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消費者調査からひもとく生活の変化

2021年、コロナ禍を経て消費者に起きている行動の変化とは?

「コロナ禍によって、人々の生活が変わった」という表現はこの1年で何度も目にしてきました。実際に、変化を感じてもいます。では、具体的にどのような変化が起きているのでしょうか? 生活現場で起きている「変化」に注目し、15年間で約1万人の消費者心理を分析してきた犬飼江梨子氏が消費者調査で得たデータを元に解説していきます。

消費行動を変化させる4つの要因

 私は、消費者の心理・購買行動を分析する中で、「変化」にひときわ大きく注目をしています。ヒットする新商品を開発するヒントも、商品をリニューアルして売り上げを伸ばすヒントも、消費者の変化に隠されていることが多く、「変化」には大きなビジネスチャンスがあるからです。

 まずは、なぜ消費者の行動に変化が起きるのか、その要因について考えていきましょう。消費行動に変化が起きる要因は、「環境の変化」「社会・経済の変化」「人口動態の変化」「テクノロジーの変化」の大きく4つがあります。

消費者行動に変化を起こす4要因
消費者行動に変化を起こす4要因

 「環境の変化」は、新型コロナウイルスの流行、地震・洪水・台風の増加、気温の上昇等があがります。特に、近年の環境の変化は著しいものがあり、普段の生活にまで影響を及ぼしております。SDGsの策定によっても、人々の環境意識は徐々に高まってきていると言えるでしょう。

 次に、「社会・経済の変化」ですが、こちらは女性の社会進出による共働き世帯の増加や働き方改革、最近だとリモートワークの普及があげられます。「人口動態の変化」では、少子高齢化の加速、世帯人数の減少、単身世帯の増加が進んでいます。「テクノロジーの変化」については、SNSやスマートフォンの普及が代表的です。テクノロジーの進化・普及は私たちの情報収集や購買行動を大きく変えることになりました。

 これらの要因が、消費者の価値観に影響を与え、行動にも変化が起きていきます。消費者リサーチをしていると、世代ごとに見た時に、価値観に明確な違いがみられます。その人がいつ・どんな時にこれら4つの変化を体験したかによって、形成される価値観が変わるのです。

 最近はZ世代に注目が集まっていますが、これは将来の経済活動・購買行動を支える若い世代に注目することにより、社会全体が変化していく方向性が見えてくるためです。企業が今後のビジネスの方針を考える上でも、新しい世代の価値観を把握することはとても重要なことだと言えます。

この10年で変化した消費行動とは?

 具体的に消費者の行動は、どのように変化してきたのでしょうか。まずは、総務省統計局家計調査(家計収支編)における「二人以上世帯の支出金額」から過去10年間のデータを比較し、変化を読み取っていきたいと思います。

 データは2020年の変動が顕著なためそちらに意識が向きがちですが、まずはこの10年での変化について考えます。

出典:統計局家計調査(家計収支編)「二人以上の世帯 品目分類:支出金額」(2011年~2020年)クリックで拡大
出典:統計局家計調査(家計収支編)「二人以上の世帯 品目分類:支出金額」(2011年~2020年)クリックで拡大

 データをみると、世帯人員が減少傾向にあるにも関わらず、「食料」の割合が年々増加し、2011年と比べて2020年には約10,000円増えていることが分かります。また、「家具・家事用品」「保険医療」「通信費」も10年で2,000円程度増えていることから、増加傾向であるといえます。

 その一方で、「被服及び履物」や「交際費」に対しての消費は減っています。特に、「交際費」は10年前と比べて、8,000円もダウンしており、その減少は著しいものとなっております。

 ここから何が読み解けるでしょうか?

家で過ごす時間やモノを大切にする意識の高まり

 まずこのデータから、次の2つの変化が垣間見えます。

  1. 外での活動よりも、家で過ごす時間に重きを置く傾向への変化
  2. 非日常よりも日常を大事にする、人々の意識の変化

 「被服及び履物」の減少については、安くて質の良いものを生産するようになった業界の変化に伴い、若年層を中心に、ブランドに限らず自分にとっていいと思うモノを選びたいという意識の高まりがうかがえます。自分らしさを重視して身に付けるものを選ぶ時代が訪れているといえるでしょう。

 また、環境意識の高まりがモノへの消費にも影響を与えています。近年、サスティナブルな取り組みを発信する企業が増え、消費者側の意識としても、いらなくなったモノを捨てずにリサイクルする人が増えています。フリマアプリの利用者が増加の一途を辿っていることをみても、その傾向は十分にうかがえます。

テクノロジーの進化が情報収集のあり方を変えた

 「通信費」の増加については、インターネット・スマートフォン・SNSの普及、AIの台頭といったテクノロジーの進化・普及が、消費行動に大きな変化をもたらしました。

 一番変化が大きかったのは消費者が利用するメディアです。経年比較の調査結果を毎年追いかけていると、情報を収集する媒体において、年々TV・新聞・雑誌は減り続け、それに代わりインターネット・SNSが増えていく傾向がみられます。

 情報収集の行動は、ここ10年で大きな変化を遂げていると言えます。化粧品を例にとると、10年前の主流は、売り場の店員からの情報、雑誌、ネットの口コミでした。専門的な知識やトレンドは店員や雑誌で収集し、人気ランキングや口コミを口コミサイトで取得するという情報収集がスタンダードでした。それが、ここ最近は、Instagram、YouTubeで情報を集めている人が多くなっています。

 しかし、SNSでの情報収集は若年層に多くみられる行動であり、どこから情報を得ているのかは年代によってばらつきがあります。テクノロジーの進化・普及がさらに進んでいく中で、情報媒体に対する年代差は大きくなっていき、今後もその傾向が続くと予想されます。こちらについては次回以降の連載でさらに掘り下げていく予定です。

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この記事の著者

犬飼江梨子(イヌカイ エリコ)

消費者心理分析専門家 マーケティングリサーチ会社 (株)イー・クオーレ代表取締役
15年間で約1万人の消費者心理を分析。「顧客が真に求めるニーズを見つけ出し、それを解決する方法を考える」ための調査に定評がある。消費者の変化に注目し、新商品開発のための調査や商品リニューアルのための調査を多数実施し、売れる商品を作るため...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/06/29 07:00 https://markezine.jp/article/detail/36598

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