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「人肌感」のあるコミュニケーション設計でCV400%増 オルビスのLINE公式アカウント活用術

 LINE公式アカウントにて約3,300万人の友だち数を有するオルビス。最近ではチャットコマースを連携し、顧客と双方向性のあるコミュニケーションを構築しているという。2013年からLINE公式アカウントに取り組み、運用ノウハウ・知見をもつ同社に新たなチャレンジを決意させたチャットコマース「Zeals(ジールス)」の特徴や活用方法を、オルビスとZealsに伺った。

オンラインのコミュニケーションにも「人肌感」を

――LINE公式アカウントにて約3,300万人のファンを抱えるオルビスさんですが、その運用目的について教えてください。また、様々なチャネルがある中でLINE公式アカウントは、どういった位置づけですか。

照井:LINE公式アカウントは、ユーザーとのコミュニケーション、そして新規顧客の獲得を目的として2013年から始めました。弊社は主要メディア全般を運用実施しておりますが、LINE公式アカウントは、他メディアに比べCPOを3割ほど抑えられている状態です。まだまだ新規獲得にも有益なメディア、かつ一度に多くのユーザーと触れ合えるメディアとして捉えており、LINE専任の担当者を付けて注力しています。

オルビス株式会社 マーケティング戦略部 新規戦略グループ 照井真規子氏
オルビス株式会社 マーケティング戦略部 新規戦略グループ 照井真規子氏

――今回チャットコマースを導入された背景についてお伺いできますでしょうか?

照井:長年LINE公式アカウントの運用を続けている中で、双方向的なコミュニケーションに課題を抱えていました。

 オルビスは、通販事業での電話応対をはじめ、人肌感のあるコミュニケーションを強みとしていますが、LINE公式アカウントにおいては全ユーザーに対して、同一商品の購買を促す配信を行っていました。しかし、そうした一方的なコミュニケーションでは、お客様が本当に求めるニーズにはお応えできません。

 このままではお客様との関係が薄れてしまうのではないか、LINE上でも店舗や電話のような接客を展開していきたいと考えていたときに、LINE社からシステムに強く、新しい取り組みができるベンダーさんをいくつかご紹介いただいたんです。そのときに初めてZealsさんのお名前をお聞きしました。

 また、様々なLINE公式アカウントのチャットコマースを拝見しているなかで、UIやUXといった観点から、とても上手に運用されている企業があり、どこが提供されているかをリサーチしたんです。その時に再度Zealsさんのお名前をお聞きし、ぜひ話を伺いたいとご連絡しました。お会いするとZealsさんの取り組みに対する姿勢に共感したことに加え、弊社への理解度、チャットコマースの精度の高さを感じたんです。昨年の11月頃にお会いしたのですが、その場で実施を決め、年末ぐらいには動き出しましたね。その後、1月にはローンチできました。

――すごいスピード感ですね。チャットコマースとは、どういったサービスなのでしょうか。

遠藤:チャットコマースとは、LINEやFacebook Messengerのようなメッセージアプリ上で、ユーザーとAIチャットボットのコミュニケーションを通じて、サービスの提供や販売を行うサービスです。

 たとえば、百貨店のコスメ売り場では販売員の方が「何をお探しですか?」「肌のお悩みはありますか?」などと、お客様の悩みをヒアリングした上で商品を提供しますよね。チャットコマース「ジールス」ではこうした接客体験を、オンライン上でも実現します。

株式会社Zeals COO 遠藤 竜太氏
株式会社Zeals 取締役COO 遠藤 竜太氏

遠藤:私たちが設計するチャットコマースには、最初にチャットボットに触れてくれたユーザーさんに対して、「あなたのお肌の悩みを教えてください」「あなたの何がどの程度気になっていますか」といったように、課題やニーズを必ずヒアリングするように設計しており、これを「ヒアリングファースト」と呼んでいます。具体的には、ユーザーにとって魅力的で心地良いコピーや会話文を考案する“UXライター”と呼ばれる職種の社員たちが、コミュニケーションを設計。それぞれの企業様の商材や課題に合わせた、チャットコマース活用の提案から実際の運用まで、一気通貫でサポートを行っています。

 オンラインでの購買を促すコミュニケーションは、企業の一方的な情報発信になってしまいがちですが、得られた会話データを基に、「この人にはこういうコミュニケーションを当てよう」「こういうコミュニケーションを継続的に行っていこう」といった双方向性のあるコミュニケーションを実現するのがチャットコマースです。

