の事業成長のカギを握る重要な要素になってきているから」と語る。
元々同社は企業のビジネス成長を支援する、ビジネスコンサルティングが生業。そのビジネス成長におけるカギは、戦略コンサルからプロセスやIT、さらにアウトソーシングによるコスト効率化へと変わってきた。そして今まさに、マーケティングが企業の存続を大きく左右するファクターになっているというのだ。
実際に、まだ主流とはいえないものの、長らく「マーケティング=広告コミュニケーション」と捉えられがちだった日本企業の風潮も変わりつつある。経営陣としてのCMOという役職が少しずつ増えてきているのも、その一端だ。デジタル化によって成果を可視化しやすくなっていることを背景に、マーケティングの耳心地の良さで好感度を上げたりするのではなく、明確に「事業成長を狙う」部門だとの認識が広がってきている。
これは、長年クリエイティブディレクターという立場から各社の事業を成長させてきた小霜和也氏が今、広告主のアドバイザーとして引く手あまたであることにも見て取れる。
「マーケティングが経営そのものともいえるようになっている今、広告主企業にもエージェンシーにも精通する小霜さんのご意見をぜひ聞きたいと考えた」と望月氏。本セッションでは、以下の3つのテーマが掲げられた。
1.今、経営レベルでマーケティングを主導すべき理由
2.マーケティングをどう経営に結び付けるか
3.広告主(宣伝部/事業部)、エージェンシーに求められる新たな役割
市場、消費者、メディアの大きな変化
ひとつ目のテーマ「今、経営レベルでマーケティングを主導すべき理由」について、コンサルティング会社と広告代理店のそれぞれで10年の実務経験を持つ望月氏は、「広告コミュニケーションだけではモノが売れなくなっているから」と解説する。広告をはじめとするコミュニケーションは、今後も一定の役割を担うが、「以前と違って、広告コミュニケーションが必ずしも最適解ではないのでは?」というのが望月氏の見解だ。
その背景には、市場の変化、消費者の変化、メディアの変化という3つの要素があるという。
まず市場の変化に関しては、様々なカテゴリーがコモディティ化し、成熟・飽和状態にある。これは、どのマーケターも実感しているところだろう。
消費者の変化についても、趣味や嗜好性、ニーズ、購買行動が細分化・複雑化し、以前のようにデモグラフィック属性だけでは有効な打ち手を導き出せない状況だ。広告コミュニケーションよりも口コミのほうが、購買を左右することも多い。
そして、メディアの変化も著しい。消費者は、スマホから常時ネットに接続。様々なプラットフォーマー、カテゴライズメディアが提供する無尽蔵な情報にアクセスできる環境が、消費者の変化を助長している。
こうした現状を踏まえて、小霜氏は「たとえば、ある企業では『テレビCMよりも量販店の派遣スタッフ増強に投資するほうが利益が上がるのでは』という議論も出てきている。このとき、誰が決済をするのかという話が持ち上がる」と話す。