日本は、デジタル上で最も人間らしさを“感じられていない”国
続いて、世界中の消費者3,081人以上に対して調査を実施。最近のブランド体験を思い浮かべてもらい、その体験が人間らしいと感じられたかどうかを回答していただきました。調査は、その回答が企業やサービスをどう感じているか(肯定的、否定的両方を含む)、どのような距離感を生んでいるのかを照らし合わせることができるよう、組み立てられています。
調査結果を見ると、地域や業界に関係なく、概ね安定したスコアが出ていることがわかりました。しかし、いくつかの傾向の違いもあります。国別に見ると、イギリス、カナダ、アメリカの消費者は、企業からより人間らしいコミュニケーションを受けています。一方、調査対象国の中で、日本の消費者は最も企業から人間らしいコミュニケーションを受ける機会が少ないと回答しています。
業種別では、小売・eコマース、フードデリバリー企業が最も高く「人間らしさ」を発揮できている傾向にあります。金融サービス・保険企業はグローバル指数に比べてやや遅れているようです。
では、ブランドがどんな要素を有していれば、消費者に人間らしいと感じてもらえるのでしょうか。前述の感情的な要素属性、機能的な要素属性を用いた調査結果を、それぞれ説明します。
奇抜さよりも、対話型や親しみやすさが評価される
まず、感情的な要素属性に関しての調査結果と考察です。以降では企業の商品、サービスをまとめて「ブランド」と呼びます。下図は、ブランドの人間らしさに対する認識を高める可能性の高い感情的属性のトップ9です。

上記の通り、対話型である、インタラクティブである、生活の役に立つ、思慮に富むといった項目が、消費者がブランドに対して人間的であると考える最も強い要因となりました。役に立ち、親切で、誠意があると感じてもらえた時、消費者はブランドと交流する傾向があります。消費者は、ブランドによるメッセージのパーソナライズや、自身の関心事に対処する努力を高く評価しているようです。
ブランドは、お客様に一方的に言葉を投げかけるのではなく、お客様と面と向かって対話する(インタラクティブである)ことで、人間的な側面を見せることができることを知る必要があります。
一方で、下図の項目は、人間らしさを醸成するために必要がないことがわかりました。

上記の通り、面白い、意外性がある、といった感情は、ブランドに親近感を持つには不要ということを示しています。消費者は派手さよりも中身に興味があるということになります。消費者のニーズを満たすために、役に立つ、思慮深いブランドは、驚きや衝撃を与えて注目させようとするだけのブランドよりも、より人間らしさがあると認識されます。
テレビ広告から判断すると、マーケターはブランドが共感を得るために「奇抜」で「楽しい」、あるいは「愉快」でなければならないと考えるかもしれません。特に、他国よりもテレビの影響力の強い日本では、この結果が意外に映るかもしれません。しかしデジタル上においては、消費者に驚きや衝撃を与えて注目させようとするだけのブランドよりも、消費者のニーズを満たすために役立ち、温かみのある企業コミュニケーションが、より人間的であると認識されます。
このように感情に関する分類からわかることは、一般的なブランディングの概念である「良いブランディングとは、何よりも差別化を図ること」という考えを覆すものでした。今回の調査によると、差別化というよりも、お客様の味方であることが重要だとわかります。あなたが友人を助けるように、お客様を助けることで、ブランドはより人間らしさを獲得できるのです。
BHIでは4つのカテゴリーの分類が行われており、それぞれのカテゴリーがどれほど人間らしさを発揮するレバーとなったのか(きっかけになったのか)を数値化しています。この中で感情に関するカテゴリーは最も高いレバーのシェアである39%を占めています。人は感情を持つ生き物なのです。
