LINEとネイティブアプリをID連携する「ZOZOTOWN」
LINEミニアプリはLINE上で多様なサービスを提供できるアプリケーションプラットフォーム。2022年3月時点で4,000以上のサービスがリリースされている。LINEを利用していれば新規のアプリダウンロードが不要という特徴の他、自動の友だち追加や、専用の通知機器を使ってサービスの通知を送信することなどが可能だ。既にスタンプカードやモバイルオーダーをLINEミニアプリで提供している企業も多い。
LINEミニアプリとネイティブアプリを比較すると、ユーザーのロイヤリティやアプリのカスタマイズ性はやや低いところがある。また、使用できるデータもLINEのデータに限られる。しかし、LINE APIおよびLINE公式アカウントを組み合わせることで、LINEの特徴を拡張して活用することが可能だ。
とはいえ、気になるのは「自社のネイティブアプリとLINEは共存できるのか?」だろう。この疑問に対し、LINE社でミニアプリ事業企画室 室長を務める谷口友彦氏はネイティブアプリとLINEの通知力を生かしたZOZOの活用事例を紹介する。
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」のネイティブアプリは既に多くのユーザーが使用している。一方でLINE公式アカウントも運営し、1,100万人以上の友だちを有する。同社はECサイトの会員情報とLINEのIDをLINEログインによってつなげ、100以上のシナリオからLINEの友だちに対して適切なメッセージを配信しているという。
例えばお気に入り商品の在庫情報や、カートに登録している商品のリマインド、発送完了通知が挙げられる。アプリからの通知は煩わしいと感じられる場合もある。しかし、LINEはコミュニケーションが前提のサービスだ。LINEから通知が届くことはユーザー体験として自然なため受け入れられやすいという。
また、ID連携をしているユーザーと、していないユーザーを比較すると前者は10%~20%ほどLTVが高いことがわかっている。ネイティブアプリとLINEを併用する効果は数値としても出ているのだ。
LINEはスタバ体験の入り口
続いて、ネイティブアプリとLINEを併用して成果を出している事例として、スターバックスコーヒージャパンの濱野努氏が登壇。使い分けや活用メリットを語った。
スターバックスのデジタル施策は主にオーダー・決済・店外・エンゲージメントの4つに分類できる。これらのデジタルサービスの基盤が、約930万名の会員を抱えるロイヤリティプログラム「Starbucks Rewards」だ。
Starbucks Rewardsはスターバックスの店舗やEC、セミナーなどを利用することで付与されるStarを集めるプログラム。集めたStarはごほうびに交換できる。このStarbucks Rewardsを中心に、モバイルオーダーサービスの「Mobile Order&Pay」、プリペイドカード「Starbucks Card」といったサービスをネイティブアプリで提供している。
「ネイティブアプリはスターバックスを愛していただいているお客様、ロイヤルカスタマーに向けたプラットフォームとして位置付けています」と濱野氏。スターバックスファンの来店を促し、サービスを通じてエンゲージメントを高めることで、LTVを上げることが最大の目的だ。
一方のLINEに関してはどうか。「LINEをコミュニケーションツールという位置付けで使っているわけではありません」と濱野氏は断言する。
実は、スターバックではネイティブアプリで提供しているサービスとほぼ同等のものをLINE上でも提供しているのだ。具体的には、LINEスターバックスカードを発行。会員登録や追加のアプリをダウンロードすることなくStarを集められる。さらに、2021年12月には注文から支払いまでLINE内で完結するモバイルオーダー「LINE Starbucks Order&Pay」も開始した。注文完了や引取可能通知や、ドリップコーヒーを頼むともらえるOne more CoffeeチケットもLINE公式アカウントから届く。
なぜ、スターバックスはこれらの機能をLINEで提供しているのだろうか? その理由を濱野氏は「LINEをライトカスタマーに向けたスターバックス体験の入り口」と捉えているからだと語る。
ネイティブアプリでスターバックスカードを提供する場合、アプリインストールや会員登録が大きなハードルになっている。一方、LINEでは数タップでカードの発行ができ、会員登録も不要。つまり、多くの障壁をパスした状態でスターバックスのサービスを提供できるのだ。
まずはスターバックスのサービスを知ってもらい、LINE上でサービスを利用する中でエンゲージメントを高め、ネイティブアプリへ移行してもらうことが狙いの一つだという。