MarkeZine(マーケジン)

記事種別

事業成長につながるKPIを追求したい!グノシーが各媒体の売上貢献度/投資の伸びしろをMMMで可視化

2020/08/04 10:00

 「各メディアへの広告投資は売上に貢献しているのか」「オフライン・オンライン施策の効果を横並びで比較できないか」。Facebook Japanは、こうした疑問を解決する有効な測定方法の一つとして、統計で施策の総合的な効果測定を行うマーケティング・ミックス・モデリング(MMM)を提案している。同社からの提案でMMMを実施したGunosyは、メディア施策の売上への貢献度について、これまで追ってきた指標では見えていなかった示唆が得られたという。GunosyとFacebook Japanの担当者ら4名に、話を聞いた。

7周年を迎えた「グノシー」の注力課題とマーケティング

――Gunosyでマーケティングを担当されている石井さん、野崎さん。はじめに現在の事業戦略について教えてください。

石井:情報キュレーションサービス「グノシー」は、「情報を世界中の人に最適に届ける」をミッションに、アルゴリズムでユーザーごとに最適化した情報を提供し、成長を続けてきました。現在は、ユーザーが求める情報の多様化にあわせ、ニュースだけでなく、動画やクーポン、最近は音声コンテンツなどのコンテンツ配信にも注力しています。

Gunosy マーケティングマネージャー 石井健輔氏
Gunosy マーケティングマネージャー 石井健輔氏

――「グノシー」のリリースは、2013年でした。それ以降、様々な情報キュレーションサービスが登場しています。

石井:競合環境が激化していることは事実です。私たちマーケティングチームは、グノシーを使っていただく理由を確立させ、情報サービスの代表としてのポジションを取りに行く施策を、新規ユーザーへの訴求と既存ユーザーのDAU最大化の両方において展開しています。

野崎:マーケティングコミュニケーションは、Webを中心とした広告出稿と、定期的なテレビCMの放送を軸にしています。7日後のアプリ起動単価を意味するCost Per Day 7(以下、CPD7)をKPIに、各媒体の広告効果を追ってきました

Gunosy マーケティング 野崎稜氏
Gunosy マーケティング 野崎稜氏

代替指標の計測だけでは把握しにくい、売上への貢献度

――続いて、今回Gunosyさんがマーケティング・ミックス・モデリング(以下、MMM※)による効果測定に取り組まれた背景を教えてください。Facebook Japanの営業担当のアレックスさん、マーケティングサイエンスの砂川さんが提案されたそうですね。

※MMMに関する解説記事はこちら

アレックス:はい。Facebookでは、お客様の事業成長に、マーケティングを通して貢献することをミッションとしています。今回GunosyさんにMMMをご提案したのは、KPI(CPD7)に改善余地があるのではないか、という仮説を持っていたからです。

――なるほど。どのような仮説でしょうか。

アレックス:本来KPIは、KGIに近いところで設計するのが理想ですが、マーケターの皆さんの多くは、クリックやインストールなどの代替指標を広告活動のKPIとして運用している現状があります。

 「グノシー」事業においても、KGIは「広告収益の最大化」、KPIはCPD7と設定されています。しかしCPD7はあくまで「代替指標」。各媒体の売上貢献度をCPD7で評価した時と、KGIに更に近い指標で評価した時では、評価に違いが出る可能性があります。どのような結果が出るのか一度試してみたほうが良い、結果次第では、他の指標をKPIに追加することも検討すべきなのではないかと考えたのです。

砂川:また、FacebookとInstagramは人ベースで高精度のターゲティングが可能ですので、効率性の高さには自負があります。KGIに近いところで評価することで、代替指標で計測した数値以上の価値を可視化できるはずだと考えていました。この仮説を確かめてみることも、今回の効果測定の目的でした。

野崎:Facebookのお2人からの提案は、まさに私たちが抱えていた課題を解決する内容でした。CPD7が「グノシー」のKGIに対して最適なKPIかどうかを検討したいと考えていましたが、その方法を持っていなかったのです。お話を聞いて、ぜひやってみたいとお願いしました。

アプリ企業がMMMを実施するメリット

――MMMは、テレビCMなどのオフライン施策を中心に行っていたり、リアル店舗で商品を展開するブランドに適した分析手法の印象がありましたが、グノシーのようなデジタルサービスにも、活用できるのですね。

アレックス:おっしゃる通り、MMMはオフラインとオンラインを含めた、総合的な効果測定が可能なことが特徴です。グノシーは定期的にテレビCMも実施されていますから、MMMが適していたと言えます。今回は、オフラインとオンラインの全体ROASを改善することを、目的に置きました。また、Web施策とテレビCMを横断で分析するにあたり、目的変数を既存KPI(CPD7)ではなく、広告インプレッションに設定することで、KGIにより近い指標に対する効果計測を行いました。

Facebook Japan クライアントパートナーマネージャー アレクサンダー・キベッツ氏
Facebook Japan クライアントパートナーマネージャー アレクサンダー・キベッツ氏

砂川:MMMのメリットは、売上への貢献度を把握できるだけではありません。媒体ごとに広告投資の伸びしろを可視化することもできます。もっと広告予算を増やせば成果が期待できるのか、それともこれ以上は期待できないのかを把握することで、的確な予算アロケーションが実現できます。

石井:私たちのようなデジタルサービスは、リアルタイムで様々データを計測することができます。そのため、前日の数値を見て今日はどんな施策を打つか考えることが得意ですし、グノシーも徹底的に科学の視点で施策を判断しています。

