「NAVITIME」で培ったものを法人向けに
MarkeZine編集部(以下、MZ):ナビタイムジャパンの提供するオウンドメディアソリューションは、自社メディアの運営とは別に、外部メディアに機能を提供しているとのことで、どのようなサービスなのでしょうか。
渡辺:ナビタイムジャパンでは、「NAVITIME」などを通じて一般コンシューマー向けに経路検索、移動支援サービスをご提供してきました。その中で培ってきた技術や機能を、企業のWebサイトやアプリといったオウンドメディア向けに提供しています。
サービスの強みとなるポイントが2つあります。大手チェーンでは日々出退店が繰り返されていて、それをタイムリーにWebサイトに反映させるためには手間とコストがかかってしまいます。弊社のサービスでは、管理ツールに入力するだけで簡単に更新することができます。もう一つは、立体的な検索機能です。たとえば現在地から近い店舗とか、任意の駅から近い店舗、商品券が使える店舗など、様々な条件で絞り込むことができます。そうした機能をゼロから開発すると、新たな検索項目を増やすたびに相当な工数がかかってしまいますが、弊社のサービスでは利用したい検索オプションを選択するだけで簡単に機能追加ができます。
MZ:具体的にはどういった企業で利用されているのでしょうか。
渡辺:全国100以上の企業に導入していただいています。たとえば、ロイヤルホストや天丼てんやといった外食チェーンを展開するロイヤルホールディングス様で、現在地やエリアを選択した周辺店舗検索、レストランのブランドや株主優待券の適用店舗などの条件による絞り込み検索などの機能をご利用いただいています。
MZ:一方、独自のビックデータ基盤とメソッドを活かして市場環境分析や顧客分析を行っているのがヴァリューズです。どういった経緯で、ヴァリューズと協業するようになったのでしょうか。
渡辺:元々弊社において、競合サイト分析やネットユーザー分析ができるヴァリューズさんのサービス「VALUES eMark+」を利用していました。たとえば、「NAVITIME」というサービスを利用しているユーザーは他にどんなサービスに触れているのかとか、市場の中で「NAVITIME」というブランドがどういう位置付けなのかということをヴァリューズさんに調査していただいたりしていました。
齋藤:ナビタイムジャパンさんもいろいろとデータをお持ちなので、BtoBtoCの座組みを提案できるのではないかと、ナビタイムジャパンさんからお話をいただきました。弊社でも、多くの事業会社様の調査をお手伝いさせていただく中で、土地や商圏に関連する案件などで、ナビタイムジャパンさんにも協力していただくのはどうだろうかという話が挙がっていました。
顕在層を可視化
MZ:協業した事例の一つが車載機器メーカーであるアルパインの案件だそうですが、具体的な取り組みについてお聞かせください。
渡辺:アルパインさんが自動車の後席モニター「リアビジョンシリーズ」について、店舗で直接商品を体験してもらう取り組みを強化されていて、取扱店舗を検索するために、弊社のサービスを採用していただきました。店舗検索は弊社の強みとする領域ですが、その手前の段階でどんなシーンで商品を知ってもらえるか、どうすれば店舗に行きたいと思ってもらえるか、取扱店舗を調べようと思うモチベーションをどう高めていくかといったところも調査したほうがいいという話になりました。そこで弊社でお取り引きのあった、ヴァリューズさんにお力添えいただくことになりました。
齋藤:アルパイン様の事例が、こういった形で協業した最初の取り組みです。後席モニターにおけるマーケティングの戦略をしっかり強固にしたいということと、そのためにユーザーの検討状況や購入の意向などをしっかり可視化して施策を打っていきたいというご要望をいただきました。
実際の購入者にも調査
MZ:実際にヴァリューズが行ったこととは?
齋藤:ターゲットの明確化と決定プロセスの可視化をお手伝いさせていただきました。その方法として、アンケート調査とログ分析を行っています。アンケートに関しては、ここ1年以内に実際に後席モニターを購入し、その選定に関与した方700人の回答を得ました。どんな車種に乗られているのか、検討期間、後席モニターの購入は新車購入と同時か後追いか、どういうチャネル(ディーラー、カー用品店、ECなど)で購入されたか、購入のきっかけ、購入前にどのような情報収集をしたのかなど様々な質問をしています。それらをコレスポンデンス分析したり、フリーアンサーを形態素解析した上でワードクラウドにしたりといった分析を行いました。
MZ:ログ分析のほうでは?
