Withコロナで求められるグロースの考え方
新型コロナウイルスの影響により、コミュニケーションは対面中心からオンライン中心に、また外食やイベントなどの大勢多数での交流からECやデリバリーなど最少人数での交流へシフトするなど、行動様式や生活様式が大きく変わっている。そのため、生活者の今を捉えて深く理解し、寄り添わなければ生き残れない時代になった。
「その中で求められるのが、グロースマーケティングである」と語るのは、アプリ開発をはじめデジタルマーケティングの推進を一気通貫で支援するロケーションバリュー(2021年4月にDearOneに改称)の橋川氏だ。
グロース自体は、新型コロナウイルス以前から重要性が高まっていた。従来は完成した製品を広告で訴求し消費者に届ける、プロダクトアウトの考え方が中心だった。しかし様々な手段や技術の発達によって、顧客との継続的な関係構築が可能になり、顧客の声や市場の状況を踏まえて製品をブラッシュアップするプロダクトグロースの考え方が求められる時代になってきた。
橋川氏は、このプロダクトグロースが体現できている企業として、モバイルバッテリーや急速充電器、オーディオ製品、最近では高機能ロボット掃除機やスマートプロジェクターなどを展開しているAnkerの名前を挙げた。
「Ankerは、元々カスタマーセンターでの対応を非常に重要視していて、カスタマーセンターで得られた声をモバイルバッテリーの改良に素早く活かして、市場を一気に拡大しました。このように、発売した製品をより良くして市場にフィットさせていくような形をとっていく必要があります」(橋川氏)
グロースマーケティングが注目される3つの理由
では、なぜ新型コロナウイルスの影響を受けている現在、グロースマーケティングに注目すべきなのだろうか。その理由に関して橋川氏は「移り変わる時代に対応するためにグロースマーケティングが最適な手法であるから」とした。また同氏は、世の中の移り変わりの代表的なものとして、「広告の変化」「人々の変化」「テクノロジーの変化」の3つを挙げた。
まず広告の変化に関しては、インターネット並びにスマートフォンの普及にともない、インターネット広告の成長が著しく、またテレビCMをはじめとしたマス広告のあり方が変化している。
続いて、人々の変化に関しては橋川氏が「消費者行動が複雑化し、把握するのが難しくなっている」と語るように、企業側のイメージと異なる商品の使い方が広がっていくケースが増えている。橋川氏はコックシューズを例に挙げ、「レストランの従業員がキッチンで履く用途で使っていたものが、雨の日に女性が履いている様子がSNSで話題になり、想定してなかった使われ方をされるようになった」と、これまでのマーケティングでは考えられなかったようなリーチの仕方が生まれたという。
最後にテクノロジーの変化に関して橋川氏は「商品ライフサイクルの短命化」「市場実態に合わせた商品開発」の2つを挙げた。商品ライフサイクルが短くなることで製品開発のスパンも短期化。そして、ゴールを決めて開発するウォーターフォール型の開発から短い期間でテストを繰り返しながら調整していくアジャイル型への開発へと変化していった。
橋川氏は「これらの変化に対応していくための最適な手法としてグロースマーケティングが注目されるようになった」と解説した。
グロースマーケティングに欠かせないデータ利活用の4ステップとは?
