↓川添氏を迎えたWebセミナー「マーケティング戦略の大転換」第3回のダイジェストはこちら↓
“グレート・インドア”に寄与する商品が好調
次世代マーケターのためのコミュニティ「0 to Loyal~ゼロ トゥ ロイヤル」のWebセミナー、第3回はビジョナリーホールディングス執行役員 デジタルエクスペリエンス事業本部 本部長/ECエバンジェリストの川添 隆氏を迎え、以下の3つのテーマでディスカッションが展開された。
【1】Eコマースの見直しと再評価
【2】非接触経済の可能性
【3】試されるブランドパーパス
これらのテーマは、コロナ禍においてチーターデジタル ジャパン副社長兼最高マーケティング責任者の加藤希尊氏が十数名のCMOと対話し、今後の可能性として浮かび上がった課題の一部だ。
最初のテーマであるEコマースの見直しについて、加藤氏は米国のオムニチャネルに関するデータを提示する。それによると、オフラインの販売が急降下する中、4月の最初の週のオンライン売上は、1月の平均値に比べると233%も伸びていた。売れ筋も“グレート・インドア”と言われる、快適な自宅生活に役立つWebカメラやパジャマ、ペット用品やお菓子の材料、ゲームなどが人気だったようだ。
外出自粛中、メガネスーパーの売上を支えたサービスは?
では、川添氏がECとオムニチャネル推進を主導しているメガネスーパーでは、この時期どのような変化があったのだろうか。川添氏は「数年前から提供しているコンタクトレンズの定期便が奏功した」と話す。EC上でだけでなく、日頃から店舗でも案内していたこともあり、外出自粛が続く中でも安定的な売上を確保していたそうだ。
また、同社ではコロナ禍以降も「メガネやコンタクトレンズ、補聴器は生活必需品である」との考えから、一部を除いて店舗営業を継続していた。その傍ら、ECではまとめ買いの訴求をしたり、店舗とECの両方を活用している顧客にはアプリの利便性を案内するなど、これまでの活動をさらに強化したそうだ。こうした対応について加藤氏は、「平時から複数のオプションを用意していたからこそ、変化への対応が速かった」と紐解く。
そして川添氏は、Webセミナーのタイトルに掲げた「店舗が閉まればECが伸びるわけではない」のメッセージに触れ、店舗のロスをECだけで補うのは簡単ではないことを強調した。
「たとえば店舗の休業の影響が大きかったアパレル業界を見てみると、3、4月時点で前年比40~50%になるなどかなり苦しい状況です。EC全般の数字を見ると全体的に20~30%伸びていますが、アパレルのEC化率は15%程度なので、それが2割伸長しても全社では3%しか補完できない計算になります」(川添氏)
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EC伸長で生まれた課題にどう向き合うか
また、仮にECが伸びたとしても、実際にはオペレーションや配送などのキャパシティーに限りがある。川添氏は、オペレーションの内容によるのは大前提としても、平時の130~150%程度が許容量の限度ではないかと話す。
特にこのコロナ禍においては、店舗の休業や自粛要請によってリアル店舗での買い物が難しくなり、初めてECを試す人が多く見られた。いわば“EC初心者”が多かった点は、オペレーションに単なる利用増加以上の負荷をもたらしたようだ。
「私の聞くところでは、『本当に決済されたのでしょうか』『クレジットカード情報を入力しても大丈夫ですか』といった問い合わせが寄せられている、という企業もありました。カスタマーサポートの業務が急増し、相応の負荷がかかっていると思われます」(川添氏)
物流に関しても1日に出荷できる量は決まっているので、それを超えると配送が遅れてしまう。ECのすそ野の広がりと全体的な伸長は今後のビジネスに追い風だが、急激な変化によって浮かび上がった課題への対応も急務だろう。
ネット接客の取り組みにみる、非対面の可能性
話題は2つ目のテーマ「非対面の可能性」に移された。距離を取らなければいけない状況に各社がどう対応しているか、加藤氏は対象者別に分類したマトリクス図を提示した。