齋藤:ログに関しては、定量と定性で調査しています。定量に関しては、どんなサイトを見ているのか、どんなワードで検索したのかといった情報から、購入にいたるプロセスを分析しています。定性については、実際に後席モニターを購入された方々一人ひとりの個票分析をやっています。データ収集に同意いただいたモニタパネルの行動ログを活用し、本人を特定しない形で属性とともにその方々の検討行動を明らかにして、検討のきっかけや、購入のチャネルなどを明らかにしました。
裏付けのあるマーケティング施策へ
MZ:調査結果についてどういった反響があったのでしょうか。
齋藤:調査結果をご報告した会議の場で、「非常に解像度の高いデータを感謝します」と言っていただけました。今回の結果から後席モニターを検討・購入される顧客像や購買に至るまでの行動が浮かび上がったことを評価していただきました。担当者の方の、「砂漠に水を撒くような施策はやりたくない。しっかりとターゲットを見定めた上で、その方々に対してメッセージを打つための材料を欲していたので、すごくありがたい」というコメントが印象的でした。
MZ:得られた結果を、実際の施策にどのように活用されていくのでしょうか。
齋藤:調査結果から、どういうタイミングで、どんな媒体に、どんな訴求をするとよいのかという、プロモーションのご提案もさせていただきました。また、出稿媒体をどこにするとよいのかというのも、我々のログから明らかにしています。
たとえば、後席モニターを購入される方の多くがカーナビやドラレコといった他のカー用品について調べていく中で後席モニターにも興味を持ち、購入されることが多いことがわかりました。そのため、ドラレコやカーナビの購入を検討している人、またはそれらのカテゴリー閲覧者への訴求が適切だというご提案をさせていただきました。
これまで慣習的にイレギュラーだと思われていたことも、データ分析の結果からは挑戦してみる価値があることもわかりました。準顕在層や潜在層へのアプローチに有効な手段に結びつけようとしているところです。わかりやすいところだと、調査結果から浮かび上がった訴求軸を基にしたバナー広告をナビタイムジャパンさんと一緒に作りました。
「外にいる顧客」も浮き彫りに
MZ:ヴァリューズは調査だけでなく、プロモーション領域、広告運用のところまで手がけられているのですね。
齋藤:我々はデータの可視化をメインでやってきましたが、調査結果を施策に落とし込んでいく広告代理店事業も柱の一つとして立ち上げました。Google、Yahoo! JAPAN、Twitterの認定パートナーにもなっています。興味関心に基づくターゲティング、サーチターゲティング、プレイスメントターゲティングをより精度高くやるというところを得意としています。潜在層から顧客化していくところはもちろん、データに基づいてファネルの上部にもアプローチできるので、フルファネルでの支援を実現していきます。
もちろん事業会社様でも顧客に関する多くのデータをお持ちでしょうが、競合他社に流れていってしまった顧客について追っていくのは難しいものです。弊社のモニターパネルと突き合わせて見ることで、顧客理解を深めていくことができるかと思います。
捉えきれない領域を補っていく存在に
MZ:ナビタイムジャパンのオウンドメディアソリューション事業における今後の展望についてお聞かせください。
渡辺:自社サービスで磨き上げたものを、外部に提供できるという我々の強みを活かし、経路探索エンジンのデファクトスタンダードになることを目標としています。
「MaaS(Mobility as a Service)」実現に向けた取り組みが増える中、移動データへの注目も高まっています。より現実的な利便性に結びつく精度の高いデータが求められるようになっています。たとえば、駐車場一つとっても、単純に近いだけではなく進行方向にあるかどうかということが実際に利用する上では重要です。不動産においても、駅の南北でそれぞれどういった特性があるのかということが、駅からの距離以上に意味を持つ場合もあります。我々の有するそういったデータを活かしながら、取引先企業様のビジネスを加速していけたらと考えています。
MZ:ナビタイムジャパンとヴァリューズの協業における今後のビジョンについてお聞かせください。
齋藤:両社のデータを組み合わせることで、事業会社様内にあるデータだけでは捉えきれない領域について補っていければと思います。
たとえば、トランクルームの会社や不動産サイトのギャラリーなどに我々の「VALUES eMark+」のデータと、ナビタイムジャパンさんによる商圏評価を連携させることで、戦略もよりシャープになるのではないかと考えています。ナビタイムジャパンさんのデータを我々がリセラー的に一緒にご提案することでも、事業会社様にとって意味のある施策につながっていくのではないかなと思います。