データ活用に必須な同意管理の仕組みとは?
もう少し、同意管理を分解してみよう。
SAPでは、同意管理の仕組みを大きく4つの枠で設計している。1つ目は、顧客自身がデータ削除や編集などができる、セルフサービス型のデータ管理。マイページを想像すると良い。2つ目は、利用規約やプライバシーポリシー、マーケティング活動への同意が適切なタイミングで適切な相手から取得できる、同意・プリファレンスの機能。3つ目が、システム全体との連携。そして4つ目が、同意のバージョン管理だ。
このような仕組みを揃えた上で、「データをMAやCRM、Eコマースなどのシステムやサービスとつなげ、お客様がシームレスに安心してサービスを受けられる環境を作る必要があります」と阿部氏は語る。
特にGDPRは、世の中で最も厳しい個人情報保護法と言われている。が、裏を返すと、GDPRを100%準拠した顧客ID&同意管理ができれば、データを活用した信頼のおけるマーケティングやサービスを確立できるのだ。
無人コンビニの顧客をアプリで管理するスイスのValoraグループ
続いて阿部氏は、「100%GDPR準拠、顧客データは新たなビジネスモデルの構築にした成功例」として、2つのグローバルブランドの事例を紹介した。
1社目は、スイスに本社を置くValoraグループだ。ベーカリーなど食品製造事業でも知られる同社は、ヨーロッパ圏で2,700社以上のフードコンビニエンスストアを運営し、1日に平均50万人の顧客が利用する。そんなValora が、2019年に新規事業としてスタートしたavec boxは、いわば無人のキオスクだ。
買い物の流れは、次の通り。まず顧客は、自分のスマートフォンにアプリ「avec app」をダウンロードし、顧客情報として身分証明書とクレジットカードを登録する。店舗を利用するときは、入り口でアプリを立ち上げQRコードをスキャンして入店。顧客自身が商品をスキャンするとアプリ上に表示されたショッピングカートに追加され、登録されたクレジットカードで決済する。
avec boxは、自分の好きな時間に軽食を取りたいというニーズや、人的リソースの最適化、新規出店エリアの拡大などにも貢献。駅構内という立地から地元生産者との協業も生まれているという。
GDPR100%準拠の顧客データがビジネスにもたらすメリット
では、avec boxの顧客IDと同意の管理、データ活用を見ていこう。avec boxの基本コンセプトは、顧客のプロファイルを中心に置き、カスタマージャーニーに沿ってGDPRに対応した事業を実現することだ。
たとえば、アプリダウンロードとユーザー登録時には、アプリの利用規約、プライバシーポリシー等の基本条項に加え、登録した個人情報の利用目的に対する同意を取得する。さらに来店時には「店舗利用データや決済情報をマーケティングに活用してよいか?」という同意を得て、利用履歴に基づくレコメンデーションを実行。一般プロファイルに加え、居住地、利用店舗、購買履歴、利用頻度、時間帯などのデータを、出店計画や品揃え、在庫の調整、新サービス開発やマーケティングに活用し、利用者の利便性向上および事業の効率化に役立てている。
SAPは、Valoraのこの取り組みをSAP Customer Date CloudをはじめとしたSAP Customer ExperienceソリューションおよびSAP Business Technology Platformを中心に支援している。
「アプリでは、お客様自身でいつでもデータの閲覧や編集、削除、移行ができます。また、登録時に居住地の選択をすることで、お客様に適したプライバシーポリシーの対応が可能です」(阿部氏)
さらに阿部氏が言及したのは、GDPR100%に準拠したことでのメリットだ。「GDPRに準拠した形で信頼を構築し、1to1のパーソナライゼーションを実現できたことにより登録率が20%以上向上した」と阿部氏。その上、顧客からのフィードバックが多く集まるようになり、新規サービスの開発スピードやサービスの成功確率にも繋がっているという。