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BtoBオウンドメディア元編集長 ファベルカンパニーの中山氏が語る、コンテンツ制作ノウハウ&企画術

2019/08/02 11:00

 コンテンツマーケティングは、実はBtoB事業でこそやりやすい。そう提示するのは、BtoBのオウンドメディア編集長経験を持ち、自身もライターとして長く活動するFaber Companyの中山順司氏だ。7月9日(火)に開催された「MarkeZine Day 2019 Focus」では、書き手がいない、続けるのが難しいといった数々の課題と解決方法を詳細にひも解きながら、具体的にとある業界を想定したコンテンツ案が紹介された。

BtoBでコンテンツマーケが効く、4つの明確な理由

 「書き手がいない」「社内のリソースがない」「予算の取り方がわからない」……。特にBtoB事業の場合、見込み顧客やリード獲得につながっていくコンテンツをどうすれば継続的に出していけるか、オウンドメディアの運営は「難しい」と思われがちだ。

 だが、実はそれは大きな誤解。Faber Company(ファベルカンパニー)の中山順司氏は「BtoB事業こそコンテンツマーケティングで戦いやすい」と指摘する。同社は人工知能を使ってSEOやコンテンツ施策に必要になるユーザーニーズを可視化するサービス「MIERUCA」(ミエルカ)を提供しており、中山氏はこの5月から同社に参画。自身は直近ではクラウド会計サービス会社でオウンドメディア編集長を務め、また個人でもライターとして10年にわたり硬軟様々なメディアで執筆、著作も持つ。

 そもそもなぜ、BtoBでコンテンツマーケティングが必要なのだろうか? その理由は、「今は顧客の側の情報収集力が格段に上がっているため、Webで検索した段階で俎上に上がらなければ検討の候補に入らず、戦うことすらできないから」と中山氏は語る。

株式会社Faber Company カスタマーサクセスチーム エヴァンジェリスト 中山順司氏

 同時に中山氏は、BtoBこそコンテンツマーケティングと相性がいいことも強調。「BtoCが広い海原に糸を垂れる“海釣り”なら、BtoBは“釣り堀”。正しい場で糸を垂らして待っていれば、確実に成果を上げられる」と解説する。

 BtoCよりむしろBtoBのほうが戦いやすい理由として、(1)高価格帯で、(2)比較・検討の期間が長く、(3)購入意欲が高く、(4)ロジカルな意思決定がなされるから、という4つの理由を提示。顧客が知りたい情報を、正しいタイミングかつ的確な人に、説得力あるデータで示せれば、大きな成果を上げることができる。

BtoBコンテンツマーケで陥りやすい4つの課題

 BtoBにはコンテンツマーケティングが必要で、かつ相性もいい。それらがわかった上でも、なおBtoBのコンテンツマーケティングは「難しい」と思われがちだと中山氏。主な課題をまとめると、「ライター&編集者が社内にいない/編集部の運営方法がわからない/始めやすいが続けるのが難しい/効果測定の方法が悩ましい」の4つに集約されるという。続いて、この4つに対する解決策が詳細に紹介された。

1、ライター&編集者が社内にいない

 予算があればいずれも外注すればいいが、コンテンツマーケティングはあらかじめ予算を取りづらい分、最初は社内リソースで始動せざるを得ない場合も多い。日本語を整えたり画像を選んだりといった編集の業務はそこまで難しくはないが、肝になるのは記事のネタであり、そのネタを表現できる書き手だ。「しかし、社内でライターを募っても手が挙がることはほぼない。自薦ではダメ、他薦にしていく」と中山氏。

 「ライター&編集が社内にいない」という課題は、発見する・依頼する・続けてもらう、という3つのフェーズに分けられる。発見フェーズでは、各部門やその部門長に適任者をヒアリングして“他薦”で候補者を洗い出す。次に依頼フェーズでは、他薦だと初期段階で本人に意思がなく、また本業もあるため断られるのが当然。そこで、文章力やファクトチェックは編集部で巻き取ること、それでも難しければ執筆ではなくインタビューでの記事化を提案するなど、とにかく限界までハードルを下げて提案・交渉することが奏功する。

 そして最も大切な“続けてもらう”点では、「感謝と承認が大事」と中山氏。たとえば公開後の反響をフィードバックしたり、社内への定期的なレポート共有時に成果を披露するなどして「中長期的にスポットライトを当てるようにする」ことが有効だという。 

オウンドメディア運営、内部でやるべき領域は?

