ソーシャルメディアを制するものがWebを制す
人が集まる新しいメディアと新しい広告形態の組み合わせに成功した企業が、これまでのインターネット上での覇権を握ってきた。ポータルとバナー広告の組み合わせに成功した米Yahoo!が一世を風靡し、今は検索エンジンというメディアにキーワード広告を組み合わせて成功したgoogleの天下だ。しかし、人々のWeb上の活動のうち検索という行為が占める割合はわずか5%といわれる。残りの95%のうち、人々がソーシャルメディアで過ごす時間がここ1、2年で急速に増えている。この、ソーシャルメディアに合った広告の新しい形態を編み出した企業が次のWebの覇者になれるわけだ。
キーワード広告よりも信頼できる友人からの推薦
IVSに参加した欧米のネットベンチャーのSeesmic とmeebo のCEOたちも、ソーシャル広告に大きな期待を寄せている。
Seesmicはフランス人のブロガーで起業家のLoic Le Meur氏が開発したビデオ・コミュニケーション・ツール。ブログのコメント欄などにテキストの代わりにビデオを挿入できるサービスだ。同氏は「文字だけによるコミュニケーションよりも、リアルな人間関係が築ける。まだ会ったことのない人も友達になれるんだ」と言う。Seesmicの機能的な説明は、徳力基彦氏 のブログが詳しいので、そちらを参照いただきたい。
そのLoic Le Meur氏は、どんな広告よりもこうした友人たちからの推薦メッセージを信頼すると言う。同氏は「信頼がすべてなんだ」と語る。信頼できない企業がどれだけ派手な広告を打っても、信頼できる友人からの推薦のほうを信じる、と同氏は強調する。同氏が大手クレジットカード系の旅行会社から薦められて宿泊したアムステルダムのホテルは、値段が高いだけで最悪の設備だった。そのことをSeesmicを使ってビデオメッセージで訴えたら「アムステルダムなら、○○ホテルがいいよ」という推薦メッセージが世界中の友人から寄せられた。
そうした推薦メッセージの横に、クリック1つで推薦ホテルのWebサイトにアクセスできるような広告が表示されればどうだろう。さらには、ワンンクリックでトランズアクションが完了するボタンがついていればどうだろう。サイトにアクセスすることもなく、友人の言葉を信じてその場で商品を購入したり、申し込んだりする人も多いかもしれない。Loic Le Meur氏は「キーワード広告と違って、人と人とのつながりをベースにした広告だから、非常に高い効果を得られるはずだ」と言う。
Seesmicは、このほど6億数千万円の出資を受けたが、「こうした新しい広告の実現にはあと、3年から5年は必要なので、さらなる出資を受けることを検討している」とLoic Le Meur氏は言う。