必ず初心者も楽しめる施設にする理由
高橋:飽くなき探求心が生んだ「ほぼ100%の成功率」だと思いますが、たとえば今回お邪魔している「かるまる池袋」が人気店になったポイントは何だったのでしょうか?

太田:私のプロデュースする多くの温浴施設で共通して言えることですが、サウナ初心者からヘビーユーザーまで全方位をターゲットにしていることだと思います。「かるまる池袋」で言えば、「4種の水風呂」を用意しています。これは、33度、25度、14度、そして10度以下の4パターンをそろえることで、水風呂が初めての方も、10度以下が好きというマニアックな方も楽しめるようになっています。
サウナのユーザー層をピラミッドに例えると、ライトユーザーは土台の部分ですが、その層が多ければ多いほどピラミッドは大きくなります。しかも、そのライトユーザーは、いずれ上の階層に上がっていくので、長期的にそのサウナのファンになってくれる可能性が高いんです。10代や20代のライトユーザーであれば30年、40年というスパンになるので、収益は安定するでしょう。
対して、ピラミッドの上のほうにあたるマニアックなヘビーユーザーは数こそ少ないものの、頻繁に通ってくれます。しかも、ライトユーザーよりお金を使ってくれることが客単価の分析でわかっています。
一般的にマーケティングではターゲットを絞ることが多いですが、温浴施設の場合、商圏人口は都会でこそ1,000万人ほどいるものの、地方だと2万〜3万人程度の施設もあります。しかも競合施設もある中で生き残っていかないといけないので、全方位を狙うことがポイントになるんです。
ユーザーが誇りを持てる施設作りが重要
高橋:確かに、一般的な温度の水風呂だけではヘビーユーザーの獲得が難しいし、逆に10度以下の温度の水風呂しかなければ、初心者にはサウナのイメージが辛いものになってしまい、リピートにはつながりにくいでしょうね。
ビジネス業界では選択と集中とよく言いますが、サウナのマーケットは発展途上で、これから業界全体で育てていくべきだからこそ、全方位的な戦略で市場の顧客を増やしていくというのは素晴らしいと思います。しかも、各階層からステップアップしていける環境作りで顧客ナーチャリングを図れているので、業界のためにもなっているでしょうね。
太田:そうですね。私が目指しているのは、付属の幼稚園から大学までエスカレーター式に上がっていく学校のように、ユーザー階層が上がっても誇りを持って通い続けてもらえる施設なんです。サウナ愛好家の中では「ホームサウナ」と呼ばれていますが、オリジナルのサウナの入り方が確立できると、ほかの施設に行かなくなる傾向があります。
そのため、ホームサウナにしたくなる仕掛けをたくさん用意しておけば、お客様が自ら掛け算的にオリジナルの入浴方法を見つけては愛好家同士で入り方などを発信し合うようになります。それが新規顧客やリピート率の増加につながるんです。