営業活動のオンライン化を自社のMAで実践
企業が効率的に見込み顧客を増やすための国産MAツール(以下、MA)として、現在800社以上に導入されている「SATORI」。同ツールは、匿名客の情報をデータベースとして管理できるほか、見込み顧客への段階的なコミュニケーションを実現する手法も備わっている。
同ツールを提供するSATORIでは、創業から意識して「自社製品を活用して成果を出し続ける」ことを行ってきた。マーケティンググループ長の豊川氏は、「それは結果的に会社のブランディングに繋がり、お客様の“共感”と“信頼”を勝ち取るための行為でもある」と話す。
豊川氏はセッションにおいて、いち「SATORI」ユーザーとして自身が取り組んできたMA活用による営業効率化事例と、ブランディングに関わるコミュニケーション活動について解説した。
顧客は会わずして比較検討までを終えている
まず語られたのは、昨今MA導入企業が増えている背景に「対面セールスの限界」が関係しているということ。コロナ禍にある今、そのことを感じている人も少なくないだろう。実際に、購入プロセスにおける売り手と買い手のコミュニケーションのうち85%は非対面で行われるというデータが示すとおり、顧客は営業担当者に会わずして比較検討のフェーズまでを終えているのが現状だ。
ならば会えないなりに非対面セールスを実現しようと、一つの手段としてMAが普及するようになったと豊川氏は解説する。
MAを使うことで、顧客の検討段階にあわせて適切なコミュニケーションの手段を選択して、最適なコンテンツを届けられるようになる。つまり段階的に相手をゴールに引き上げるためのコミュニケーションを仕組み化することが可能となり、その企業におけるホットな見込み顧客を継続的に創出することにつながる。
「ここで大事なのが、すぐに購入検討してくれそうな『今すぐ客』と、将来的な顧客となり得そうな『そのうち客』の視点です。みなさん『今すぐ客』へのアプローチにばかり意識がいきがちですが、『そのうち客』の育成は継続的な商談創出に欠かせないことです。ですが、その人たちに購入を促す直接的なメッセージを送るのでは、MA製品を提供する立場としてブランドイメージを下げかねません。だからこそ、顧客の検討段階に応じた段階的なコミュニケーションを考え、それを実践する必要があるのです」(豊川氏)
部門間の共通KGI設定を可能にした組織づくり
豊川氏は次に、実際に非対面セールスを実践する組織体制について自社を例に語った。
SATORIでは上図のように組織が分かれており、カスタマーサクセスを除いたプロフィット部門のKGIが共通して「受注数」となっている。KGIを達成するためのKPIは部門ごとに設定されているが、ポイントは一つ先の部門が担っているKPIを設定していることだという。たとえば、マーケティング部門の場合には「リード獲得数」が指標にされるケースが多いが、SATORIの場合、そこには「商談数」が置かれている。
「役割・職種ではなく、どのコミュニケーションフェーズを担当するかで考えれば、型にはまらないアイデア創出や行動が自然にできるようになります。ただ、突然この体制に変更したわけではありません。弊社ではまず、最もハードルが高かったインサイドセールスとセールスの連携からはじめ、そこでできた成功パターンを他部門にも展開していきました。その結果、現体制へとつながりました。
共通KGIを設定するメリットとしては、臨機応変な判断が必要な際に、本質を外さずに的確に行動できることがあげられます」と、豊川氏は説明する。
続いて取り上げられたのは、リモート環境下で営業・マーケティング部門が抱える問題について。豊川氏は自社の例を基に7つの課題をピックアップした。
明日から使える!営業活動のオンラインシフト施策7選【前半】
先の7つの課題に対して、MAをメインに活用しているSATORIの「マーケティング」「インサイドセールス」部門ではどのような施策を展開しているのだろうか。豊川氏は以下のように解説した。
1.オフラインイベントの中止によるリード不足を解消
名刺交換や実名客のリード獲得が効率的に行えるため重宝される、展示会などのオフラインイベント。SATORIでも「そのうち客」を獲得するために実施していたが、コロナ禍で実施が難しくなった。このような状況でも、一定のリード獲得数を確保できる手段として、同社が行ってきたオウンドメディア(SATORIマーケティングブログ)活用によるリード獲得施策を紹介した。
具体的には、検索流入してきた閲覧者の中で、スクロール70%などの一定の条件を満たした閲覧者に対し、ポップアップを表示。流入したコンテンツから相手の興味関心度をはかり、マッチする資料のダウンロードページへ誘導し、フォーム入力を促す。入力項目は名刺情報にすれば、展示会で行っている名刺情報の獲得がオンラインかつ非対面で可能になる。
他にも、ポップアップ事例としてメルマガ登録をお勧めして、メールアドレスのみの取得にとどめた後、段階的なコミュニケーションにより個人情報項目の取得を目指す方法も。また、特定記事を読んでいる人で過去にセミナー申し込みがない人をセグメント。その後、Webページのパーソナライズを用いてセミナー案内の特別バナーを表示するなど、コンテンツの出し分けを行うことで匿名客から名刺情報を獲得した。
