コンビニエンスストアは「いつでも揃う」ことが価値である一方、欠品を避けようとするほど廃棄=食品ロスが生まれてしまう。この課題にわずか1.5cmのクリエイティブで挑んだのが、ファミリーマートとThe Breakthrough Company GO(以下、GO)が展開する「涙目シール」だ。義務感や値引きによる訴求ではない、消費者の共感を呼び起こすコミュニケーションは、どのように設計されたのか。MarkeZine初の事例アワード「BEST OF MARKETING AWARD 2026」において「大賞」および「ソーシャル・インパクト部門賞」を受賞した同取り組みについて、MarkeZine Day 2026 Springで両社が登壇し、その全貌を解説した。
「食品ロス」に対するコンビニの社会的責任と危機感
全国に1万6,000店舗以上を構え、毎日1,500万人以上が訪れるファミリーマート。コンビニエンスストアは“巨大インフラ”ともいえる存在だからこそ、社会や環境に与えるインパクトは大きく、特に喫緊の課題となっているのが食品ロスの削減だ。
こうした背景から、ファミリーマートでは環境の中長期目標「ファミマecoビジョン2050」の一つとして2030年までに食品ロスを50%削減、2050年までに80%削減するという目標を掲げている。2021年からは賞味期限の迫った商品を値引きする「エコ割」を導入した。
しかし、同社のマーケティング本部でサステナビリティ推進部長を務める大澤氏は「このペースでは、2030年の目標達成には届かないと危機感を抱いていた」と当時を振り返った。そこで、次の打ち手を模索する中、GOとの共同プロジェクトが始動した。
値引きの先にある消費者の“未充足な動機”
大澤氏らと共に同プロジェクトを推進したGOの松本氏は、従来のエコ割が抱えていた課題を顧客のモチベーションの観点から分析。これまでの値引きシールは、「50円引き」といった金額の部分に意識が向いてしまい、単なる損得勘定のコミュニケーションに終始していたという。
「調査によると、日本人の約9割が『食品ロスをどうにかしたい』という意識を持っています。この気持ちを巻き込み、共感してもらえる仕組みが作れないかと考えました」(松本氏)
プロジェクトのヒントになったのは海外の『RSCUED(レスキュード)』というジュースの事例だ。廃棄される果物から傷んだ部分だけを取り除き、品質的に全く問題のない残りの部分を使ったジュースを販売。「廃棄される果物を救い出す」という意義に共感した消費者が、一緒に課題を解決するパートナーとして商品を購入している。
この商品に着想を得て生まれたのが、おむすびが涙を浮かべる「涙目シール」の原案だった。おむすびが号泣しているようなラフ案に対し、当初は驚きを隠せなかったと大澤氏は振り返る。そこから、おむすびのキャラクター性やメッセージのトーンについて、徹底的な調査を繰り返すプロセスが始まった。
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吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)
大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。
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