2、編集部の運用方法がわからない

 次に、編集部の運用方法について。「私もオウンドメディアの編集長を務めていた際に何人体制かを頻繁に聞かれたが、当時は私一人だった。ただし、分業はしていた」と中山氏は話す。

 編集部の業務イメージは、次のような図で表せるという。

セミナー投影スライドより抜粋

 このうち、中山氏が行っていたのは主にスライド上部の「企画&構成/編集/公開、拡散、分析」。下部の「執筆/CMSアップ」という作業的な部分は外注するなどしていたそうだ。「ポイントは、作業は切り出すが、思考が必要な部分はできるだけ内部で進める点。そうでないとノウハウが社内に貯まらない」(中山氏)。

3、始めやすいが続けるのが難しい

 3つ目は、継続に関する課題だ。単発のキャンペーンなどと違い、オウンドメディアは月に何本アップするか、ネタが足りなくなったらどうするか、と継続運営に関する心配事が尽きない。「別にジャーナリズムを追求するメディアではないのに、つい『どのようなコンテンツ・記事である“べき”か』をジャーナリズムに照らし合わせて深く考えてしまう点も、歩みを遅くしているのでは」と中山氏は考察する。

 そこでひとつ有効な策が「インデックス型コンテンツ」。たとえば中山氏は前職のクラウド会計サービス会社のオウンドメディアで、ビッグワード「確定申告」をテーマに13のカテゴリーを設定、それぞれで複数の切り口を設定して約150の記事を2ヵ月で量産したという。

セミナー投影スライドより抜粋

 相応の外注費とスピーディーな編集力が必要だが、「書籍の見出しを作るようにインデックスを作成すれば、予算の見通しも立ち、終着点も見える。実際にこのコンテンツ群はSEOで大きな成果につながった」と中山氏。業界の不動のテーマや注目テーマについて事前に全体のコンテンツ計画を立てておけば、いったんの終わりも見えやすく、取り組みやすくなるのではないだろうか。

上層部にも理解しやすい効果指標を設定し、継続的に予算を獲得

4、効果測定の方法が悩ましい

 コンテンツマーケティングの重要性を上層部が理解していない場合はもちろん、理解のある場合でも、一定の成果を数値化や可視化しなければ、予算を得たり活動を継続したりすることは難しい。この点に対する中山氏の解決策は2つ。単純化と、置き換えだ。

 単純化とは、PVや直帰率など複数の指標は現場では見るが、共有や報告する際はひとつの指標に集約して他部署や上層部にもわかりやすくすること。中山氏は、以前から独自に数値化していた「ファインダビリティスコア」の考え方を紹介。ファインダビリティ(Findability)とは、Webサイトがどれだけ検索利用者から見つけやすい状態にあるかという意味だ。

 たとえばSEOで狙っているキーワードで検索した際、自社コンテンツが「何位なら何点」というスコアリングをあらかじめ設定しておく。中山氏は検索結果におけるクリック率をスコアに採用していた。1位なら20点、2位なら15点……というように点数を積み重ねて自社サイトのSEO状況をスコア化し、同時に競合もスコア化する。これを定期的にチェックし、時系列で自社スコアが上昇していれば「効果が上がっている」とみなす。

 「コンテンツマーケティングの1本ごとの記事の効果を可視化するのは難しい。また検索上位にならなければCVもリード獲得も何もない。そもそも中長期的な取り組みなので、月単位など時間経過で『重要キーワードの検索順位が上がっているか』を可視化し、それを社内に随時報告していると、社内も盛り上がった」と中山氏。ちなみに現在手掛ける「MIERUCA」では、ファインダビリティスコアを競合サイトも含めて、自動モニタリングしてくれる機能を実装しているため、自社と競合の検索優位の変動をリアルタイムで察知し、施策に活かすことが可能だという。