――「双方向性のあるコミュニケーション」にこだわってサービスを提供されているんですね。

遠藤:私たちはそれがユーザーエクスペリエンス(UX)のあるべき姿だと考えています。オンライン、オフラインを問わずお客様の課題に合わせて商品のご提案や使用方法を指南する。昨今はそんな購買体験が求められているのではないでしょうか。

顧客の悩みの顕在化が成果につながる

――オルビスさんは、実際に「ジールス」をどのように活用されていますか。

照井:LINE公式アカウントとは別立てで、チャットコマース「ジールス」を取り入れたスキンケアチェックのアカウントを設けています。これは、簡単な質問に答えるだけで肌タイプを診断、それぞれのお客様に合った商品をお勧めするというもので、公式アカウントのリッチメニューからスキンケアチェックのアカウントに遷移することができます。

タップで拡大
タップで拡大

照井:スキンケアチェックでは、既存顧客様のクロスセルを狙った商品紹介はもちろん、新規顧客の獲得を目的に、トライアルセットの訴求を行っています。公式アカウントとスキンケアチェックのアカウントを連動させた体験により、既存のお客様にはよりオルビスを好きになっていただけて、新規のお客様には潜在的な悩みを自分事化してもらうことで、オルビスに興味をもっていただけたのではないかと思います。この取り組みから1ヵ月でCV数が約160%増、3ヵ月後には約400%にまで伸びました。

――右肩上がりで伸びていますね。CVが大きく増加したポイントはどこにあるのでしょうか。

照井:LINE公式アカウントからの導線の他に、LP離脱のポップアップ誘導をいれたり、他スキンケアアカウントからのプッシュ配信も行いました。また、テレビCM内でスキンケアチェックについて言及したところ、多くの方にご利用いただけました。

 CVに至った理由としてはやはり、「ジールス」のUXライターさんと綿密に相談して決めたコミュニケーション設計です。具体的には、普段お客様が気にしないようなこともあえて質問して、肌の悩みを顕在化させました。ただ一方的に「この商品良いですよ」と押し売りするのとは違ったコミュニケーションが取れたのではないでしょうか。

遠藤:お客様の悩みを顕在化させるためのポイントは、選択式会話を採用したことです。自由に会話できる形式だと、そもそも自分がどういった課題を抱えているのかがわからないので、何を答えたら良いかもわかりませんよね。どういった問い、選択肢を用意すれば、より良い体験を提供できるか、UXライターが緻密に設計しています。

――よりリアルな接客体験を構築しているんですね。ところで、スキンケアチェックをLINE公式アカウントとは別立てにされたのにはどういった理由があったのでしょうか。

遠藤:LINE公式アカウントは、洗練されたクリエイティブによる発信で、既にオルビスの世界観が醸成されていました。その世界観を壊さないようにするとともに、ユーザーにとっても、情報を受け取るチャネルとコミュニケーションを行うチャネルを切り分けたほうが良いのではと、ご提案する運びになりました。

チャットコマースは運用型広告以上に繊細?

――チャットコマースの導入で苦労した点はありましたか。

照井:コミュニケーションロジックを組む部分は苦労すると想定していました。というのも、弊社は既にECサイトのサービスQ&Aを、LINE公式アカウント内でチャット機能を利用し展開しており、ロジックの膨大なデータ量を存じ上げておりました。そのため、自社で運用していけるかが懸念点でした。

 しかし、既にお話しているとおり、Zealsさんはこのような枠組みからサポートしてくださいました。プロダクトの提供のみを行う企業様だったら、今のリソースでは難しいと判断していたと思います。

遠藤:チャットコマースは運用がとても大切です。一度コミュニケーション設計を行えば、いきなり良いパフォーマンスが出るわけではなく、運用型広告と同様にABテストを繰り返していくことが必要なんです。質問の順番や語尾を入れ替えるだけで、エンドユーザーが受ける印象が変わるので、条件にあった良いシナリオを構築していく。もしかしたら、運用型広告以上に繊細で、正解がわかりにくい側面があるかもしれません。

 それをサポートする「ジールス」のUXライターは、通販、コスメ、人材、金融チームなど、業界ごとに分かれていて、各チームがそれぞれにあったコミュニケーションに精通しています。最初のロジック設計は、細かいディスカッションを行いながら構築し、その後も企業と並走して運用をサポートする形です。

