購買のカギとなるマジックナンバーの求め方
サービスの現状を把握したところで、次に取り組んでいくのは、「即効性のある売り上げ向上施策の提案」だ。しかし、流入元の違いによるパフォーマンスへの影響が少なかったことから、マーケティング予算の再配分による売り上げ改善は難しいと判断し、既存ユーザーからの売り上げ向上を検討することに。
そこでユーザー行動を分析して特性を理解し、その中から売り上げ向上につながる資産を求める手順を、米田氏が解説した
今回のケースでは、売り上げ向上の可能性として「課金率」に注目し、その向上を図るべく、現時点の既存ユーザーの課金率を把握していった。
【判明したこと】
・過去12ヵ月のユニーク数 約355万人
・過去12ヵ月で課金したユニーク数 約98万人
・過去12ヵ月で課金しなかったユニーク数 約257万人
・課金率は27.7%(72.3ポイントの伸びしろ)
・課金率が1%向上すると、年間約35万人の購買ユーザー増加
・ARPPU(ユーザー1人あたりの平均課金額)が100円の場合、年間3,557万円以上の売り上げ増加見込み
・ARPPU1,000円の場合、年間3億5,500万円以上の売り上げ増加見込み
すなわち既存ユーザーの売り上げ向上施策からは即効性があり、高い経済効果の可能性があることが判明した。
次のステップでは、過去のログデータを使って、ユーザーのどのような行動が課金につながっているかの示唆出しを行っていく。まず集計から直近2ヵ月のWAU推移と購買ユーザーの推移を確認すると、WAUは約28万、ウィークリーの購買ユーザー数は17万人で、どちらも横ばい。
合計ユニーク数は、過去2ヵ月で約80万人、そのうち約30万人が購買に至っており、直近2ヵ月の購買率は38.5%、61.5ポイントの向上余地があることがわかった。
続いて「楽曲の再生をしたことがある人は購買率も高い」という仮説を立てて検証したところ、「週1回以上楽曲を再生しているユーザーは全ユーザーの購買率と比較して、10ポイント以上の向上があること」が判明。
再生回数を増やしてみると、週20回再生の場合は78.3%とより高い購買率であったが、再生数が週50回以上の場合は、全体ユーザーよりも数値が低いという結果になった。
そこで「再生アクション×回数」で最も購買率を上げる組み合わせ、すなわちマジックナンバーを検証していった。通常であれば大変な労力がかかるが、Amplitudeの分析チャートを使うと即座に求められる。
まずは、「新規ユーザーが30日以内に購買に至るまでのマジックナンバー」を求めていく。はじめに対象を「新規ユーザー」、目標コホートを「直近30日以内に購買するユーザー」に設定。集計結果は数秒で導き出され、管理画面には相関関係のあるアクションが相関スコアの高い順に列挙された。
その結果、最もスコアが高かったのは「プロファイルの編集・変更」。詳細を見ると4つにユーザーを区分し、相関関係スコアを求める代表的な6つの公式にあてはめ、その区分ごとに数値を算出している。
なお今回の場合、アクションを1回実行した場合の相関スコアが最も高いものとなったが、これをAmplitudeでは2回、3回……と回数ごとに計算して求め出す。
つまり今回のケースでは、「プロファイルの編集・変更を7日間で1回実行した人たち」がマジックナンバーだと発見された。