前回のおさらいと本稿の趣旨
広告事業者による“Cookieレス祭り”に惑わされず、マーケターが客観的かつ公平に情報解釈を行うための視点づくりを目指す本連載。第1回では、以下のメッセージをお伝えしました。
・Cookieレス時代に備える方法は、どれか1択ではない。
・企業側の視点だけでなく、ユーザーにとっての広告体験を考え直す発想が必要。
・“枠”や“人”よりも、“関心・文脈”を優先して広告を考えるべき時代に。
・規制に対応するための“代替手法”としての見方を終え、積極的な評価を行う段階へ。
第2回となる今回は、Cookie議論の中注目される手法の一つである「コンテクスチュアル広告」について、その定義や種類、メリット・デメリット、現状の課題についてお話していきたいと思います。
近年急に注目を集め出したからかもしれませんが、この分野について基本的な知識を含めて情報がまとめられた記事やサイトは、私が知る限り現在極めて少ない状況です。限られた情報源の一つとして、本稿を使ってもらえればと思います。
また、できる限り客観性・公平性を保ったつもりですが、もし偏った見方や説明がありましたら、ぜひ率直な感想やご意見をいただけますと大変嬉しいです。
今注目されているのは、“狭義”のコンテクスチュアル広告である
まず「コンテクスチュアル」という言葉自体、耳慣れない方も多くいらっしゃるのではないかと思います。実際、広告・マーケティング分野でこの言葉が使われ始めたのは、比較的最近の話になりますが、広告に限らずコミュニケーション全般における“コンテキスト”ないし“コンテクスト”、つまり“文脈・背景・状況”の重要性については、皆さんもよくご存じのところかと思います。同じ言葉や内容を伝えても、文脈が違って話がまったくかみ合わなかった、なんて経験のある方も多いのではないでしょうか。
「コンテクスチュアル広告」は、この“文脈”というものを重視した広告アプローチです。ユーザーが置かれた文脈・背景・状況を踏まえた広告によって、企業とユーザー間のコミュニケーションを成立させ、両者にとって良好な広告体験・意義を生み出すことを目指します。
同じ人であっても、仕事中・休憩中・家族の時間・趣味の時間など、状況はその時々で変化します。人の心理や気分を特定することは簡単ではありませんが、コンテンツ情報を基に想定することは可能です。
たとえば、経済ニュースを見ている時、その人は仕事やキャリア、投資などの話題に敏感になっている可能性があるでしょうし、家族ドラマなどのコンテンツを見ている時、その人は家族イベントやお出かけなどの話題に反応しやすくなっている可能性があるでしょう。また一方で、スポーツ中継を見ている人の関心がスポーツだけに向いているかと言うと、一概にそうとは言えず、ファッションやダイバーシティ方面に意識が向いていることも考えられます。
広い意味では、文脈・背景・状況を軸とする広告は、すべてコンテクスチュアルであると捉えることができます。デジタルだけでなくオフラインでも、その広告のメッセージやクリエイティブ表現が文脈を意識したものであるならば、これに該当すると言えます。
つまり、今盛んに議論されているものは狭義での「コンテクスチュアル広告」であり、これはインターネット上のWebサイトやページに含まれるキーワード・文章・画像などをテクノロジーで自動解析し、その内容・文脈に合った広告を配信するものを指します。ユーザーを追跡する必要がなく、広告が表示されるサイトやページの内容をターゲティングする手法であるため、“Cookieレス手法”として今注目されているというわけです。
本稿ではこれ以降、この狭義での「コンテクスチュアル広告」について解説を進めていきます。まずは前提として、コンテクスチュアル広告の概念や目指しているところについて、正しくご理解いただけましたら幸いです。