シニアマーケティングを支えるシンクタンク「生きかた上手研究所」
シニアに特化したビジネスを複数展開しているハルメクグループ。現在7つのグループ会社に分かれているが、事業の中核を担うのはハルメクが展開する雑誌やWebコンテンツ、カタログ通販事業だ。
20年以上ビジネスを展開する中で、月間平均38.5万部と女性誌の中で販売部数トップ(日本ABC協会発表)を走っているシニア女性誌『ハルメク』を始め、両グループ合わせて150万人ほどのアクティブデータベースを保持。シニア女性の心をつかむ多くのノウハウやナレッジを培ってきた。
2018年には獲得したアセットを活用して、コンサルティングや広告支援などを行うハルメク・エイジマーケティングも立ち上げ、他社のシニアマーケティング支援にも力を注いでいる。
同社がユニークなのは、社内にシンクタンク機関「生きかた上手研究所」を置いている点にある。同機関は、『ハルメク』読者や通販顧客から形成される約3,700人のモニターに、インタビューやアンケート調査、商品モニターに協力してもらうことで、シニア女性の日々の潜在ニーズや課題などを発掘している。「常にお客様の声を聞く」をモットーに事業を展開するハルメクにとって、マーケティングを支える屋台骨と言っていい。
研究所の調査データが社外で活用されるケースも増えているようだ。たとえば「ポケモンGO」は、リリース当時には「ハルメク読者にゲームを使ってもらうためにはどうすればいいか?」という相談をポケモン側から受け一緒に取り組みを進めていった。その際、まだ少ないプレーヤーをモニターからかき集めてインタビューを実施し、「ポケモンGOが外出や運動するきっかけになる」という世代ならではの特徴を発見。そうして明らかになった健康軸を誌面に反映し、全国各地で体験イベントを開催するに至った。
「自分のことをシニアだと思っていない」シニア
「生きかた上手研究所」を通じて年間1,000人近くのシニアを対象にインタビューや取材を行ってきた所長の梅津氏は、企業がつかんでおくべきシニアの行動特性、変化について紹介した。
まず梅津氏が語ったのは、「自分のことをシニアとは思っていない」というマインドについて。生きかた上手研究所の調査した「年齢に関する自己認識」によると、実年齢より自分が感じている“知覚年齢”は6~11歳、他者に何歳に見られていると思うかという“他者知覚年齢”は3~10歳若いことが判明した。
「たとえば、厚生労働省健康課では、中年を45~64歳、65歳以上を高年と定義していますが、70代の方にインタビューをすると自分たちを中年というグループに位置付けているのがわかります。超高齢社会で中年の定義に変化が生じたのでしょう。これからの『人生100年時代』においては、年次の幅を持たせる、もしくは65歳以上を一括りにせず細かく見ていく必要があるはずです」(梅津氏)
また60代は、定義上そうであっても「高齢者」「シニア」という自覚がないのだという。これは「敬老の日に関する調査」からも見える。それによると、敬老の日にお祝いされる対象と感じる年齢は「70.7歳」で、60代では自分たちに関係のないイベントだと考えている人が多いのだそう。
「実際に今の60歳ぐらいの方って華やかで若々しい。60歳を超えても、おばあちゃんではなく、おばさんと認識しているようです。敬老の日に関しては、『老人扱いされていると感じる』『祝われる年齢ではない』とマイナスの回答が見受けられました」(梅津氏)