レポーティングに割く時間は極力ゼロに近づける

 もうひとつの置き換えは、広告費換算が代表的な指標だ。タイアップ記事を出稿した際の記事広告費と同等のPV数を目安に、「同じPVを得られたら同等の広告費をオウンドメディアの予算に投じてほしい」といった交渉は社内でも通りやすい

 ちなみに効果測定に関しては、「レポーティングに費やす時間は極力ゼロに近づけるほうがいい」と中山氏は指摘する。編集部の運営方法の点でも述べられたが、人的リソースが限られる中では、作業的な時間をできるだけ圧縮するのが成果を上げるひとつの近道だ。効果の可視化やレポーティングは、今では「MIERUCA」をはじめ自動化できるツールも増えているため、報告資料作成に数時間や半日を費やすならばツールに任せて“思考”の時間を多くするのが得策だ。

 ここまで、BtoBのコンテンツマーケティングにおける4つの大きな課題と解決の提案が語られた。「それでも、うちの業界は特殊だから、キーワードが少ないから、専門知識が多くライティングの外注がしづらい、といったBtoBならではのコンテンツマーケティングのお悩みは尽きない。まだ、イマイチBtoBのコンテンツマーケティングのイメージが浮かばない方もいると思う」と中山氏。

 そこで、中山氏のメディア運営やコンテンツ制作に関する豊富な実績を下に、非常にニッチな領域でコンテンツマーケティングをどう考えるか、ここからはニッチな領域を想定したコンテンツ企画のデモンストレーションが紹介された。

客観的な示唆に基づいてロジカルに成果を上げる

 その領域とは「豊洲市場のマグロ専門仲卸」。直接的な顧客である居酒屋や料亭の魚仕入れ担当者に対し、どのようなアピールならお問い合せがくるか、あるいは自分が仕入れ担当ならどのような情報が欲しいか、と考えていく。

 中山氏は「『自社の顧客=仕入れ担当者』にとって有益な情報を提供するだけでなく、その方々の顧客、つまりエンドユーザーである『お店に食べにくる一般顧客』のことまで考えると、一気にコンテンツの幅が広がるのでは」と提案する。

 魚を仕入れるのは手段のひとつで、“目的”ではない。目的は「集客」と「顧客満足」ひいては「店の繁盛」だ。そのために仲卸が提供しうる情報について、中山氏はたとえば「繁盛店とそうでない店との仕入れの違い」「お客に話したい、酢飯に関するトリビア10」など複数の切り口を提示。

 さらに「MIERUCA」を通して、客観的な検索で評価されているコンテンツやQ&Aページを分析。「歩留まり率(※仕入れた魚から筋や鱗を除いた何割が製品化できるか)」「計算」などのニーズが見えてきたので、「【5分で理解】仕入れ担当者が押さえるべき“歩留まり率の計算法”」「歩留まり率の良い魚介類まとめ」といった記事案を挙げた。「客観的なニーズ分析を元に発想すれば、そこまで外さないのでは」と中山氏。

「MIERUCA」のサジェストキーワード分析の例

 BtoBのコンテンツマーケティングは、専門的な内容だけにハードルが高いと思われがちだが、ここまでの解説にあったように、ロジカルに積み上げることで一定の成果が見込める。ポイントは、今回のセッションでも存分に実感できたように、どれだけ具体的なユーザー像とそのユーザーが求めている内容を想定できるかだろう。ユーザーが実際に検索しているキーワードの分析は、コンテンツ企画に役立つ様々な示唆を得られる。その点で「MIERUCA」はツールとして役に立つ。

 さらに、定期的に開催されているMIERUCAユーザー会では、同じ悩みを抱えるユーザー同士で活発な情報交換も行われている。「ツール」と「横のつながり」がコンテンツマーケティングを推進する大きな味方になるはずだ。

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