「コンテンツの考え方のヒントとして、『そのうち客』なら、トレンド情報やノウハウ。『もうすぐ客』なら事例などの自分ゴト化を促す情報。『今すぐ客』には、キラーコンテンツと言えるようなコンテンツを準備しておくことが大事です。その情報の提供と引き換えに、個人情報を入力してもらってリード獲得をしていきます」(豊川氏)
2.広告の投資対効果を見直し・改善
運用型広告とMAに蓄積された行動履歴をかけあわせることで、匿名客にアプローチ。広告費削減の効果を得られたという。
具体的には、広告流入してきた匿名客に対し、ポップアップやプッシュ通知を行うことで、セッション回数・広告クリック回数が減り、1訪問あたりの価値が向上。MAによる広告のレバレッジに成功した。
3.マーケが供給するリストの質を上げる
またSATORIでは、マーケティング部門のリストの質を改善する策として、ステップメールで顧客の興味関心を醸成・育成することに取り組んでいる。
たとえば、外部メディア経由でリード獲得をする際にアンケートを実施。リード納品後、その回答結果を基に、興味度合いによりリードを3つのランクに分け、それぞれの興味・関心に合った情報を届けて一次フォローを行う自動シナリオを組んでいる。
「シナリオをはさむことで、顧客それぞれの興味を一段階引き上げることができ、リードタイムの短縮に貢献することができました。やる前と比べると商談化率も改善しました。」と豊川氏は言う。
明日から使える!営業活動のオンラインシフト施策7選【後半】
4.顧客のフェーズに応じたセミナー設計法
本来、“リード獲得”や“顧客育成”が目的であったセミナー開催が、いつの間にか開催することが目的になってしまっていることがあると、豊川氏は話す。
そこでSATORIでは、セミナー設計の見直しを実施。顧客の興味関心を4つのフェーズに分け、各イベントコンテンツを企画。「まだまだ客」であればマーケティングに役立つ情報イベント、「そのうち客」ならMAに関するセミナー、「もうすぐ客」にはSATORI単独セミナー、「今すぐ客」に対しては商談という形で、情報の出し分けを細かく制御することで、顧客に応じた適切なアプローチを行っている。
5.ウェビナーアンケートの回答率を上げる
これに関してはツール連携で実現が可能に。「SATORI」と「Zoom」を連携し、参加者にアンケートの依頼メールを配信。回答を得たらお礼メールを送るところまでを自動化できるという。
アンケート回答が届いた際のフォローは、これまでメールを使ってインサイドセールスや営業担当者に通知してきたというが、最近は自社で活用頻度の高いビジネスチャットツール連携を行い、よりタイムリーに通知を行っているという。これら一連の動作を自動化することで、顧客のホットな状態を逃さずにアプローチする仕組みを構築している。
6.「やみくも営業」からの脱却
やみくもな営業から脱するのに有効なのが、「キラーコンテンツ」の準備。これは、「今すぐ客」をあぶりだす、購買意欲を計るためのコンテンツを指す言葉だが、SATORIにおけるキラーコンテンツは「他社との比較」だという。
具体的には、競合他社と自社サービスの比較表を作り、Webサイトの料金ページにポップアップでダウンロードを促したり、広告連携を行い、SNSフィード内に案内を表示。また、コンテンツを見た人を即時検知し、通知機能で営業担当者やインサイドセールス部門へ通知している。その効果は高く、キラーコンテンツを見た人と見ていない人の商談化率の影響を調べたところ、他のコンテンツと比べておよそ8倍の違いが出たという。
「キラーコンテンツを見つける方法は大きく2つ、(1)データからあたりをつける(2)営業部門へのヒアリングがあります。(1)はGoogleアナリティクスでCVに貢献しているコンテンツを調べることで見えてきます。(2)については、常に顧客像をアップデートしていくためにも、営業部門だけでなく各部門をまたいでコミュニケーションを取っていくことが大切です」(豊川氏)
7.「通じる連絡先」の取得方法
コロナ禍でリモートワーク体制が加速し、オフィスに電話をかけても誰も出ないという事態が起きている。 そこで同社は顧客データの入力フォームを見直し、固定電話の番号が入力されがちな項目を「日中につながりやすい電話番号」へと切り替えることで、携帯番号の入力を促している。これによる成果については、これから検証していくという。なお、今までの固定番号を消すことはせず、一時的に管理項目を追加して管理しているという。
豊川氏は7つの課題について説明した後、「見込み顧客掘り起こしの可能性を広げるために、様々な外部ツールと『SATORI』を連携するなど、自らの実践で得た情報やノウハウを積極的に発信しています。その裏には、当社のミッション『あなたのマーケティング活動を一歩先へ』を体現したいという想いがあります。今回のセッション内容が、少しでも皆さんのマーケティング活動に参考になればと思います」と語り、セッションを締めくくった。