CTR&CPCが大幅改善したカルーセル広告
MarkeZine編集部(以下、MZ):今回の取材では、2020年11月に新たなフォーマットとしてリリースしたカルーセル広告について、グローバルでカルーセル広告の市場導入をリードしている犬飼さんに話をうかがいます。まず、今回リリースしたカルーセル広告がどのようなものか教えてください。
犬飼:カルーセル広告は、タイムラインを縦スクロールで見るTwitterの中で唯一横方向にスワイプして続きを見ることができる広告フォーマットになっています。画像やビデオを複数用意して広告を配信するため、通常の広告よりも豊かな表現が可能になっています。
カルーセル広告自体は、MarkeZine読者の方であれば他のプラットフォームなどでも利用したことがあると思いますが、Twitterではこれまで試験的な提供のみとなっておりました。しかし、度重なる検証を続けた結果、非常に高いパフォーマンスが発揮できるようになったため、2020年11月に正式リリースさせていただいた形となります。
MZ:高いパフォーマンスが発揮できるようになったとのことですが、通常のフォーマットに比べてどの程度パフォーマンスが向上したのでしょうか。
犬飼:ベータ版のデータでは、単一メディアカードと比べて15%CTRが向上しました。さらに、日本市場の2021年1月の全案件の平均を比較したところ、アプリインストールやウェブサイト誘導など目的によって異なりますが、カルーセル広告によってCTRは26%から73%向上、CPCは15%から30%低下していたことがわかりました。
カルーセル広告のクリエイティブに必要な3つのトリガー
MZ:CTRが73%向上はすごいですね。通常のフォーマットに比べて、カルーセル広告が非常に強力なことがわかりました。
犬飼:ただ、グローバルに目を向けるとここまで数字が良くなっているわけではないんです。というのも、日本ではカルーセル広告が既に様々なプラットフォームで受け入れられていることもあり、非常にクリエイティブのクオリティが高いんです。他国では商品画像を並べるだけというケースもある中で、国内の広告主様や広告代理店様がクリエイティブの創意工夫を行っているからこそ、これだけの高いパフォーマンスが生まれています。
MZ:カルーセル広告では、クリエイティブが効果を大きく左右するということですね。では、実際にどのようなクリエイティブを作れば良いのか教えてください。
犬飼:今回の記事では、Twitter利用者がカルーセルにエンゲージする3つのトリガーをご紹介したいと思います。具体的には、「1.スワイプできることに気づく」「2.スワイプをしたくなる」「3.CTAを押したくなる」の3つのトリガーを押さえてクリエイティブを用意することが重要です。
ここからは、それぞれのトリガーを発動させるためのクリエイティブのヒントを紹介したいと思います。
スワイプできることに気づかせる3つの方法
犬飼:1つ目のトリガーである「スワイプできることに気づく」を発動させるために必要なことは「カード2枚目の色に注意する」「スワイプを促すビジュアルキューを入れる」「ビデオの場合はカード1枚目のビデオを短くする」の3つです。それぞれのポイントについて解説します。
1.カード2枚目の色に注意する
まず、Twitter利用者の方にタイムラインに流れている広告がカルーセル広告であることに気づいてもらうために、2枚目のカードの左端を目立たせることで視認させることが重要です。Twitterアプリでは白・ダークブルー・黒の3種類の背景色を設定できるため、それらの色は避けて目立つ色を選択することが求められます。たとえば、コミックアプリを展開する企業様は、マンガのコマの枠線に色を付けることで目立たせていますね。
2.スワイプを促すビジュアルキューを入れる
1枚目と2枚目に重なる形で矢印のマークやイラストなどのビジュアルキューを入れるのも1つの手です。この方法は2枚目以降も非常に有効です。複数枚にわたりつながっているように見えるクリエイティブを作るのも、スワイプを促す上では非常に有効と思われます。
3.ビデオの場合はカード1枚目のビデオを短くする
ビデオカルーセルには「オートアドバンス」という機能が備わっています。同機能により、各カード内でのビデオ再生が終了すると次のカードのビデオが再生されるようになっています。そのため、Twitter利用者の方はスワイプをせずとも複数のカードを見ることができます。
そして、この機能を最大限に活かすためにも、1枚目のカードのビデオを短くすることが効果的です。短くすることで、2枚目以降に続きがあることを効果的にアピールすることができます。
MZ:ちなみに短くとは、何秒くらいのビデオが良いのでしょうか。
犬飼:上手くいっている企業様の事例を見ると、6秒以下であるケースが多いですね。ずっと6秒以下のビデオで構成しているところもあれば、1枚目だけを数秒と極端に短くして、続きを見てもらうところもあります。
スワイプしたくなるおすすめの構成とは
