ミレニアルファミリー層をターゲットとするオレオ
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに自己紹介をお願いします。
山村:モンデリーズ・ジャパンの山村です。オレオのマーケティング全般を担当しています。
木崎:Facebookでシンガポールのアジア太平洋本部に所属をしています、木崎と申します。Facebook広告の活用をサポートするアカウントマネージャーを務めており、主に消費財メーカーのお客様を中心に担当しています。実は、偶然にもモンデリーズ・ジャパンで商品開発に従事していた経歴があり、山村さんとも同じオフィスで働いていました。
MZ:そうだったんですね! ではInstagram広告の活用に入る前に、オレオの基本的なマーケティング戦略について教えて下さい。
山村:オレオのメインのターゲット層はミレニアルファミリー層です。グローバルでのマーケティングでは「empathy」と表現していますが、「よりターゲットの共感を得られるようなコミュニケーションを展開する」ということを意識して、施策を考えています。
ターゲットの共感を得るオケージョン別のクリエイティブ
MZ:今回Instagramで広告を展開したのは、新しいパッケージの商品だったんですよね。
山村:はい。2021年4月に3枚入りで個包装になっているファミリーパックを発売しました。日本では、オレオというと箱に入っている商品のイメージがあるかと思います。それとは異なる新しいパッケージの魅力をわかりやすく訴求することが、このキャンペーンのカギでした。
MZ:では、Instagramでどのように広告を展開されたのか教えて下さい。
山村:ターゲット層の共感を得る・新しいパッケージの特長をわかりやすく訴求するという2つの軸で考え、クリエイティブエージェンシーと協議した結果、複数のクリエイティブを用意し、様々なオケージョンで楽しめる点を訴求することになりました。ミレニアルファミリーというターゲット層を細分化し、それぞれからより共感を得られるように、6種類のオケージョン別のクリエイティブを制作し、ターゲットを絞って広告を運用しました。Instagram上で設定したオーディエンスは、オフィスワーカー、マザー+キッズ、ファザー+キッズ、ジェネラルの4つです。経過を見て、6種類のうちパフォーマンスの良いものに絞り、運用していくという形を取りました。
MZ:6種類のクリエイティブは、それぞれどのようなものだったのですか?
山村:登場人物は、お父さん、お母さん、小学校低学年くらいの女の子と男の子の4人です。6種類制作しましたが、どのクリエイティブでも最後は同じ音を流したり、下部にファミリーパックを訴求する帯をつけたり、テンポは同じにしたりと、共通する部分もありました。
1.お母さんが仕事中のお昼ごはんの最後にデザート感覚でオレオを食べるシーン
2.お母さんが読書中に一息つくタイミングでオレオを食べるシーン
3.お父さんと2人の子供がお出かけ先でオレオを食べるシーン
4.お父さんと2人の子供が家でテレビを見ながらおやつにオレオを食べるシーン
5.子供たちが学校から友達を連れて帰ってきた時に、おやつとしてオレオを渡すシーン
6.在宅ワーク中のお父さんが、行き詰まった時に子供と一緒にオレオを食べてリフレッシュするシーン
Instagram広告の動画クリエイティブ制作のポイント
MZ:この中で効果の良かったクリエイティブはどれだったのでしょうか?
山村:CPMが良かったのは、お母さんが読書中に一息つくシーンを描いたものと、突然友達を連れ帰ってきた子供たちにオレオを渡すシーンを描いたものの2つです。9月からInstagram広告を展開していますが、この2つのクリエイティブは新しいクリエイティブと掛け合わせて今回も運用しています。
MZ:こうした動画広告を制作する際に、取り入れると良いポイントなどありますか?
木崎:弊社では、よりパフォーマンスが得られる広告クリエイティブのポイントとして、次の4つを挙げています。1つ目は、動画の冒頭部分にブランドとメッセージを入れることです。利用者は、スマートフォンの小さい画面上で数多くの広告に触れているので、どうしても離脱率が高くなりやすい傾向があります。よって、冒頭部分でしっかり利用者を惹きつけることが重要です。また同じ理由から、2つ目のポイントとして、画面をスクロールする指を思わず止めるきっかけがあるようなクリエイティブにしていただくようお伝えしています。
次に3つ目は、縦型のスマートフォンのスクリーンを最大限活用する画角にしていただくこと。テレビCMなどの素材は横長の画角で制作されていると思いますが、Facebook、Instagram広告用に縦型の画角で広告を制作することを推奨しています。
最後4つ目は、サウンドオフで見ても理解できるような内容にしていただくことです。スマートフォンなので、音をオフにして見られている利用者もたくさんいらっしゃいます。音楽や音を付けていただくこと自体に問題はないのですが、その場合は字幕をつけるなどしていただくとよいと思います。
コアターゲット層でブランドリフト値が大幅アップ!
MZ:商品のローンチ後、一定期間Instagramで広告を展開した結果はどうだったのでしょうか?
