データ活用の環境構築と全社浸透がミッション
エバラ食品工業株式会社 マーケティング本部 マーケティングマネジメント室 マネージャー
毛利 英輔氏
2001年、エバラ食品工業に入社。営業部門、経営企画部門、広報部門などを経験。マーケティング部門でのブランド担当を経て、2016年に新設のデジタルマーケティング部門に異動。2018年4月より現職。
エバラ食品工業(以下、エバラ)は2015年4月にマーケティングに関連するプロジェクトチームを始動し、その後、専門部署の立ち上げやDMPの選定・導入、マーケティングダッシュボードの構築、自社ホームページのリニューアルなどを急ピッチで進めてきた。
そして2018年、データ活用を専門的に担う組織「マーケティングマネジメント室」を新設。同組織でマネージャーを務めるのは、初期段階からマーケティング環境の整備に携わってきた毛利氏だ。毛利氏は、新しく組織を設立した二つの理由をこう語る。
「当時のデジタルマーケティング部門は、オウンドメディアの運用から、ペイドメディアを活用したコミュニケーション、データマーケティングの浸透までを一括して担っており、業務の幅が広くなり過ぎていました。
またエバラは、DMPによるデータ蓄積・可視化の環境がようやく整い、本格的に活用を進めていく時期に入っています。そこで、『データ活用環境の構築』『データマーケティングの浸透』の役割を専門で担う組織を作ることになったのです」(毛利氏)
マーケティングマネジメント室の特徴は、他のマーケティング関係部署と横並びではなく、本部直轄の位置に置かれていることだ。マーケティング部門はもちろん、営業をはじめとする社内全体にデータマーケティングを浸透させていくために、こうした形態をとったという。
ところで、エバラは、なぜこれほど積極的にデータ活用を推し進めているのだろうか。
データ分析・活用技術の向上が、独自性を生む
まず前提として、毛利氏は、データ活用を“必ずしも事業規模が大きくないエバラが勝ち残るための戦略”と位置付けている。
「エバラは、『黄金の味』など主力商品に関しては業界トップの売り上げを維持していますが、調味料を扱う食品メーカー各社の売上高と比べると、決して大きくないというのが現状です。
よってどうしても、宣伝費や販売促進費、研究費では事業規模の大きな企業に差をつけられてしまう。こうした環境の中で優位性を見出すカギとして、データに着目しました」(毛利氏)
データの収集に関しては、メーカーならではの課題もある。
「食品メーカーの多くは、リサーチ会社が提供するパネルデータを軸としてマーケティングを行っているため、マーケティング施策の起点が同じになってしまいがちです。たとえ同じデータを使っていても他社と差別化を図ることができるよう、分析・活用技術を向上させることが必要です」(毛利氏)