個人向けにこれまでオフラインで提供されていた接客やフィットネスなどは、バーチャルでの実施に。グループを対象とする飲み会や集まりについても、たとえばNetflixが離れた友達同士で作品を楽しめる機能をリリースするなど、各社がプランを提供し始めている。さらに展示会や卒業式といった大集団に対するイベントでも、バーチャル卒業式などが催されている。
こうした動きについて川添氏は、特に小売業で着手されているオンライン接客に注目し、コロナ禍以前の取り組みも含め紹介。アパレル業界ではブログやSNS発信、コーディネートの提案といった形で積極的に行われていたほか、昨今はLINEやZoomといったオンラインプラットフォームを活かしたインタラクティブな接客が増えていると指摘した。
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「平常時にどれだけチャレンジしていたか」が問われている
他にもオムニチャネル施策として話題になったのは、BEAMSのオンラインを通じた接客やコミュニケーションだろう。コロナ禍以前の段階でも、全国の店舗スタッフがSNSにコーディネートやショートムービーを投稿するなどの活動を続けてきた。コロナ禍においても、ライブコマースを開始したり、YouTubeのチャンネルを通してスタッフによる趣味の映画や料理などの紹介コンテンツを配信したりもしている。また、ZARAでは自粛要請によって通常の撮影が難しくなった状況下、モデルが自宅で撮影をして公式のクリエイティブに活用していた。
こうした活動を進められた企業と、そうでない企業の違いについて、川添氏は「危機に陥る前の平常時から、失敗も含めてどれだけチャレンジしていたか」と解説する。
「急に打席に立とうとしても、リスクが見えにくく右往左往してしまう。以前から数多く打席に立ってコンテンツを作り込んでいた企業は、スピードが速かった印象です。加えてZARAのように、ブランドの許容力もポイントですね。どこまでクリエイティブを保つべきかを日頃から決めているブランドは、速く動けます。コロナ禍を経て、日頃からのブランドの作り込みと、それを組織に伝達する重要性を私自身も再認識しました」(川添氏)
ブランドパーパスに基づいた活動になっているか
ブランドの作り込みやクリエイティブに対するスタンスは、ウェビナーの3つ目のテーマであるブランドパーパスにもつながる。「企業がとった行動は、ブランドがこれまで培ってきた価値観に基づいているのか、それは真に顧客のために形成されてきたものなのかが、まさに今問われていると思います」と加藤氏。チーターデジタルが支援している米国のランニングシューズ販売企業Fleet Feet(フリート・フィート)の例を挙げ、ブランドパーパスに沿った事業展開によってロイヤル顧客を育成できると述べた。
同社のブランドパーパスは「ランナーのインスピレーションとエンパワーメントの提供」。そのために、販売している商品の購入者だけではなく、ランニングに参加している人全員をリワードの対象にするロイヤルティプログラムを構築し、アプリを通じて提供したところ、9ヵ月で300万人の会員を獲得するに至った。
「走る距離、トレーニング回数、参加イベントの数などを計測可能にし、体験価値を通貨として、ロイヤルティ経済圏を確立しました。運動を通じて人々がつながり、社会的な欲求を満たす場を提供することで、会員のチャレンジ精神を促進したのです。売上の面で貢献してくれた顧客とのコミュニケーションに閉じるのではなく、熱心なランニングファンとのつながりを構築できた点がポイントです」(加藤氏)
さらにウェビナーでは、川添氏がブランドパーパスに基づく取り組みを紹介。メガネスーパーでは、平常時よりも外出が厳しくなったお客様のアイケアのために、車両型移動式店舗の稼働などを増やすなど、積極的な施策を展開してきた。同社はブランドの存在意義をどのように定義し、それをいかに浸透させているのだろうか。2社の事例を基にした、両氏からのアドバイスも明かされた。
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