木崎:今回は弊社でブランドリフト調査を実施し、態度変容を検証させていただきました。調査の質問は、「この広告を見たことがありますか?」という広告想起に関するもの、「このキャンペーンを見たことがありますか?」というキャンペーン認知に関するもの、「オレオファミリーパックを買いたいと思いますか?」という購入意向に関するものの3つです。広告を見た人と見ていない人それぞれにこの3問の質問をして、回答の差から純粋な広告によるブランドリフト値を測るという仕組みでした。
調査の結果、広告想起:オフィスワーカー+11.2ppt/マザー+キッズ +13.7pptと、消費材業界の平均である+6.1pptと比べて高いリフト値が出ました。お父さん向きのクリエイティブなどターゲット別のクリエイティブを作ったことで、新規層含めて被りなくリーチし、多面的にブランドのストーリーを伝えることができました。
定性調査から明らかになった、インスタ内でのユーザー行動
MZ:定量調査に加えて、定性調査も行われたと伺っています。
木崎:はい、マインディア様にご協力いただき、インタビュー調査を行いました。具体的には、5名のオレオユーザーを集めて、Instagram内での行動についてお話しを伺いました。たとえば、Instagramを開くタイミングや、どんな目的で見ているのか、どんなコンテンツに興味をひかれるか、Instagram内の広告についてどう思っているか、また広告を見てからどんなアクションを取るのかなどです。オンラインでのインタビューではありましたが、ミラールームの機能やモデレーターへの指示出しができる機能などがあり、スムーズにかつ深くインタビューすることができました。
マインディアの調査サービスは、InstagramをはじめとしたSNSやWebメディアから会員登録される方が多く、ポイント目当てでない一般消費者に近い会員の方が多い点が特徴です。今回も普段からよくInstagramを利用されていて、かつオレオの購買習慣がある方にお話しを伺えたのが1つの成功ポイントでした。加えて、当日に質問をしても、答えが思い浮かばなかったり、思い出せなかったりするので、事前に日記のような形でInstagramを使った時の記録も数日間残していただきました。
MZ:調査から明らかになったユーザー行動を教えて下さい。
木崎:一番興味深かったのは、質問させていただいた皆さんの広告に対する抵抗感がとても低かったことです。広告コンテンツも保存していたり、広告と気づかずに見ていたり、また「大好きなブランドの新商品を広告で知りリンクに飛んで見ました」といった声もありました。
これは、Facebook独自のアルゴリズムによるところが大きいのではと思っています。Facebook・Instagram広告は、利用者の普段のアクティビティを機能学習することで、興味を持ちそうな広告をパーソナライズして表示する設計になっているので、エンゲージしたくなるような広告に出合いやすいのです。
山村:今回の定性調査では、たくさんのラーニングがありました。広告を保存して下さったり、リンクをクリックしてブランドサイトに来て下さったり、気になる商品はすぐに検索したりと、積極的な反応が私たちの期待をはるかに超えており、嬉しいサプライズとなりました。「栄養素何グラム入り!」のような商品の特徴が広告に記載されていて、それで商品に興味を持ったというお話しをされていた方もいらっしゃいました。広告としてシンプルな訴求が逆に響くこともあるというのは驚きでした。
ラーニングを活かし、現在秋のキャンペーンを展開中
MZ:春のキャンペーンでは、定量・定性の両側面から色々な学びがあったかと思います。大きな収穫は何でしたか?
山村:新商品としてローンチした後、ある程度は勢いがあります。重要なのはその勢いをいかに維持するか。競争の激しいビスケット市場では商品の回転率が落ちると商品が棚から落ちてしまうという危機感があります。このファミリーパックをオレオブランドの一商品として育てていくためにも、下期に勢いを落とさないことが求められています。その中で、まずは商品を認知してもらうというのが最優先ですが、できるだけ購入につなげるべく、認知の中でも質の高い認知につなげることを考えてきました。
今回の定性調査では、弊社とFacebookさんに加え、クリエイティブエージェンシー、メディアバイイングをしているエージェンシー、PR会社の担当者も一緒にインタビューを聞いてもらいました。みんなで一度立ち止まって、オレオファミリーパックを成長させるために必要なことを考えるとても良いきっかけになりました。
クリエイティブに関しても、ブランドとしてしっかり作りこんだ動画を制作してきましたが、静止画のシンプルなクリエイティブもありなんだ、ということをクリエイティブエージェンシーと一緒に気づけたことが大きかったです。我々が「追加で静止画を作って下さい」と一方的に依頼するのとは、大きな違いがあると思います。
MZ:今回はどのような広告クリエイティブを回されているのですか?
山村:今回のキャンペーンでは、「3枚1パックはちょうどいい!」などSNSのUGCを参考にした吹き出しを入れた静止画やGIFを数種類、前回パフォーマンスが良かった動画と静止画を掛け合わせて運用しています。広告を回し始めてまだ1週間ほどしかたっていませんが、これまで年間でやってきたキャンペーンよりもCPMが良いと聞いているので、嬉しい限りです。
木崎:広告を配信するオーディエンスの中でも、静止画が刺さりやすいオーディエンスと、動画のほうが刺さりやすいオーディエンスとが混在しているので、理想としては静止画と動画の両方をそろえていただくと、よりパフォーマンスが発揮されると思います。
今回、クライアント様やエージェンシー様と一緒に、定性調査を通して利用者のカスタマージャーニーについてディスカッションできたのは、我々にとっても貴重な機会でした。マインディア社は、EC購買データやオンライン上でのコンバージョンのデータプラットフォーム「Mineds for EC Data」も提供されています。今後はそういったデータもクリエイティブや出稿のご提案に活用していければと考えています。
そして、Facebook、Instagram広告ならではのクリエイティブのポイントを押さえる必要はありますが、オレオはInstagramととても相性のいい媒体だと思っています。春からのラーニングを活かしながら、さらにパワーアップした形で一緒にお取り組みができれば嬉しいです。
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