単純な安さではない、価値提供が必要
高橋:「2020年、新型コロナウイルス(以下、コロナ)の流行によって様々な変化があった。」これはよく聞く言葉ですが、具体的に各社どのような変化が合ったのでしょうか?事前にパネラーの皆さんには次のような短いフレーズをご用意いただいています。それぞれ詳しく伺えますか?
- 小室氏:バリューの変化/デリバリーの強化
- 成田氏:商品起点(既存市場)からの脱却
- 米増氏:激変!withマスク時代のメイクスタイル
小室:度重なる緊急事態宣言や感染拡大など世の中が不安定で、誰もが先行きに不安を抱いています。そのため自然と財布の紐も固くなり、お買い得感が求められるようになりました。だからこそ、単純に安さだけではなく「バリューフォーマネー」が重要で、マーケティングでもそこを強く意識しています。
お客様の変化としては、期間限定商品より定番商品が選ばれることも多いです。冒険するよりも、既に知っている味を安心して召し上がりたい方が増えたのかもしれません。
また、安全・安心の面から、短時間で店舗に人が集中するような施策を避けています。たとえば毎月28日は「とりの日」で、特別なオファーを出しています。セールスとしては重要ですが、状況を鑑みて2020年5月は実施を中止しました。
高橋:デリバリーについてはいかがですか?
小室:デリバリーへのニーズは2020年4月頃から顕著です。コンタクトレスが求められていると強く感じます。弊社は元々テイクアウトのニーズが高く、売上の6割以上が店舗外での飲食ですが、デリバリーについては現在も対応店舗を増やしているところです。
また、デリバリーには自社デリバリーと代行業者の2種類があります。前者についてはUIを使いやすくして、ドロップアウトを極力防ぎ、システム的に安定させる取り組みを実施しています。後者では共同プロモーションをしたり、配送料無料クーポンを提供したりしています。これはデリバリーをやっていることを伝え、トライアルの機会を作るためです。
義務から、自己演出に変えていく
成田:やはり、生活スタイルの変化が大きいですね。在宅勤務や巣ごもりなど、外出する機会が減りました。つまり、他人の目を気にすることが減ったとも言えます。男性の場合、髭を剃るのは義務的な作業であることが多いですから、髭を剃る機会自体が減った人も多いかと思います。小室さんも言うとおり、みなさん出費に慎重になっていることも相まって市場はシュリンクしました。
一方で外に出られない分、自分自身に目が向かうことも増えています。ですから、「シェービングは義務」という考えから、「自己演出のツール」に脱却させて新しい市場を作っていく必要があると考えています。
たとえば、単に髭を剃るのではなく似合うデザインに伸ばそう。マスクをすると目や眉に視線が向かうから眉を整えよう。そのようなメッセージで需要を喚起して、ボディーグルーミングの習慣を男性にも定着できればと考えています。
高橋:そうなると、CMやキャンペーンも変えていったのですか?
成田:TVCMはどこのメーカーも似たことしか言ってきませんでした。「5枚刃」「深剃りできる」「肌に優しい」。機能的な満足ばかりです。商品起点による売り手視点での奪い合いから脱却して、顧客視点で新しいマーケットを作ることが重要だと思います。お客様にウェットシェービングを通じてワクワクする楽しさをお伝えしたいと考えました。
ですので、CMも心的な満足を訴えるものに変えました。男性の髭は綺麗に剃ることと同時に、髭のスタイリングを楽しむことをご提案しました。コロナ禍で皆さんマスクをしている方が多いと思いますが、「マスクを取った時に髭のあるなしよりも、身だしなみとして整った髭だとすごく素敵だと思うので、是非Schickのカミソリで整えて、自分のスタイルを探してみてください!」と髭を楽しむ全ての人にメッセージを送りました。
男性のみなさんが、「髭を自由に楽しむ」ことをそっと勇気づけてくれる、そんなCMになったのではないでしょうか。