1~2年で社内が積極的にデータを活用する風土に
MarkeZine編集部(以下、MZ):御社がこれまで行ってきたデータ活用について教えてください。
坂野:弊社はこれまで、Google BigQueryを駆使して社内データを統合する、BIを活用して自社WEBストア「ドットエスティ(.st)」の会員データや商品レビューデータを可視化するなど、データ活用の土台作りに取り組んできました。
これらの取り組みにより、これまで半日以上かかっていたデータの抽出時間も大幅に短縮できました。また、BIツールの導入によって、経営層やEC担当、プレス、店舗スタッフなど様々な部門の社員がデータを活用した意思決定を行うようになりました。
コロナ禍の影響で顧客が現在どのようなことを考えているのか知りたいというニーズも高まり、ここ1~2年で積極的にデータを見る風土になってきたと感じています。
アダストリアがヤフーのデータ活用に踏み切った理由
MZ:幅広い部門がデータを活用して意思決定をしているのは素晴らしいですね。データを活用する土台が固まってきた中、なぜヤフーのDS.INSIGHTの導入に至ったのでしょうか。
坂野:大きく3つの理由から、DS.INSIGHTの導入を決めました。1つ目は、社内のデータだけでは、お客さまの理解に限界があるためです。ドットエスティの会員データが主になっているため、基本的には購入いただいた方のことしかわかりません。そのため、ブランドを知らない方や知っているけど購入していない方たちが、どういった行動をしているのか知りたいと考えました。
2つ目は、DS.INSIGHTが次のアクションに活かしやすそうだと考えたからです。社外のデータ活用を検討する際、「意思決定にもつながるかどうか」を念頭に置いていました。導入前にDS.INSIGHTのデモを拝見した際、その点は問題ないと感じましたし、トライアルで活用した際の社内の反応も良かったです。
3つ目は、簡単に操作できるためです。素晴らしいソリューションを導入しても、操作性が専門的すぎると、担当スタッフがいなくなると継続的に活用できません。DS.INSIGHTは、簡単に操作できてアウトプットにも活かしやすく、若手スタッフにも使い方を継承しやすいと感じました。
自社ブランドと親和性の高い要素をヤフーのデータで導き出す
MZ:では、DS.INSIGHTをどのように活用しているか教えてください。
小圷:私たちは普段、各ブランドに対しヒアリングを行った上でデータ分析を行い、今後のアクションに関する提案を行っています。ヒアリングでは、「新規カテゴリーを立ち上げたい」「新しいコラボレーション先を検討したい」などのニーズを聞き、新規カテゴリーのターゲットやコラボレーション先について、データを活用しながら考えています。
その中でDS.INSIGHTは、自社会員のデータや商品レビューデータと照らし合わせて使うことで、よりブランドへの提案の精度を高めています。
たとえば、新規カテゴリーの参入を検討する際は、DS.INSIGHT内の機能であるPeopleの時系列キーワードを活用しています。この機能は、新規カテゴリーのキーワードで検索する人がその前後でどのようなキーワードを検索しているのか可視化できるものです。また自社のブランド名と一緒に検索されているキーワードなども調べることで、どのような商品を求めているのかを探っています。
こうすることで、自社ブランドと親和性の高い要素を高い精度で導き出しています。
ヤフーは自走までの支援を実施
MZ:ヤフーの荻野さんにうかがいますが、アダストリアのDS.INSIGHTを効果的にすべく、どのような支援を行ってきたのでしょうか。
荻野:導入当初は各種機能やヤフーのデータが持つ特性、癖を説明する、弊社でハンズオンのレクチャーを行うといった支援をさせていただきました。検索や位置情報データを扱うことになじみがない企業様も多いので、弊社では定着するまで勉強会やお悩み相談を行っています。
アダストリア様に関してもお悩み相談を通じて「このような活用ができるのでは」といった提案をしたり、他社の活用事例を紹介したりしました。事例に関してもただ紹介するだけでは再現性がないこともあるため、用件に応じた活用方法を一緒に模索いたしました。
直近では、アダストリア様が自走する形で活用しており、弊社のクライアント様の中でも非常に進んだ取り組みをしていると感じています。
JEANASISの新訴求軸の発見、新ブランドのニーズ発掘に貢献
MZ:では、実際に得られた成果について教えてください。
大鷹:私がEC担当を兼務しているJEANASIS(ジーナシス)という女性向けブランドでは、DS.INSIGHTを活用することで新しい商品訴求の軸を発見できました。
具体的には、JEANASISの商品レビューとDS.INSIGHTのデータを組み合わせることで、JEANASISの購入者は美意識が高いことがわかりました。たとえばビッグシルエットの商品も、体系を隠すためではなく、スタイルが良く見える、丈感やシルエットがいいといったことを評価いただいています。
また、DS.INSIGHTの時系列キーワードで見ると、JEANASISの検索前後には「着圧タイツ」「美容コスメ」といったキーワードの検索が見られたため、ECの商品ページも美を押すような訴求に変更したり、スタイルがきれいに見えるような商品開発に取り組んだりしています。
坂野:また、2019年10月にデビューした大人女性ブランドのElura(エルーラ)では、まだ社内に十分なデータが蓄積していないため、DS.INSIGHTのデータも組み合わせながら、ターゲットである40~50代の女性の興味・関心や服装に関するお悩みなどを抽出し、それをもとに商品開発などを行っています。
データを活用し、すべての人がファッションを楽しめる提案を
MZ:では、最後に今後の展望を教えてください。
坂野:アダストリアでは、生活を取り巻くすべてをファッションと捉えています。そのため、今後も社内データとDS.INSIGHTを駆使しながら、すべての人がファッションを楽しめる提案をしていきたいです。
たとえば、2020年12月に立ち上げたインクルーシブファッションプロジェクト「Play fashion! for ALL」では、持病や障がいを抱える人のニーズを叶えた洋服を制作しています。このような方たちのニーズを社内データだけで補完するのは難しいです。そのため、「車いす」や障がいに関連したキーワードをDS.INSIGHTで分析しています。
このように、新規事業のデータ活用にもDS.INSIGHTを積極的に活用していきたいです。
荻野:DS.INSIGHTでは新たなオプションプランとして「DS.INSIGHT Persona」 をリリースしました。このプランでは、ヤフーの行動ビッグデータを活用して、指定した条件に合致するユーザーの中から代表的なペルソナを作ることができます。今回は検索データを活用した分析がメインでしたが、位置情報を活用した「DS.INSIGHT Place」 のアップデートも予定しているので、今後も新機能を提供していきたいです。
また、DS.INSIGHTを導入している企業によるコミュニティの立ち上げも検討しています。コミュニティにより、多くの企業がDS.INSIGHTの活用に成功できるよう支援していきたいです。