犬飼:では、続いて2つ目のトリガーである「スワイプしたくなる」を発動させるための方法ですが、カードの構成を意識することが重要です。ここでは、カルーセル広告でおすすめの構成として、「ストーリー」「使い方(遊び方)・操作方法」「特長・効用・キャンペーン」「商品写真・キャラ一覧」の4パターンを紹介します。
1.ストーリー
カルーセル広告はストーリーを順序立てて見せるのに最適なフォーマットだと思っています。マンガアプリ・サービスを展開する企業様はストーリーの一部をカルーセルで見せることで、その先に興味を持った利用者をWebサイトやアプリに誘導しています。
また、ゲームアプリや映画・ビデオ配信においても、テンポ良くストーリーの序盤をカルーセル広告で見せるというような応用が可能です。
2.使い方(遊び方)・操作方法
主にアプリの使い方について、順を追って説明するカルーセルを作ることで、インストール前からそのアプリの利用イメージを喚起し、見込みの高いアプリユーザーにインストールを促すことができます。
ビデオを使う場合は、サウンドオフで見ることを想定し、音だけでなく字幕などでもアピールポイントを伝えると良いでしょう。
3.特長・効用・キャンペーン
商品やサービスに有力なアピールポイントが複数ある場合は、それぞれの特長をカードごとに記載してその魅力をアピールすることをおすすめします。この場合、1枚目に最もターゲットが魅力に感じるであろうカードを持ってくることが効果的です。
また、種類やバリエーションの多さが特長としてある場合は、取扱商品の一覧を各カードに載せることで訴求することもできると思います。
4.商品写真・キャラ一覧
ECを展開する企業の多くで採用されているのが、商品写真をカルーセルで見せる方法です。取り扱う商品からおすすめのものをいくつかピックアップして見せることができるので、商品ラインナップの多いECには非常に適しています。
また、この方法でカルーセル広告を活用して成果を上げているのは、ラグジュアリーブランドとゲームアプリです。前者に関しては、ブランドの世界観を統一して伝えるべく、文字で伝えるべき情報はツイート本文に入れ、テキストなしの商品画像を複数入れています。後者に関しては、たとえば推しキャラクターの未公開ビデオをカルーセルで次々に紹介することで、既存ファンのリエンゲージメントを図っています。
目的に合わせたCTAの置き方を
MZ:では、最後のトリガーである「CTAを押したくなる」についても解説をお願いします。
犬飼:最後のCTAに関しては、CTAを入れるカードの位置を工夫することです。具体的には「最後のカードにCTA」「全てのカードにCTA」「敢えてCTAを入れない」という3つの方法が存在します。
1つ目の「最後のカードにCTA」に関しては、先ほど紹介した「ストーリー」や「使用方法」など、順を追って全てのカードを理解してもらう構成に最適な方法となっています。カルーセル広告を通じて情報を得た上でLPやアプリストアに遷移するため、利用者のCVRが高くなることが期待できます。
2つ目の「全てのカードにCTA」に関しては、「特長・効用・キャンペーン」「商品・キャラ一覧」のようにカルーセル内のカード順序を入れ替えても成立する構成におすすめの方法です。どのカードにもCTAを置くことで、特定のカードが気になった段階ですぐサイトやアプリストアに遷移でき、多くのコンバージョンにつながると考えています。
3つ目の敢えてCTAを入れないのは、少しイレギュラーなケースです。たとえば、ラグジュアリーブランドなどブランドの世界観を大事にする場合、CTAのメッセージは敢えて入れないケースも多いです。ただ、基本的にはCTAを入れることをおすすめします。
今後もさらなる追加アップデートを
MZ:今回3つのトリガーへの対策を教えていただきましたが、その他に良いクリエイティブを用意するためのポイントはありますか。
犬飼:たとえば、一般的には画像サイズは1対1の正方形にすることをおすすめしています。カルーセル広告では右端に次のカードを見せるため、通常のカードフォーマットに使う横長画像・ビデオを入れてしまうと、小さく表示されてしまいます。
また、カルーセル広告のツイート本文を長くしすぎないことも重要です。長くしてしまうとスマートフォンの画面内に全ての要素が収まらなくなってしまいますので。
MZ:カルーセル広告を効果的に活用するヒントがよくわかりました。犬飼さん、ありがとうございました。最後に、今後の展望を教えてください。
犬飼:2020年11月にカルーセル広告を無事リリースできましたが、これで終わりではなく今後もより良いパフォーマンスを発揮するためのアップデートを予定しております。また、カルーセル以外にも新しい広告フォーマットを提案していきたいと考えています。
そして何より、日本の広告主様と広告代理店様の声はプロダクトを改善する上で非常に貴重だと考えています。今後もカルーセル広告をはじめ、Twitter広告に対するご意見・ご要望をお寄せいただけると幸いです。