橋川氏は続けて、グロースマーケティングを実現するための方法論について解説した。
まず、前提として求められるのは行動軸でユーザーを把握・理解することである。これまでは性別や年齢、職業といったデモグラフィック変数、そして趣味、嗜好などのサイコグラフィック変数がユーザー理解に使われてきた。しかし橋川氏はこれに加え、「カート落ち後の行動」「店舗来店前の行動」などの行動変数を見ることが重要であるとした。
「新型コロナウイルスの影響で、ユーザーの行動が大きく変わってきています。それを考慮すると、行動変数を見ないでユーザー理解することはできません」(橋川氏)
そして橋川氏は、この前提のもと「データ活用における4ステップをいかに早く回せるかが勝負」であるとした。
「データ活用における4ステップはためる・整える・分析する・つかうの4つです。世界のトップ企業のほとんどはこの4ステップのサイクルを高速で数多く回しています。このサイクルをいかに速く多く回すかが、企業の成長のポイントとなるわけです」(橋川氏)
4ステップで一番重要な分析を支える「Amplitude」
さらに橋川氏は、この4ステップの中で最も重要かつ時間を要する部分として「分析する」ことを挙げ、分析を高速かつ精緻に行うためのツールとしてAmplitude(アンプリチュード)の名前を挙げた。
Amplitudeは米国発のユーザー行動分析ツールで、ロケーションバリューは国内唯一のプレミアムパートナーを務めている。既に様々な業種・業態の40,000以上のサービスに導入されており、Fortune100中27社が導入しているという。
なぜAmplitudeがこれだけ数多くのサービスに導入されているのだろうか。橋川氏はAmplitudeの一番の特長として「顧客行動軸での分析が可能な点」を挙げた。
「Amplitudeは、購入後のFTUX(First Time User Experiences)向上、ロイヤル化、LTV/リテンション向上に強みを持っています。なぜならロイヤルカスタマーが辿った行動の軌跡の把握や、ユーザー定着の鍵となるマジックナンバー検出の補助などが可能だからです」(橋川氏)
EC企業のAmplitude事例が明らかに
続いて、講演の中ではAmplitudeを活用した事例の紹介が行われた。紹介されたEC企業では、商品をカートに追加した後のカゴ落ち(カートに入れた後に離脱すること)に課題を感じていた。
プロダクトによっては9割近い離脱率となっていたため、Amplitudeを用いてその原因を探ってみた。すると、カゴ落ちユーザーは3回前後、購買ユーザーは13回前後と商品のカート投入回数に大きな差異があることが判明。さらに13回以上と未満では購入率も4倍近く違ったことから、この企業では商品カート投入回数「13回」をマジックナンバーとし、施策を立案したという。
この事例に関して橋川氏は「Amplitudeを用いずとも、データサイエンティストであればこのマジックナンバーを導き出せたはず。しかし、分析官でないマーケターがこの数字を出せたことが、この事例の特徴的な点」とした。
さらに、ECサイトと実店舗を持つ企業の事例も橋川氏は紹介。この企業では、1人当たりの平均購入回数を増加させるため、ECのデータとPOSデータを連携してAmplitudeで分析。ECの中でも購入回数が2回以上と1回以下のユーザーにグルーピングしたところ、2回以上の購入者が「ECサイトのホーム画面で新着アイテムを見る回数が多い」ことがわかった。そして、この分析結果をもとにホーム画面で新着アイテムを見ていない人に対してプッシュ通知を送る取り組みを行った。
このように、行動データを軸としたグロースマーケティングに欠かせない分析を、Amplitudeでは行えるという。
分析結果を施策に活かすのも簡単に
最後に橋川氏は、実際にAmplitudeの画面を用いたデモンストレーションを実施した。Amplitudeのホーム画面には「イベント」「ユーザー」「チャート」の3要素がある。
まず「イベント」は、各ユーザーの行動に関するデータを見ることができる。次に「ユーザー」は属性軸はもちろん、行動軸でユーザーを指定することが可能になっている。たとえば、音楽配信サービスで「楽曲を購入した人」など、行動軸でユーザーを区切った分析も行えるのだ。そして「チャート」では「イベント」や「ユーザー」で設定した要素をわかりやすく視覚化してくれる。
分析した後のデータを施策に活かす際も、SalesforceをはじめとしたAmplitudeとのプラグインで接続できるツールはAmplitude上ですぐにデータ連携することができる。また、対応していないツールに関しても、CSVでダウンロードして施策に活かすことが可能だ。
この他にも様々な機能を紹介した橋川氏は、最後にAmplitudeが実現してくれること・そしてロケーションバリューが提供する価値について語り、セッションを締めくくった。
「Amplitudeを活用することで、データに基づいたOODAループ(Observe、Orient、Deside、Action)を高速に回すことが実現できます。特に分析による状況理解・判断に時間がかかってしまう企業が多いので、ここを素早く行うことをおすすめします。そして、ロケーションバリューはAmplitudeでの分析はもちろん、データをためる、整える、つかう部分を様々なツールと人材でサポートしますので、データ周りで課題を感じている方はぜひご相談ください」(橋川氏)