 一方で、テレビCMやオフライン広告の効果は数学で証明するのがまだまだ難しい領域です。特に数ヵ月、数年単位の傾向を見ながら適切な判断をするのは難しく「あのときテレビCMをもっと打つべきだったのではないか」と感じたこともありました。MMMでその点がクリアになるとわかり、試してみる意義をより強く感じました。

MMMとサードパーティ計測で、Web媒体の評価に違いが

――それではMMMの結果について、まずは売上への貢献度の観点から教えてください。

野崎:まずは、媒体評価に大きな違いがありました。これまで広告費を多く投資していた媒体が、必ずしも高い広告効果を得られていたわけではなかったことが見えてきたのです。

石井:たとえば特定の媒体から流入したユーザーは、継続率が高い反面、ROIで見ると、あまり良くない結果が出ました。これは、これまで理解していた認識と異なり、ギャップを感じました。

 その一方、ターゲティング精度の高いFacebook広告を含む一部媒体は想像通りに広告効果が高く、思っていたことが改めて数値で証明されたなと思います。

砂川:サードパーティの計測ツールとMMMで、評価が異なるWeb媒体があったことは、興味深いところでした。たとえばFacebookは、CPD7の観点では必ずしも最も高い評価を与えられる媒体ではありませんでしたが、MMMによってKGIに近い指標で見たときは、より高い評価が出ていました

Facebook Japan マーケティングサイエンスリード 砂川紘輝氏
Facebook Japan マーケティングサイエンスリード 砂川紘輝氏

石井:今回の結果から、ROIの観点でのメディアプランニングの再考ができると気づけたのは大きな収穫でした。

広告投資の伸びしろを、データで証明

――続いて、広告投資の伸びしろについては、どのような結果が出ましたか。

砂川:ROIは高いものの、これ以上投資しても数値の伸びが期待できない媒体が見つかった一方、FacebookやInstagramは「広告投資の伸びしろがある」との結果が出ました。

 広告投資の伸びしろは、サードパーティの計測ツールではわからない観点です。何を目的とした施策なのかで評価が変わることに注意が必要ですが、広告効果を最大化するには、MMMの指標である広告投資の伸びしろも参考に適切な予算配分が重要だと考えます。

野崎:FacebookやInstagramはアクティブユーザーが多く、投資の余地がありそうだという認識は持っていました。しかし、CPD7で評価したときの効果を見ただけでは、投資する決め手が足りない状況だったのです。MMMから投資の伸びしろがあるとわかり、より活用できるチャンスが広がったと感じています。

石井:投資の伸びしろが可視化されたことは、私にとっても大きな学びでした。たとえば、CPAが500円の媒体と1,000円の媒体があったとき、500円の媒体にいくら予算を投資するかは、マーケターや広告代理店担当者の肌感覚で判断されることが少なくありません。

 今回のMMMで、「この媒体は、何%ぐらいまで投資できる」「この媒体は予算を増やしてもコンバージョンは変わらない」といった観点について、科学的にアプローチできる準備が整ったと思います。

実施に必要なデータ準備~分析完了までの期間は?

――MMMの実施にあたって、データの準備や分析といった作業はどのように進めましたか。

アレックス:Gunosyさんからは、直近3年間の広告出稿データやユーザーのアクティブデータなどをご提供いただいたのですが、約3ヵ月で分析を完了できました

 日頃からデータをしっかりと整備・蓄積していることもありますが、石井さんと野崎さんのコミットメントも高く、スピード感をもって進められました。

野崎:今回のMMMでは、FacebookやInstagramに総じてプラスの分析結果が出ましたが、「テレビCMにもっと投資すべき」のような、真逆のケースも考えられたわけです。それにもかかわらずFacebookさんは、私たちの事業の本質を解決するコンサルティングのようなご提案をくださり、とても嬉しかったですし、有意義な結果を得られたと思っています。

――では最後に、MMMの結果を踏まえた、次のアクションについて両社からお話ください。

石井:半年後に再度MMMを実施することを決めており、それまでの期間、新たなメディアミックスによるプロモーションを展開していく予定です。

 MMMを行ったことで、自分たちがアプローチしきれていなかった課題が認識でき、すべての行動はROIに対して行うべきだという発想に変わりました。さらに、データを基に再現性のある施策や仕組みを構築していくと、すべてがポジティブになっていくのではないかと考えています。

野崎:MMMで新たな示唆が得られたことは確かですが、今まで追ってきたKPIが間違っていたということではなく、ビジネスのゴールを達成する、よりベストな手段が明らかになったと捉えています。マーケティングチーム以外のメンバーにも、KPI見直しへの理解を深めてもらいながら、CPD7至上主義から脱した、広告収益の最大化へつなげたいと思います。

砂川:MMMは、オンラインとオフラインの施策を行い、KGIをベースに横断でROIを比較したいニーズに有効な手段です。そして、業界問わず、すべての企業に適しています。特にGunosyさんのようなアプリ業界でのMMMの事例はほとんどないので、今後より活用されていくことを期待します。

 とはいえ、野崎さんがお話されていたように、代替指標での計測が不必要なわけではありません。サードパーティの計測ツールによる日々のデータ分析と、半年~1年の周期でMMMによるチェックアップを併用し、より最適な予算配分を実現していただきたいです。

アレックス:Facebookは、利益貢献の観点でROIを意識したマーケティングへのシフトに力を入れており、今回Gunosyさんとこのようなお取り組みができたことは大変有意義でした。コロナ禍において企業は、これまで以上にシビアに利益確保を意識せざるを得ません。だからこそ、今後もROIベースのマーケティングに関心を持っていただくために、様々なご提案をしていきたいと思います。

――皆さま、本日はありがとうございました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • プッシュ通知を受け取る

関連リンク

All contents copyright © 2006-2020 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5