“Adobe Summit 2021”の見どころを、マーケティング・デザイン・ネットワークカンパニー「顧客時間」の3名がリレー形式でレポートする本連載。今回は前編に引き続き、同社の共同CEOである岩井琢磨氏が、コロナ感染拡大を受けてMass Personalizationを短期間で実現せざるを得なくなったトラディショナル業界を紐解く。フィットネスクラブの老舗「GoodLife Fitness」のセッションを通じて、成功企業の考えるDXの基点、優先すべきこと、そしてデジタル化に対応したその先に見据えるビジネスモデルを解説した。
老舗フィットネスクラブがコロナ禍で挑んだDX
COVID-19によって、安全であることだけでなく「健康を維持すること」の大切さがこれまで以上に認識されるようになった。その使命を果たすべく、トラディショナルなモデルからの転換を果たした企業の1つがGoodLife Fitnessだ。
同社は1979年創業、カナダに本拠を置くフィットネスクラブの老舗である。「Fitness in the Next Normal」と題されたセッションに登壇したのは、同社のChief Marketing&Technology Officerのサンダー・ヴァン・デ・ボーン氏である。
コロナ禍が大きく変えた顧客行動のひとつがフィットネスだ。カナダでは定期的にジムに通う人の50%以上が、いまやジムに行くのと同程度でオンラインサービスを使った運動をしているという。ボーン氏は次のように語る。
「これまでのGoodLife Fitnessが提供してきたものは伝統的なフィットネスサービスでした。つまり、ライブでのフィジカルな体験にフォーカスしていたのです。しかし我々の未来を見据えれば、顧客とGoodLife Fitnessとの新しい関わり方を構築できると考えました。そこで、顧客のためにカスタマージャーニーの再構築に取り掛かったのです」
テクノロジーを駆使してビジネスモデル全体を見直す
ここで特筆すべきことは、彼らがDXへの正しい解釈を持っていたことだ。つまりそれは、「単なるDXではなく、テクノロジーを駆使して我々のビジネスモデル全体を見直すことである」という解釈だ。
「デジタルを活用してメンバー(ユーザー)の行動インサイトを把握し、適切なサービスと情報をメンバーに提供する」ことを目指したが、その上で「その際に『どのようなデジタルサービスをローンチするのか、それによってメンバー1人あたりの平均収益と契約期間をどう伸ばすのか』を考える必要がありました」とボーン氏は述べている。
もう1つは、その取り組む手順においても、正しい解釈を持っていたことだ。「我々は、“People”から始めました。Peopleとは顧客だけでなく、トレーナーをも含みます」(ボーン氏)。GoodLife Fitnessのコア資産は、まさにトレーナーである。だからこそ、トレーナーのインサイト理解を踏まえ、その次に体験を検討し、最後にシステムを構築したという。
まず、データとフィジカルアクティビティをマッチングし、顧客が何を好み、何を好まないのかを把握。そこから「パーソナルで最適な体験」の提供を進めていった。一般的で固定的な情報を顧客に提供するのではなく、顧客の個々のフィットネス行動を可視化し、「あなたがアイアンマンになりたいのなら、そのゴールに向けた方法はこれです」とライフスタイルにも合わせて提示できたほうが、顧客とのつながりが強化される。それが顧客のリテンション、さらにはロイヤルティにつながり、まさに顧客の「GoodLife」実現につながってくのだ。
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岩井 琢磨(イワイ タクマ)
株式会社顧客時間 共同CEO 代表取締役
博報堂DYグループに入社。インストア・プランナー、クリエイティブ・ディレクター、ブランドコンサルタントなどを経て、2012年にコーポレート・コミュニケーション・センターのセンター長に就く。製造業、流通サービス業界を中心に、部署横断型の事業変革プロジェクト、企業ブランディ...
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