 余談ではありますが、絵文字の使い方も非常に奥深くて、ある業界では最適なコミュニケーション設計でも、違う業界を担当しているUXライターからは「この絵文字は使わないほうがいい」といった声が挙がります。ターゲットごとに刺さる絵文字は異なるんです。「!」の付け方一つとってもそうです。一見些細なことではありますが、この判断一つでパフォーマンスは大きく変わってきます。

「ペルソナの深い理解」が質の高いコミュニケーションのカギ

――チャットコマースで質の高いコミュニケーションを行っていくポイントを教えてください。

遠藤:質の高いコミュニケーション設計を実現するには、ペルソナの深い理解が非常に大切です。そのために弊社ではまず、企業様と共にカスタマージャーニーを描きながら、ユーザーがどういった心理状態でアカウントにやってくるのか、どういった課題を解決できれば、購買へつながるのかを考えています。その上でチャットコマースがどのように貢献できるか検討し、サービスに落とし込んでいるんです。

 チャットコマースの良いところは、ユーザーがどういったことを考えているのか直接聞けること。その情報を基に、ユーザーがジャーニーのどの位置にいるかを把握し、より良いコミュニケーションを築くことができます。

――ペルソナの深い理解から、カスタマージャーニーを描くところまで、並走して取り組まれているんですね。では、今回のお取り組みの感想をお聞かせください。

照井:成果が既に出ているLINE公式アカウントでの新たなチャレンジは、後回しになっていました。そんな中、Zealsさんのチャットコマースの活用、アイデアの実装力、スピード感は大変ありがたかったですし、なによりCV400%増という成果も上がりました。Zealsさんと新たな試みができて良かったです。

遠藤:導入いただく企業様を、絶対に成功に導くというスタンスで展開しているので、こうしたお声を聞けて、とても嬉しいです。

 チャットボットというテクノロジーの活躍場所は未知数で、まだまだ成長過程です。エンドユーザーとの本質的なコミュニケーションのあり方を追求するチャレンジを、今後も企業様と共に行っていきたいと思っています。

既存ユーザーとの関係深化にも チャットコマース活用の可能性

――最後に、オルビスさんのLINE公式アカウントにおける展望についてお伺いします。今後、注力されていきたいことはありますか。

照井:Zealsさんのチャットコマースを活用しつつ、CRM観点での取り組みに注力したいと考えています。具体的には、スキンケアチェックの結果を蓄積できると良いですね。

 たとえば、スキンケアチェックの結果を蓄積してユーザーにもそれらの情報を開示していく。日記のような形で確認できるコンテンツがあったら、デイリーでアクセスするユーザーも増えるのではと想定しています。

 肌に悩みを抱えるお客様がスキンケアチェックを定期的に行いながら、オルビスの商品を活用する中で「肌の調子が良くなってきたかも……」と実感いただく。そんな体験をオンライン上でも提供していきたいです。

――遠藤さんは、チャットコマース「ジールス」をどのような企業に広めていきたいですか。

遠藤:「ジールス」は、リアルの接客体験をオンラインで展開していくものです。

 照井さんもおっしゃった通り、CRM観点で既存ユーザーに向けて良い体験を作るのは、チャットコマース活用の大きなポテンシャルです。

 実際に、人材、教育、サロン、金融といったような、幅広い企業様にご利用いただいていますが、商品や商材を売るだけでなく、エンドユーザーとのコミュニケーションを良くしていきたい企業様であれば、ご活用いただけるのではないでしょうか。

 今後、Zealsでは、UXライターが行っているコミュニケーションデザインの一部にAIを活用していこうと考えています。今まで蓄積された約3.5億の会話データを統合して、ユーザー一人ひとりに合った内容や、その人の性格にあったコミュニケーション方法、たとえば語尾を少し柔らかい表現にするなど、人的運用の限界を超える仕組みを作ろうとしています。

 こうした取り組みを進めつつ、従来オフラインで実施されていた接客をオンライン化させることにも力を入れて、接客体験に課題を抱える企業様の接客デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援できればと思います。

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この記事の著者

丸山 真希枝(マルヤマ マキエ)

フリーライター。IT・Web業界を中心に100社以上のボードメンバーへの取材を行う。起業・マーケティング・クリエイティブなど幅広いトピックスを担当。趣味はヨガと瞑想。体幹と柔軟性を強化中。

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MarkeZine(マーケジン)
2020/09/24 18:12 https://markezine.jp/article/detail/33945